12人ケガ「犬にかまれる事故」年5000件発生の怖さ 「うちの子は大丈夫」という過信は捨てること

12人ケガ「犬にかまれる事故」年5000件発生の怖さ

「うちの子は大丈夫」という過信は捨てること

東洋経済オンライン | 2024/2/12

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このコーナーでは、注目ニュースに対する編集部や識者のコメントを紹介します。

記事でも指摘されているように、日本では年間約5,000件の咬傷事故が報告されていますが、実際にはもっと多くの事故が起きていることが予想されます。動物愛護管理行政事務提要(令和5年度版)の「犬による咬傷事故状況」によると、咬傷による死亡者は3名でほとんどは怪我のようですが、なかには大怪我を負うケースも少なくはないようです。

このデータからは、事故の原因が飼い主の責任放棄や慢心と考えられる状況も確認できます。咬傷事故が発生した際の犬の状況を見ると、もっとも多いのが散歩やドッグランでの事故(けい留して運動中)で約40%、続いて、信じがたい状況ですが、放し飼いが約17%、犬舎等にけい留中が約15%となります。ほとんどが飼い犬による事故であって、野犬によるものは2%程度しかありません。

今回の四国犬の逃走・咬傷事故も、まさにこのデータが示すように飼い主の勝手な思い込みが原因だったと考えられます。こうした事故に際して、必ず飼い主が発する言葉は「ふだんはおとなしいのに……」「こんなことする子ではない」などの思い込みです。

今回のケースでも「絶対逃げ出せない状態だと思っていた」「人懐っこい犬で人間に対して咬むということはありえない」というのは、飼い主の勝手な思い込みが原因です。

こうした事故は日常的に起きています。飼い主は、なおさら注意が必要です。庭で飼育したり遊ばせるのであれば、逃走することがないようにジャンプできないくらいの高さにしたり、足をかけられないような構造にしたり、穴を掘って逃走できる犬種であれば随時チェックするなど。

散歩の際には、首輪やハーネス、リードに破損がないかを確認し、リードは短く持つなどの工夫が必要です。散歩の際に、リール式の伸縮リードをむやみに長く出している人もいますが、人の多いところでは危険です。

また、当然ですが適切なしつけを行う必要があります。「待て」や「戻れ」などの指示に従うように徹底して教えましょう。犬は、人間と共生するにはしつけが必要不可欠です。そして、各犬種の特性や気質、さらには愛犬の性格などを把握しておくことも飼い主として重要な責務です。

それでも「絶対」はないのです。運転免許を取得する時に、教習所では耳にタコができるほど繰り返し教えられる「だろう運転」と「かもしれない運転」を覚えている人も多いでしょう。

犬との生活もこれと同じだと思うのです。自分の都合のいいように予測する「だろう飼育」ではなく、万が一を想定して対応する「かもしれない飼育」を心がけることが大切なのです。

もちろん、事故を防ぐのは飼い主だけではありません。犬が苦手な人は近寄ることはしないので、事故に巻き込まれるケースは少ないと思いますが、犬好き・動物好きな人ほど自制が必要な場合があります。なかには飼い主以外の人やほかの犬が苦手な犬もいます。

そうした犬にむやみに近づいたり、撫でたりすると、普段はおとなしい犬が豹変する場合もあります。興味があるのであれば、飼い主にその旨を伝えてから行動するようにしましょう。

この記事の筆者が言うとおり、「うちの子は大丈夫」という過信は捨て、「うちの子にも起こりうる」という危機意識を持ちながら飼育管理することが、愛犬家としての責任ということです。

犬と人間の共生は相互理解によってのみ成り立ちます。不幸な事故を防ぐためにも、私たち人間が「かもしれない」と考えて生活することが必要ではないでしょうか。