「エコシステムのようなもの」を改善しない限り不幸なペットはゼロにならない

不幸なペットや殺処分がゼロにならないのは、劣悪な繁殖業者、いわゆる「パピーミル」の存在が原因で、動物愛護団体などもこういった業者を問題視しています。マスコミでもそういった記事を多く目にします。しかし、いくら法律を強化しても、いっこうになくならないのは、そこに「エコシステムのようなもの」が存在するからだと思います。大量に繁殖して商売がしたい側と、できるだけ安く手に入れて高く売りたい側とがいて、お互いに幸せな関係ができているように思います。

※写真はイメージです

ペットショップは人気の犬・猫をより多く売りたいはずです。そうなると当然、にわか繁殖業者であっても、どういった繁殖状況・現場かも確認せずに、とにかく繁殖を促進させるわけです。そして、一腹いくらで買い取り数をキープする。それ以外でもオークション経由で仕入れることもあります。

先日も「ケージ3段重ね、急ぐ出荷、衛生には配慮… 犬の繁殖業者の現実」という取材記事が掲載されました。この記事で取り上げられている業者も、現状がよいとは思っていないようですが、結局は販売業者に促され、生活のために繁殖をしています。この話は、けっして特殊な例ではなく、むしろ業界の常識だと思わざるをえません。

記事で明らかにしているように、できる限り小さいうちに陳列して売り切りたい――それが販売業者の考えです。成長すると価格も下がり、それでも売れないと「引き取り屋」に引き渡す。その末路は想像に難くありません。

この「エコシステムのようなもの」で幸せになっていないのは、売られ・買われる生体なのではないでしょうか。これに関わっている業者は、商売についての責任しか考えず、健全な生体を繁殖させるべき責任はもっていないでしょう。なぜなら、繁殖環境が劣悪だからです。そして、不健全な状態のまま流通されているわけです。繁殖業者にも販売者にも、動物に対する愛情が感じられません。

記事の最後の文章に、それが表れています。

「劣悪なブリーダーを行政はしっかり取り締まるべきです。市場(いちば)(競り市)も出入り基準を厳しく決めればいい。私自身、改善できることがあるなら直したい。どうすればいいのか、教えてほしい」

動物への愛情があるなら、学んで改善できることはいくらでもあるはずです。ブリーダーとは、血統を考慮して健全な動物を繁殖する者を示します。愛情よりもビジネスを優先する者は、ブリーダーではなく単なる繁殖業者です。こうした者たちには、繁殖現場から退場してもらいたいものです。しかし、現状では「エコシステムのようなもの」によって、法律も骨抜きにされています。比較的簡単に、誰もが取得することができる資格などを取り、地域の動物保護センターや保健所で第1種動物取扱業の登録をし、年1回の講習を受ければ誰でも繁殖・販売ができるというのもハードルを下げている要因でしょう。

では、このような不健全な繁殖・流通を変えることはできないのでしょうか。劇的に変えることは困難ですが、少しづつ変えることはできると思います。それは私たち消費者(飼い主になる人)が知り、行動することなのです。「ペットを飼う」ということを考え、そして健全な迎え方をすることで、劣悪な繁殖業者は淘汰されていきます。そして、その流れは不健全な流通・販売も変えることができるのです。参考になるのが、英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)という団体が喚起している「子犬を迎える時の注意」です。

【事前に確認しておくこと】
・Did they breed the puppy?
 ブリーダーは子犬を産出しているか
・Are the puppies kept where they were bred?
 子犬は産まれたところで飼育されているか
・How many puppies are/were in the litter?
 飼育場には何頭の子犬がいるか
・Have the puppies or their parents had any health problems?
 子犬や親犬に健康上の問題があるか
・Have the puppies been treated for worms or other parasites?
 子犬は寄生虫の治療を受けているか
・Have, or will, the puppies be given their first vaccinations before going to their new homes?
 子犬が新しい家に行く前に最初の予防接種を受けたのか、もしくは予定しているか
・Have the parents been screened for any inherited problems known to be a problem in that breed?
 親犬は遺伝子疾患などがないことを確認できているか
・Do the puppies have any form of identification, such as microchips?
 子犬はマイクロチップのような識別証を持っているか

【犬舎に見学にいったら/子犬に会いにいったら】
・Make sure you see the puppies’ mum healthy.
 子犬の母犬が健康であることを確認する
・Look for clues that the puppy was actually born there.
 子犬が実際にそこで生まれたという証拠を探す
・Ask to see certificates of screening for problem diseases, vaccination and microchipping records.
 病気、予防接種、およびマイクロチップの記録など検診証明書を確認する
・Check for any signs of illness.
 病気の兆候がないか確認する

実際に迎えるときには、必ず犬舎を訪れブリーダーと話をすること。そして、繁殖・飼育環境、さらには親犬を見ることです。そうすれば、その犬舎、そのブリーダーが“健全”か否かがわかります。“健全”な犬舎は清潔で整頓されています。“健全”なブリーダーは法律を遵守し、犬の血統、疾患、特徴、性格、飼育などに深い知識があります。そして何より愛情をもって接しています。“健全”な子犬は“健全”な親犬からしか生まれません。そして“健全”な犬たちは、“健全”な飼育環境でしか育ちません。

上記すべてを満たすところから迎えるべきだと、ペトハピでは考えています。「太鼓判ブリーダー」は、まさにそういった“健全”なブリーダーだけを紹介し続けています。

ブリーダーが愛情をもって大切に育て、自分も愛情をもって家族として飼う。そういうペットを簡単に捨てたりするでしょうか。

私たち消費者(飼い主になる人)が考えや行動を少し変えるだけで、不幸なペットの流出を止め、殺処分ゼロにつながると信じています。

かわいいという一時の感情だけで衝動的に購入するのではなく、しっかり見極めることが健康で幸せなペットとの生活のスタートだと認識しましょう。そうすれば、オーナー、ペット、ブリーダーで、「幸せが循環する、健全なエコシステム」をつくれるのではないでしょうか。

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