ペットとの幸せな暮らしのために、すべての人の知識を高める
みなさんの愛犬や愛猫はペット業界のプロにどれくらいお世話になっていますか? 猫の場合は動物病院以外はあまり縁がないかもしれませんが、犬の場合はトリミングサロンやしつけ教室などに通う人が多いでしょう。また、ペットショップやドッグカフェに一緒にお出かけすることもあれば、旅行や出張時にペットホテルやペットシッターを利用することもあるでしょう。
そんな私たちのペットライフをサポートしてくれるプロたちにライセンスを発行しているのが、一般社団法人 全日本動物専門教育協会(以下、全日本動物専門教育協会)です。ペット業界に携わる人材のさらなるスキルアップの実現を目指し、その一方で、ペットの飼い主の知識もより高めていくためにさまざまな取り組みをしています。専務理事 事務長の大野公嗣さんにお話をうかがいました。
事業者に向けた環境省公認のライセンス発行
「協会の事業としては、2本の大きな柱があります。まずはペット業界をけん引できる人材育成に対する取り組みです。みなさんに馴染みのあるトリマーさんや看護師さん、しつけの先生などの民間資格のライセンス発行です。ペット業界には、獣医師にしか国家資格がないのです。民間資格は独自に発行できるため、たとえばトリミングのライセンスであっても、地域によってトリマーさんのスキルに差があるという問題がありました。そうした環境を改善するために、2002年に当協会が設立されました。統一したカリキュラムですべての人材のスキルアップを目指すために、教育指導に取り組んでいます」
全日本動物専門教育協会は、質の高いライセンスを発行するために、教師陣の育成にも注力し、教師講習会を開催するなど、教育水準の高さもキープしています。日本で初めて学科試験+実技試験というスタイルを採用したそうです。均一した知識とスキルが身につけられるとして、環境省公認のライセンスとなっています。
「ペット業界で働く人材には幅広い知識が必要だと思います。専門分野に特化したハイレベルなスキルを身につけることは大切ですが、実際に飼い主さんたちの立場からいくと、ペットに関することをいろいろ聞きたいものですよね。それに答えらえる知識がついているかといえば、正直まだもの足りないところがあります。だからこそ、プロの人たちもさまざまな分野で勉強して、飼い主さんのニーズに応えられるように、さまざまな知識やスキルを身につけてほしいと思います」
専門的な病気のことは別として、身近なトリマーさんなどにしつけや健康のこと、食事のことなどを相談した経験のある人も多いのではないでしょうか。なんでも相談できるプロの人が増えると飼い主としては、とてもうれしいですよね。もちろん、私たち飼い主ももっと知識を増やしていく必要があるのですが。
飼い主の知識をボトムアップする通学・通信講座
「もうひとつの大きな柱が、一般の飼い主さんに知識を提供する通学・通信講座です。ペット業界の優秀な人材を育成し、飼い主さんの知識をボトムアップしていくこと。これが人とペットとの共生社会の実現につながっていくのだと思います。今年で3年目を迎えますが、以前に比べて、“学びたい”という意欲の高い飼い主さんが増えていますね」
人間同様にペットの高齢化も進んでいますが、実際にペットがシニア期を迎え、またシニア期に入ることを見据えて、健康管理やマッサージなどの講座を受講する人が非常に増えているそうです。現在では、「愛玩動物救命士」や「犬の在宅看護師」など6つの通信講座、「犬の健康管理士通学認定講座」や「犬種別マスター講座」など6つの通学講座が用意されています。たしかにホームケアの知識や技術があれば、万が一ペットの具合が悪くなったときに、あわてずきちんと対処できるだけでも、ずいぶん違うことでしょう。また、最近では自然災害も多いですが、自分でペットの身を守るために「ペット災害危機管理士」などの資格も注目を集めているそうです。
「通学講座に通えない人、まだちょっと敷居が高いという人向けには、2~3時間で学べる多種多様なセミナーや講習会もご用意しています。講座であれセミナーであれ、“人とペットの命を守る”というコンセプトは徹底しています」
「犬の健康管理」や「獣医師から学ぶシニア犬のための1Dayマッサージ」など、セミナーは毎月いろいろなテーマで開催されています。全日本動物専門教育協会のセミナールームでペットと一緒に、アットホームな雰囲気のなかで楽しみながら学ぶことができます。実際にペットの健康を維持するために、ネットで情報を探したり、本を読んだりして学んでいる人も多いかと思います。興味がある人は、こうしたセミナーで実際に体験してみるのもいいでしょう。
犬籍証明書発行や異業種とのコラボ強化などにも注力
「先ほどもお話したように、人とペットとの共生社会の実現には、飼い主さんの知識を高めることが大切です。私たちは講座やセミナーなど学習のコンテンツを提供していますが、その先にあるペットとのライフスタイルも提供していきたいと考えています。人とペットがもっと安心して暮らせるサービスが増えれば、そこに働く新たなペット関連の仕事も生まれるはずです。それがペット業界の発展にもつながると考えています」
全日本動物専門教育協会は「犬籍証明書」を発行しています。これは血統書という考え方ではなく、大切な家族の一員としての犬の戸籍謄本で、ペットの幸せの暮らしのために発行しています。そして、旅行会社と提携しペットとの旅行ツアーに参加した人にプレゼントする取り組みなども行っています。また、教育関連の会社と提携して、子どもに命の大切さを教えるために、ペットの救急救命関連のセミナーを開催するなど、積極的に異業種とのコラボ強化に努めています。
「私たちの協会という場所を自由に使ってほしいと考えています。異業種も含めて、ペットとの共生社会を実現したい人が集まれる場所です。現在ではさまざまな異業種が会員となり、一緒に新しいことにチャレンジしています」
今後は、ペットを飼う多くの人が苦労するペット可の賃貸住宅の普及に向けた不動産との提携、いつかは直面する葬儀関連なども提携して、ペットとの暮らしのあらゆる面において、質の高いサービスをつくっていきたい、と大野さんは語ります。
ペットの飼い主としては、とても魅力的でうれしい話だと思います。しかし、そのためには私たち飼い主もペットに関する知識を増やしていく必要があります。大切なペットのためにも、そのことは忘れずにいたいですね。
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