「商品にならないから始末」悪徳ブリーダーの手口にみる法律の限界

「商品にならないから始末」悪徳ブリーダーの手口

法改正後も犬猫を”平気で捨て、殺す”止まらず

PRESIDENT Online | 2024/7/7

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このコーナーでは、注目ニュースに対する編集部や識者のコメントを紹介します。

こうした悪徳ブリーダーの鬼畜の所業が明らかになるたびに、鬱屈した気分になります。そして同時に、法律の限界も感じるのです。

「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)は、改正のたびに厳しくなっています。直近の改正は2019年で、翌2020年6月1日に施行されました。

ブリーダーを含む第一種取扱業者については、監視と管理の強化が具体的な数値とともに図られました。主な内容は、「マイクロチップ装着」「繁殖制限」「販売可能年齢の引き上げ(8週齢)」「一人あたりの飼育頭数」「飼育環境(ケージのサイズ、温・湿度管理、運動スペースなど)」です。

強化された反面、監視と管理が難しいのも事実です。さらに、法の解釈と運用も自治体任せで統一されていないというのも、問題を複雑にしています。

阪根美果さんも以前の記事で指摘されているように、悪徳ブリーダーはあの手この手で法の抜け道を考えています。子犬・子猫の年齢偽装にはじまり、飼育頭数のごまかしや未登録施設など……。罰則を強化してもイタチごっこでしかありません。

筆者がさらなる強化が必要だと感じるのは、第一種動物取扱業に対する「一人あたりの飼育頭数」です。今年6月に完全施行となり、犬20頭(うち繁殖犬15頭)、猫30頭(うち繁殖猫25頭)となりました。

しかし、この数は従業員を雇えば無尽蔵に増やすことができます。例えば、9人雇っているブリーダーの犬舎では、犬200頭(うち繁殖犬150頭)を飼育できることになります。現状では、雇う際に動物に対する知識や経験、愛情があるかどうかは必須条件ではないので、誰もが簡単に携わることができてしまうのです。

大切な命を扱う従業員がそんなレベルでよいのでしょうか。最低限、飼育する動物の知識を習得するためのセミナーを受けさせるなどしないと、扱いがぞんざいになり危険です。また、愛情も持ち合わせないため、そうした犬舎や猫舎にいる犬や猫は名前で呼ばれることはありません。生涯「1番」「2番」など番号で呼ばれるのです。

問題となった、ペットオークションの犬や猫は、こうした第一種取扱業者から流通されているのです。「商品=モノ」として扱われる彼らは、どんな気持ちで人間を見ているのでしょうか。

現行の法の遵守がままならないのであれば、ブリーダーのモラルや資質を問うしかありません。そして、多くの人が指摘しているように免許制(行政法では許可制)にすべきというのも、法改正の方向性のひとつでしょう。

日本には、多くの規制権限があります。代表的なもには許可、認可、登録、届出などで、1万件以上の許認可があります。そのなかの「許可」には、医師免許、獣医師免許、運転免許、さらには飲食店営業許可、旅館業許可なども該当します。

許可とは、申請を受けた行政官庁に裁量が認められており、申請が拒否(不許可)となる場合があるのが特徴です。つまり、管理監督官庁が自由に判断する余地があるということです。

しかし、第一種取扱業は登録制です。行政官庁に対し事業者が事業内容を通知することです。開業届出書や設立届出書などの届出をすれば事業をスタートできます。つまり、自由な判断の余地が入らない=判断をしないので、登録までの時間も早いのです。

半年以上の実務経験(または1年以上の飼養経験)と指定された認定資格さえあれば、誰もが簡単にブリーダーとして業を営むことができます。

その認定資格は、しっかりした知識を得るものでも、愛情や責任を問うものでもありません。受験すれば誰でも取得できる安易なものなのです。

このように、日本では誰もが簡単にブリーダーになれるのです。現状のままでは、悪徳ブリーダーがいなくなることはありません。

そして、批判の的になっているペットオークション、ペットショップでの陳列販売は、そういった悪徳ブリーダーを増やす温床にもなっているのです。

命を扱うモラルのあるブリーダーを育てる教育プログラムは必須です。そして、私たち飼い主の行動も重要です。健全なブリーダーを見る目を養い、ペットショップで安易に購入することを避ければいいのです。ニーズがなければ、悪徳ブリーダーは自然淘汰され、健全なブリーダーだけが残り、不幸なペットが生み出されることがなくなるのです。