【犬飼いTIPS】犬が尻尾を振るのは、リズミカルな刺激に惹かれる人間の影響!?

犬が尻尾を振る「テールワギング」は顕著な行動で、優雅にゆったりと振る場合もあれば、せわしなく振る場合もあります。生物学的科学ジャーナルBiology Lettersに掲載された論文「Why do dogs wag their tails?」によると、犬が家畜化される過程で、人間が尻尾を振るリズムを好んだことで、この行動が定着したのではないかと示唆しています。

人類が犬を家畜化したのは15,000年前から50,000年前の間と考えられており、この過程で共進化の概念が生まれ、人間と犬の間に強い絆が生まれました。その結果、欧米では3~4割の家庭が犬を飼っています(日本では1割程度)。

飼い主は犬の気持ちを理解するためにテールワギングに頼ることが多いのですが、そのような行動がどのように進化したのかは依然として不明です。専門家たちは、研究者たちにこのテーマを解明してもらうために、いくつかの説を提唱しています。

論文の共著者で、オランダのマックスプランク心理言語学研究所のテイラー・ハーシュ博士は、「テールワギングは、非常に明白で興味深い行動です」と話します。

犬と人間の関係の始まりにタイムマシンで戻って確認することはできませんが、現在の犬の行動とそれに対する人間の行動を観察することで、家畜化の過程がどのようなものであったかを理解することはできるようです。

論文では、人間に手で育てられた子犬は、同じく手で育てられたオオカミの子どもよりもはるかに頻繁にテールワギングすることが紹介されています。また、飼い主を見つけるなどポジティブな状況には尻尾を右に振り、攻撃を受けるなどネガティブ状況で退散する際には左に振ることが発見しされました。

しかし、なぜ人間に手で育てられた犬がそれ以外の犬やイヌ科の動物よりもテールワギングする回数が多いのか、なぜ多くの状況で尻尾を振るのかなど疑問は残っています。

研究チームによれば、そのきっかけのひとつは、家畜化の過程で生じた可能性が高いとされています。別の研究では、犬のほかの特徴が、人間が好む性質(人懐っこい、おとなしいなど)と遺伝的に関連があることが示唆されています。したがって、テールワギングについても同様の可能性があります。

しかし、別の説明も可能であるようです。

論文の筆頭著者であるシルビア・レオネッティ氏は、人間が家畜化の過程で意識的あるいは無意識的にテールワギングを選択したのは、人間がリズミカルな刺激に非常に惹かれるためではないかという新しい仮説を提唱しました。

研究チームは現在、新しい仮説を調査するために、非侵襲的な技術を使用した実験が必要だと考えています。具体的には、心電図検査、超音波検査、レントゲン検査、そしてMRIやCT検査などです。

また、実験は犬一頭だけでなく、犬同士、犬と人間の相互作用に焦点を当てることで、テールワギングのさまざまな意味をより詳しく解明できる可能性があると付け加えています。

この論文はほかの研究者からも支持されていますが、マックスプランク進化人類学研究所のユリアーネ・ブロイアー博士は、テールワギングする度合いは単に人間がリズミカルな刺激に惹かれるだけでなく、他の要因が関与している可能性もあるとの見解を示しています。

リンカーン大学の行動生態学者ホーリー・ルート・ガッテリッジ博士によると、テールワギングは犬と人間のコミュニケーション手段であり、犬が人間との間で使用するようになったのは、人間が犬の吠えに不快感を感じるためだと述べています。つまり、テールワギングすることで、吠える代わりに人間に何かを伝えようとしているということです。

人間は視覚情報に敏感な生物です。そのため、テールワギングのリズムがポジティブな感覚と関連している可能性があります。とはいえ、私たちがそれに本当に反応しているかどうかは、まだわかりません。

犬のテールワギングに関する研究は進行中です。これらの研究は、犬と人間の関係に新たな視点を提供し、相互理解を深め、絆を強化することが期待されています。