猫ブームで子猫の販売価格が上がっていることが、ネット上で話題になっています。「ネコノミクス」なる単語が話題になり、希少種は100万円以上の値がつくこともあると、6/21に日本経済新聞に掲載された記事(子猫、空前ブームで高騰 希少種は100万円超も)が報道していました。たしかに個体が少なければ希少性が高いので高額になるというのは、経済活動ルールに則っています。
しかし、ブリーディングの現場では少し様相が異なります。ブリーダーから直接迎えた経験のある人はご存じかと思いますが、子猫の価格はあまり変化がありません。それは、猫ブームなどの流行に左右されることなく、真摯に繁殖に取り組んでいること。また、ブリーダー同士の交流も深く、それぞれの販売価格に大きな開きがない価格になっているからなのです。では、この適正な価格の基準はどのようなものなのでしょうか?
まず、ショーにおいての評価があります。猫に関しては、CFA(The Cat Fanciers’ Association/)、TICA(The International Cat Association)といった国際的な団体が猫のスタンダードに沿ってジャッジが評価します。ここである程度の評価を受けた親猫との掛け合わせで産まれた子猫であることが基準になります。あくまでも各団体のスタンダードを重視した繁殖であり、よくペットショップで見聞きするような「珍しいカラー」ということで、通常の2倍以上で販売されることはありません。
そもそも、「珍しいカラー」というのはありません。遺伝子のことを理解しているプロフェッショナルなブリーダーからすると、「カラーはつくるもの」だと言います。もちろん100%ではありませんが、この因子とこの因子をかければ、このカラーの子猫が生まれるというのは事前に想定できるのです。ちなみに、野良猫でも、母猫と子猫の毛色を見たら、父猫の毛色の予測ができるので、どの野良猫が父猫かわかると言います。
ちなみに、記事にあるとおり、ショーには子猫の部門もあります。子猫の場合は、あくまでも成長過程での評価ということになります。ですので、プロフェッショナルなブリーダーは生後8か月からの成猫の評価を重視する傾向があります。それは、子猫の時点で高い評価を得ても、成長と共にタイプが変化し、評価が変わってくる場合があるからです。
CFAやTICAに所属するブリーダーは純血種のスタンダードを守り、クオリティーの高い種の保存をしていくことが目的なので、成猫の時点での評価を重視し、高いレベルの血統を残していきます。ですので、子猫の時点で高い評価であっても、驚くような高額で子猫を譲渡することはありません。このような子猫はブリーダー自身が残して、次世代に繋いでいくことが多いこと。そして、他のブリーダーに譲渡する場合にも、成長過程での評価でありタイプが変化する可能性も含めた適正な価格に留めて譲渡するからです。また、ブリーダーが保有しない場合は、他の子猫たちと同様の適正な価格で、愛情を注いでくれる家庭に譲渡されます。
プロフェショナルなブリーダーがショーに参加する理由は、自分の繁殖した猫がどのレベルにあるのかを確認することにあります。決して、高い値段で譲渡するためにショーに参加しているわけではないのです。これが、世界的な血統管理団体のCFAやTICAと、ペットショップなどの関連団体との、ショーや血統に対する考え方の違いとも言えます。
このように、健康な素晴らしい純血種を迎える方法はあります。「珍しいから」という言葉に惑わされて高額で購入するのではなく、情報を集めたり、プロフェッショナルなブリーダーさんにコンタクトして話を聞いてみてください。きっと、よい出会いができることでしょう。そして、その後の幸せな生活も想像できます。ペトハピでは、そうしたブリーダーさんを紹介していますので参考になさってください(太鼓判ブリーダーの記事はこちら)。