猫の寝ているときの呼吸数は? 30回の目安と測り方・受診の目安
眠っている愛猫の胸がゆっくり上下するのを眺めながら、「この速さは普段どおりなのだろうか」と気になったことはないでしょうか。調べてみると、資料ごとに目安の数字が違って見えて、どれを基準にすればよいのか迷うこともあるでしょう。
呼吸数は、数字だけを見ても判断しにくい情報です。「何を測った数字なのか」「愛猫の普段とどう違うのか」を合わせて見ることで、はじめて診察室で役立つ情報になります。この記事では、目安となる数字の背景と、眠っているときの測り方と記録、獣医師に相談するときの考え方を整理します。

数字の背景
呼吸数の目安は測る条件と一緒に読む
猫の肥大型心筋症(HCM)は、心臓の左心室の壁が厚くなる病気です。見た目には元気そうな猫も多く、診断の中心は心エコー検査(心臓の超音波検査)です。
壁が厚くなる原因はHCMだけではなく、高血圧や甲状腺機能亢進症でも似た変化が起こると、コーネル大学の解説は説明しています。家庭で呼吸を数えても、心臓の壁の厚さやHCMの有無はわかりません。
一方で、心不全に伴って肺の内部に水分がたまる肺水腫や、肺の周囲に液体がたまる胸水が生じると、呼吸が速くなったり苦しそうになったりすることがあります。呼吸数は、その変化を知る手がかりの一つです。
家庭観察の価値は、条件をそろえて愛猫の普段の状態を記録し、変化があったときに獣医師へ伝えられる点にあります。動物病院が苦手な猫は診察室で緊張しやすく、普段の様子を見てもらいにくいこともあるため、家庭での記録が補いになる場合があります。
数字を読むときは、眠っている「睡眠時」と、起きて静かにしている「覚醒安静時」を区別することが出発点です。
2014年の研究では、飼い主が自宅で呼吸数を数えました。対象は、心エコー検査で異常のなかった猫59頭、見かけ上健康な猫28頭、症状のない心疾患がある猫54頭で、1頭につき8〜10回の測定が行われました。各猫の平均睡眠時呼吸数の中央値は、心エコー正常群と見かけ上健康群が各19回/分、症状のない心疾患群が21回/分でした。
多くの猫で平均は30回/分未満でしたが、健康とされた群にも平均が30回/分を超える例がありました。無症状心疾患群では、左心房の拡大が重度の猫は、ほかの心疾患の猫より高い結果でした。また、覚醒安静時の呼吸数は、全体として睡眠時より高くなりました。
犬や猫の安静時または睡眠時の正常な呼吸数は、1分間に15〜30回とされています。ただ、睡眠時は覚醒安静時より少し低いのが一般的です。暑さや緊張、活動によって高くなることもあるため、落ち着いて眠っているときの値とは分けて考えます。
この研究は観察研究で、心不全を見つける精度(感度・特異度)は調べられていません。心不全の猫は解析対象外で、研究者も、呼吸数が正常でも心疾患を除外できないとしています。また、症状のない心疾患群54頭のうちHCMは50頭ですが、結果はHCMだけのものではありません。
健康な猫は獣医師や獣医学生などの飼育猫が中心の便宜的なサンプルで、欧米で集められており、日本の猫のデータは含まれていません。こうした前提を踏まえ、数字を合否の線として使わず、愛猫自身の変化を見るために、条件をそろえて測る方法を次に紹介します。
測り方
眠っているときに60秒、条件も記録する
必要なのは、秒数のわかる時計かスマートフォンだけです。猫に触れたり姿勢を変えたりせず、胸やお腹の動きが見える位置から静かに観察します。
まず、暑すぎず寒すぎない部屋で、猫が静かに眠っていることを確かめます。胸やお腹が一度上がって下がるまでを1回と数え、60秒間続けます。上がる動きと下がる動きを別々に数えないようにしましょう。
60秒が難しいときは、30秒間の回数を2倍にする方法も使えます。短時間の数え違いを大きく換算しないよう、6秒や15秒での換算ではなく、60秒を基本にします。
次のようなときは測定を避け、落ち着いて眠っているタイミングを待ちましょう。
喉をゴロゴロ鳴らしているとき
手足や体がぴくぴく動くなど、動きの多い睡眠中
遊んだ直後や、暑さで息が速くなっているとき
途中で起きたり、動きが見えなくなったりしたときは、そのことも残します。起きて静かにしているときの数字は、睡眠時とは別の記録にします。眠りを妨げないことを優先し、息を確かめようと顔や手を鼻先に近づけるのは避けましょう。
動画は、猫を刺激せずに撮れるときの補助として使えます。後から数え直したり診察で見せたりできますが、動画があれば診断が確実になるわけではありません。
数字だけが並んだ記録より、条件が添えられた記録のほうが、診察で役立ちます。次の項目を書き留めておくと、見返しやすくなります。
| 日時 | |
| 1分間の回数 | |
| 睡眠か覚醒安静か | |
| 呼吸の様子 | |
| 食欲・活動性 | |
| 動画の有無 |
手帳やカレンダー、スマートフォンのメモでも構いません。30秒間の回数を2倍にした場合は、その旨も明記します。室温や寝ていた場所も、気づいた範囲で書き添えます。呼吸の様子は「いつもより胸やお腹の動きが大きい」など見たままで十分で、病名を推測して書く必要はありません。
測る頻度は、猫の状態や治療内容で変わります。獣医師は慣れるまで1日1回を1週間ほど続けるよう案内するのが一般的です。ただし、すべての飼い主にとって必須という意味ではありません。
症状のない心疾患では、測り始めるかどうかも含めて獣医師が判断します。特に心不全の発症リスクが高い場合に週1〜2回、場合によっては毎日の測定を勧められます。心不全で利尿薬などを服用している場合は、少なくとも1日1回としています。
「毎日でなくてよい」とも「すべての猫で毎日必要」とも一律にはいえません。主治医の指示を基本にし、数えにくい場合や続けるのが難しい場合は、方法も含めて相談しましょう。
相談の判断
「30回」と呼吸の様子を合わせて考える
測った数字をどう受け止めるかは、呼吸の負担、普段との差、繰り返し、ほかの体調の変化を合わせて考えます。30回/分は、診断や緊急度を決める境界線ではありません。
研究者は、平均睡眠時呼吸数が30回/分を超える猫や、複数回の測定で30回/分を超える猫は、追加の評価が必要になる可能性が高いとしています。ただし、健康とされた猫にも高い値の例があり、数字だけでHCMや心不全とは判断できません。
逆に、30回未満なら問題がないというわけでもありません。個体によっては30回未満でも獣医師が高いと判断する場合があります。愛猫の場合はどのような変化で連絡すべきか、主治医と確認しておくことが大切です。
- 測定を待たずすぐ連絡する場合
口を開けて呼吸している、明らかに苦しそう、横になれない、倒れるといった様子があるときです。数字が30回未満でも、測定の完了や動画撮影を待たず、すぐに主治医に連絡してください。突然の後ろ足の痛みや麻痺がみられたときも同様です。原因を家庭で判断する必要はありません。 - 記録を添えて、早めに相談する場合
落ち着いて眠っているときに30回/分を超える状態が繰り返される場合です。30回未満でも、普段より高い状態が続くときや、食欲や活動性にも変化があるときは相談しましょう。何日も様子を見るのは避けてください。主治医から連絡基準を示されている場合は、その指示を優先します。薬の量を自己判断で変えることも避けてください。 - 時間をおいて測り直す場合
苦しそうな様子がなく、ほかにいつもと様子が違うこともないことが前提です。数え方や測定条件が不確かだったときは、落ち着いて眠っているときに測り直します。
条件が整っていも、1回だけ30回を超えた場合は、数時間のうちに数回確認し、一貫して高ければ速やかに連絡します。ただし、明らかに高い場合や個別の指示がある場合まで待つ必要はありません。「1回だけなら必ず様子見」というわけでもなく、迷うときはその段階で相談してください。
この3区分は、家庭で診断するものではありません。呼吸数は、暑さや緊張、活動のあとでも高くなり、心臓以外の理由でも増えます。数字が高いからといって原因を決めつけることも、30回未満だからと安心しきることもできません。
連絡するときは、次の項目を伝えるとスムーズです。
・いつから気になっているか
・何回だったか
・眠っていたか、起きていたか
・呼吸の様子や食欲はどうか
メモや動画があれば、主治医の指示に従って共有します。息苦しさがあるときは、記録を整理し終えるのを待たず、まず現在の状態を知らせてください。
まとめ
普段の記録を主治医と共有する
家庭での観察は、飼い主が病気を見つけるための作業ではありません。主治医に愛猫の情報を届けるための方法です。条件をそろえて数え、普段の値との差を見て、呼吸の様子と合わせて考え、必要なら相談する。呼吸数は合否を決める数字ではなく、変化を伝えるための情報なのです。
次の健康診断や診察では、次の4点を確認しておくと安心です。
・愛猫の状態に合った測定頻度
・連絡したほうがよい数値や体調の変化
・記録や動画の共有方法
・夜間や休日の連絡先
数値の基準だけでなく、どのような呼吸の様子なら測定を待たず連絡するのかも、あわせて共有しておくと迷いを減らせます。
記録が完全でなくても、相談をためらう必要はありません。毎日の測定が必要かどうかは猫の状態によって異なり、指示された測定を続けるのが難しい場合も、主治医と方法を相談できます。眠りを妨げない小さな観察と、専門家との連携を、日々の健康管理につなげていきましょう。


