ペット生活ファーストステップ Vol.4

ブリーダーさんからの直接購入が理想?

[2015/11/30 10:05 am | 辻村多佳志]

ペットをお迎えする際に、選択肢のひとつとしてぜひ心に留めておいてほしいのが、ブリーダーさんからの直接譲渡です。わが家の愛犬もブリーダーさんから直接譲ってもらいました。ペットショップから購入すればラクなのに、と考えている人がいるかもしれませんが、直接購入には大きなメリットがあるのです。

ブリーダーさんから購入するメリットとデメリット

前回の記事で、目の前にいるペットがどのような姿形をしているかよりも、その子がどのような親から産まれ、どのような育てられ方をしてきたかが大切、というお話をしました。ブリーダーさんから直接譲ってもらうメリットは、まさにこの「生まれと育ちがわかる」ところです。子どもが生まれるタイミングによって、また先に予約した人がいるかいないかによって、確実にお迎えできるとは限らない点と、ブリーダーさんを探し出すのに苦労することがある点がデメリットとも言えますが、子犬や子猫は簡単に購入できるものではありませんから、その程度の手間を避けるべきではないでしょう。

両親を見れば、その子が将来どのような身体のサイズになりそうなのかが予想できますし、両親の性格が子どもに受け継がれることも多いのです。さらに、親や兄弟姉妹と比較的長く一緒にいると、社会性が養われ素直な子に育つと言われます。わが家の愛犬は75日目までブリーダーさんの元にいたためか、実に性格が穏やかでいい子です。

本サイトのアドバイザーで、ご自身も猫のブリーダーとして活躍中の阪根 美果さんによると、そういった考えをお持ちの人ほど、産まれた子をペットショップに卸さないのだそうです。

「私がペットショップに子猫を卸さない理由は、何かあったときに適切な対応ができないからです。両親に何らかの遺伝的な疾患があった場合、その子がどの家庭にいるかがわからないのは困りますし、幸せな環境で飼育されているかに気を配ったり、相談にお答えすることもできません」と阪根さんは語ります。

子犬や子猫は、購入したら終わりという存在ではありません。その子の生涯を幸せに包まれながら全うできるか、人とペットが幸せな共生社会を送れるか、10年20年先までを見据えての飼育が大切になります。

ブリーダーさんからじっくりお話をうかがうと、その方がどんな考え方でブリーディングをされているのかがわかります。その犬種や猫種に惚れ込んで大切に育てている、単品種・少数品種限定ブリーダーは、知識も経験も豊富ですし、お迎えした後も親身に相談に乗ってくれるはずです。幸せな共生社会を創り上げるためにご自身がどう携わるべきなのか、深い考えをお持ちの方なら、なお安心できるでしょう。以前に取材した日本犬保存会の方は、この人は飼育に向かない、うちの子が幸せになれないと判断したら、譲渡を一切断っていました。そのくらい覚悟のあるブリーダーさんに出会えるよう、みなさんの努力も大切になってきます。

ただし、ブリーダーさんなら全員が安心できる方だとは限りません。JKCの取材記事でも犬種標準についてご紹介しましたが、犬種や猫種のスタンダードを守るためには、かなりの努力と見識が要求されますし、よりよい環境を整えながら母体に負担をかけない繁殖を行うには、時間も手間も費用もかさみます。安価で譲ってくれるからいいブリーダーさんだ、などと考えてしまうのは危険でしょう。

友人や知人から譲ってもらう

友人や知人が愛犬家・愛猫家の場合、その家で産まれた子どもを譲ってもらう手もあります。本人がどんな人なのか、どんな環境で飼われているのかがわかりますし、飼育について何かわからないところがあっても、気軽に相談に乗ってもらいやすいので安心です。

とはいえ、ブリーダーさんでもない限り、友人や知人は一般の飼い主ですから、動物の知識や飼育経験が浅いことも考えられます。先天性の疾患や遺伝病を見逃すこともあるでしょうし、たとえばダックスフンドのように、禁忌交配に対する知識が要求される犬種の繁殖や、犬種の特性を考慮しないままでのミックス犬の繁殖などで、トラブルが起こる可能性も否定できません。お迎えする前に、しつけを頼むトレーナーや獣医さんにみてもらうなど、プロに判断を仰ぐのが安心でしょう。

保健所や里親譲渡会で探す、捨て犬や捨て猫を飼う

世の中には、飼い主に遺棄されたペットや野良犬・野良猫など、不幸な犬や猫がいます。保健所や動物愛護団体では、こうした犬や猫の里親さんを探す活動が行われています。私も以前、ある事情により飼育が難しくなってしまった飼い主さんから犬を引取り、里親さんを探してお届けしたことがあります。保健所に収容された犬や猫は、引き取り手がなければ殺処分になってしまうこともありますから、不幸な子を助けたいという、里親さんの志の高さには敬服するばかりです。

ただし、この方法はどなたにでもオススメできるわけではないのが辛いところです。大人になってから捨てられた犬や猫は、子犬や子猫から飼いたいという方には向きませんし、いわゆる雑種の場合は、その子が成長したときにどんな犬や猫になるのか判断がつきにくいためです。飼育は小型犬に限る、という規定がある住宅に暮らす方が引き取った犬が、どんどん大きくなって飼育規定違反になってしまうこともありますし、きちんとしたしつけをされていない場合は、飼育に手を焼くことも考えられます。もちろん、飼いたい犬種が決まっている方にも向きませんし、お金がないから里親に、という人も、譲渡を断られる場合があります。そう考えると、里親さんになるためには、ペット飼育に関するある程度の知識と経験が求められるのではないでしょうか。

次回は、ペットを飼育するためにはどんなグッズが必要なのか、選び方のコツを考えていきましょう。

[辻村多佳志]