愛犬の健康を守ることができるのはあなただけ
ペットは命ある存在です。買ったら終わりというモノではありません。健康で長生きしてほしいと願っているなら、飼い主ができる限りの手を打たなくてはならないのです。現在、飼い犬の平均寿命は15年弱とされていますから、人間に比べ5倍以上の速度で歳をとっていくことになります。健康維持のための手段を何もとらずに1年放置すれば、重大な悲劇を招くことにもつながります。今回から、犬を飼うとどんな健康維持対策が求められるのか、その基本中の基本をご紹介しましょう。
健康維持のための年間スケジュールを立てよう
犬の健康を維持する対策としては、健康診断、ワクチン接種、フィラリア予防、ダニ・ノミ対策などさまざまなものがあります。そして、これらは一度受けさせたから終わりではなく、毎年、確実に続けていかなくてはなりません。いちばん安心なのは、犬を飼い始めたらすぐに獣医さんのもとを訪れ、健康診断を受けるとともに、年間スケジュールについてアドバイスを受ける方法。健康診断を受けておけばカルテが残るため、犬の体調を管理しやすくなります。
年間スケジュールは、お住まいの地域や飼っている犬の種類、散歩コースなど飼い方の違いにより多少異なりますが、だいたい以下のように考えておきましょう。もちろん、これらはあくまでも病気の予防や健康維持のために行うものなので、犬が病気やケガをした場合には、さらに治療が加わります。
- 春に1回行うもの/狂犬病予防接種
- 春から秋にかけ毎月行うもの/フィラリア対策
- 年間、毎月行うもの/ダニ・ノミ対策
- 1年に1回行うもの/混合ワクチン接種
- 適宜行うもの/健康診断
予想よりもかなり多い、と感じる人も多いのではないでしょうか。これだけで年間3~5万円の費用がかかりますので、犬を飼い始める前に、こうした費用が無理なく払えるかどうか、必ず考えておきましょう。もし家計が厳しいということであれば、残念ですが犬を飼うべきではありません。犬にとって不幸な結果につながるばかりか、人とペットがともに幸せに暮らしていく共生社会に悪影響を与えかねないからです。
犬を飼うなら必ず受けなくてはならない「狂犬病予防接種」
では、それぞれなぜ必要なのか、行わないとどうなるのかを、順を追って見ていきましょう。まずは、春に行う「狂犬病予防接種」です。
犬を飼育するなら、「狂犬病予防接種」は、年間一度は必ず受けなくてはなりません。1950年に制定された狂犬病予防法によって義務づけられているので、受けないと違法です。
犬を飼い始めて「畜犬登録」を行った飼い主には、毎年、春先にハガキなどでその年の予防接種の連絡が来ますから、ハガキに指定された会場に犬を連れて行き、接種を受けることになります。もっとも、ほかの犬と仲よくできない、指示された接種日は仕事で行けないなどの事情で受けられない人も多いので、獣医さんなどで接種してもらってもいいことになっています。接種費用は地域によって異なり、約3000円前後。加えて、接種済み証明書の発行費用が数百円(550円前後)プラスされます。
なお、生後90日以上の犬はすべて「畜犬登録」が義務づけられています。ペットショップなどから犬をお迎えしたならすでに登録されているはずですが、知人からもらった、捨て犬を拾ったなどの場合は、自分自身で地域の役所か保健所に出向き、畜犬登録を済ませなくてはなりません。登録費用は3000円前後です。
年々下がり続ける、狂犬病予防接種の摂取率
先日、日本の狂犬病予防接種率が、この20年間でどんどん減ってきているというニュースが流れました。1993年には畜犬登録を行っている犬の99%が予防接種を行っていたのに、2014年(平成26年)には全体の71%しか受けていないのだそうです。あくまでも畜犬登録している犬だけの数値ですから、登録していない犬も含めると、接種率はさらに下がるでしょう。
では、なぜ狂犬病の予防接種が必要なのでしょうか。答えは簡単、犬を狂犬病から守るため以上に、人を狂犬病から守ることが重要だからです。というのも、人が狂犬病にかかってしまった場合、ほぼすべての人が悲惨な症状を発症し亡くなります。そして、発症してしまったら治療方法はありません。発症=死なのです。
日本では、1957年に最後の狂犬病が発生してから、現在まで60年近くの間、狂犬病は発生していません。ならば予防接種などはもう必要ない? いえいえ、世界ではまだまだ狂犬病を征圧できていない地域が多く、報告されただけでも年間数万人が狂犬病で亡くなっています。日本でも2006年、フィリピンに渡航・滞在していた方が2人、狂犬病に感染し帰国後に死亡しました。狂犬病は現在進行形の病気なのです。
狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染した動物に噛まれるなどして人に感染します。犬という字がついているため、犬だけに感染すると思われがちなのですが、じつは哺乳類であればさまざまな動物が感染するのです。実際に、1957年に日本で最後に確認された狂犬病は、猫が発症したもの。現代は、世界中の国々の人が日常的に行き交いますし、狂犬病にかかった動物が船などで日本にやって来る可能性もあります。もし狂犬病予防接種を怠って感染したら、犬ばかりでなく人の命や社会全体に大きな被害を与えてしまいますから、必ず予防接種を受けさせましょう。
次回は、多くの犬が命を落とす怖い感染症「フィラリア」対策などについてお伝えします。
コメントを送信