賢者の目 Vol.16

家庭動物の飼育者の意識調査結果から感じること

[2016/04/14 6:00 am | 酒井健夫]

今回は、家庭動物飼育者の意識に関する興味深い資料をご紹介しましょう。日本獣医師会では、「家庭動物飼育者の意識調査結果」を2015年6月に公表しています。こちらは日本獣医師会Webサイトにも、「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査結果」として掲載されています。

全体の約67%の人は家庭動物を飼育しておらず、犬の飼育率は16%、猫の飼育率は10%という調査結果が出ています。飼育頭数に関しては、犬の場合は1頭が87%、2頭が10%、猫の場合は1頭が61%、2頭が21%です。飼育していない人が全体の7割近い大きな比率を占めていることにもたいへん興味がありました。この阻害要因を少しでも解決することが、家庭動物の飼育向上につながると考えられます。

犬と猫の年齢を見てみると、超小型犬と小型犬では1~6歳が45%で最も大きく、年齢が上がるほど構成比は小さくなります。16歳以上は2~3%。中型犬でも1~6歳が29%と構成比が最も大きく、7~9歳、10~12歳、13~15歳はそれぞれ20~21%で、年齢による構成比はほぼ類似しています。その一方で、猫も1~6歳が37%と最も大きく、年齢が上がるほど構成比は小さくなり、16歳以上は11%でした。このように、犬と猫ともに6歳までの比較的に若い年齢が大きい構成比を占めています。

飼育場所に関しては、犬では屋内飼育が83%で、年齢が若い犬ほど屋内飼育比率が大きく、0~6歳では屋内が88%であり、超小型犬と小型犬は室内飼育が95~98%でした。猫では、室内飼育が95%となっています。このように、犬と猫ともに室内飼育が主体であり、家庭動物と人々との絆が一層強くなり、家族の一員となっていることの証と言えるでしょう。

現在、飼育している家庭動物の入手方法は、犬の場合は「ペットショップで購入」(39%)が最も大きく、「友人・知人から譲ってもらった」(23%)、「ブリーダーから購入」(19%)と続いています。そして、小型犬はペットショップでの購入、大型犬はブリーダーからの購入、高齢犬は友人や知人からの譲渡という傾向もうかがえます。

猫の場合は、「友人・知人から譲ってもらった」(37%)が最も大きく、「ペットショップで購入」「動物愛護団体などから譲り受けた」がそれぞれ10%となっています。このように、犬ではペットショップやブリーダーからの購入、猫では友人と知人から譲り受けが主体であり、このことは飼育頭数の確保を図る上で重要な要因であります。

飼育して良かったと感じることは、「生活に安らぎが生まれる」(71%)、「家の中が明るくなる」(64%)、「家族の会話が増える」(58%)という結果に。特に女性では、若年層ほど「家の中が明るくなる」、「寂しさを軽減できる」、「生きがいができる」という回答が上位を占めています。また、飼育して良かったと感じる割合は、猫よりも犬のほうが高く、「動物を通じて人間関係が広がる」や「散歩や世話をすることで、自身の運動になる」が高くなっています。このように、犬や猫を飼育することは、家庭内のコミュニケーションの充実をはじめ、生きがいや人間関係の広がりにつながり、生活に安らぎが生まれ、家の中が明るくなり、健康にも貢献するといった動物の飼育効果が挙げられています。

しかし、家庭動物を飼育する上で困ることや不安なことでは、「旅行や外出がしにくい」(63%)が最も大きく、「病気などの治療にお金がかかる」(45%)、「自分が世話ができないときに困る」(37%)と続いています。特に大型犬ではこの傾向が強く感じられます。このように家庭動物の飼育の阻害要因は、やはり手間や時間的な制約に関する面が大きいようです。それに加えて「部屋のニオイが気になる」「日々のフードなどにお金がかかる」「病気や健康維持のための手間がかかる」なども挙げられています。

本コラムでは、これまで家庭動物の飼育上の阻害要因として、我々を取り巻く住宅事情、家族構成、生活様式などを挙げ、これらを社会全体でかつ地域社会で解決を図る必要を述べてきました。今後、本調査結果が参考にされて、家庭飼育動物と人との共生社会が一層推進され、「動物と人の健康は一つ、そして、それは地球の願い」がさらに展開することを願ってやみません。

[酒井健夫]