あなたのお散歩スタイル、間違っていませんか?
前回は、「散歩がなぜ必要なのか」「効果的な散歩方法」についてご紹介しました。今回の散歩編2回目では、リードの持ち方や散歩コースの選び方など、実践的なノウハウを紹介していきます。犬との生活に慣れている人でも、初めて目にするテクニックが見つかるかもしれません。
散歩は1日何回行けばいいの?
まずは、毎日のお散歩回数です。犬種や性格、散歩中の運動量によって変わってくるため、1日何回必要と断言はできないようですが、1日2回という話はよく聞きます。しかし藤田先生によると、特に子犬のころは、もっと頻繁に連れ出すほうが、人と犬との共生生活に必要な「社会化」を育むうえでベターなのだとか。
「ほとんどの飼い主さんは、仕事や家事、勉強などご自身の時間がありますから、散歩に行く時間は限られてしまいます。30分、1時間などまとまった散歩時間が取れないことから、散歩は1日1回と決めている方もいらっしゃいます。しかし、1日1回の散歩だと、犬は1日中お散歩時間を待ちわびることになりますから、散歩の際に興奮してとにかく前へ進もうとし、引っ張り癖がついてしまうことがあります。まとまった時間が取れなくても、回覧板を回しに行く、ポストに手紙を出しに行く、などちょっとした用事の際にこまめに連れ出しましょう。そうすれば、家の外に出ることは日常的な行動になりますから、散歩中に興奮して引っ張りまくってしまったり、逆に散歩が怖くて尻込みしてしまうことも少なくなります」
引っ張り癖をつけさせないためには?
散歩中のお悩みとしてよく耳にする「引っ張り癖」は、運動量を豊富に要求する大型犬に多いイメージがありますが、じつは犬のサイズにはあまり左右されません。犬の性格としつけの方法、散歩のスタイルが大きく影響してくるのだそうです。
「犬は人の横に着いて歩かせるのが基本です。犬に引きずられるように散歩している方を見かけますが、それではほめられる散歩とは言えません。飼い主さんを置いてきぼりにしてどんどん先に行ってしまう犬は、そもそも人に合わせる意志がないという理由だけでなく、飼い主さんが歩く速度が遅すぎることも多いのです。まず、飼い主さん自身が犬のペースに適した歩き方をしているかどうか考えましょう」
人が歩けば犬も歩き、人が立ち止まれば犬も立ち止まる、あくまでも人主導の散歩がベストだそうです。また、犬種によっては引っ張り癖がつきやすいものもあります。その犬種がどのような目的で作出されたのか、などをしっかり勉強しておくと、引っ張り癖をつけさせないしつけに役立ちます。
「例えばアラスカン・マラミュートやシベリアン・ハスキーなど、犬ぞりや荷物を引く仕事をしてきた犬は、胸に圧力がかかると前に進もうとする『抵抗反射』という特性を持っています。こういう犬種の引っ張り癖を直すためには、引っ張るたびに力で引き戻そうとしてもあまり効果が得られませんから、そもそも引っ張る状況にさせないようなしつけが要求されます」
では、引っ張り癖をつけさせないためには、どのようなしつけをすればいいのでしょうか。
「犬種や性格、これまでのしつけ方法、散歩スタイルによって効果的な方法は変わりますので、こうすればどの犬でも直る、という極意はありません。ただ、どんな犬にも当てはまるコツとしては、飼い主に注目してもらうしつけを心がけることです。散歩中だけでなく、さまざまなしつけの場面や普段の生活の中で、犬と人が心を通わせ、自然に注目してもらえる関係になるように育てましょう」
藤田先生の公式サイトを拝見すると、1回のトレーニングで引っ張り癖がピタッと直った、とおっしゃる飼い主の方の声があります。10歳の大人犬も直っているようですから、その犬に最適な方法さえわかれば、引っ張り癖など恐るるに足らず、のようです。いつもアイコンタクトを取るしつけについては、別の回にあらためてご紹介しましょう。おやつを効果的に使うなど、さまざまな方法があるようです。
散歩時のリードの持ち方は?
「リードの持ち方が悪いと思わぬケガをするばかりか、犬にとっても危険です。例えばボーダーコリーは、動くものがあると追いかける性質を持っているため、クルマが走ってきたときにいきなり飛び出してしまうことがあります。リードが手からすっぽ抜けてしまったら最悪の結果を招きかねません。また、散歩中に犬が突然走り出し、指の骨が折れたり爪が割れたり、引き癖のある犬を抑えるうちに腱鞘炎になってしまった飼い主さんもいらっしゃいます。多くの方は、リードの端を手首に通して片手で散歩していますが、これではとっさのときにリードをうまく扱えないのです」
リードは、ただ単に犬をつなぎ止めておくだけのものではなく、散歩中に犬と人がコミュニケーションを取るための手段だそうです。持ち方ひとつでコミュニケーション力は変わります。
「リードは両手で持ちます。そのほうがさまざまな状況に対応しやすいからです。犬を人の左につけて散歩する場合、まず右手は、リードの端の輪っかに親指を通し、その後包み込むように握って保持します。左手はリードの中間、持ちやすい場所に添えて順手でつかみます。こうすれば、犬が駆け出そうとしたときなどにも瞬時につかむことができます。逆手で持っていると、ガンと引っ張られたときなどに指を痛めることがあるので避けましょう」
両手が使えることが前提ですから、お散歩バッグはウエストバッグがベストです。片手にバッグを持っていると、こまかなリードコントロールがしにくくなります。
散歩コースの選び方は?
家の外には危険がいっぱいです。犬は人に比べて背が低く小さいので、クルマのドライバーが見落とすことがありますし、自転車がスレスレを追い抜いていったりします。どう猛な犬にいきなり威嚇されることもあるでしょう。こういう恐ろしい経験をすると、特に子犬はその記憶がずっと残り、散歩に行きたがらなくなってしまいます。
「いちばん大切なのは『安全・安心なコースを選ぶ』ことです。クルマ通りや人通りが少なく、危険なものや食べ物、ゴミなどが落ちていない道を選びましょう。できれば、犬を飼う前に下見をしておきたいところです。コースは1本だけに固定せず、いくつかのエリアやコースを組み合わせて変化をつけましょう。ある程度散歩に慣れてくると、犬が喜ぶコースと気乗りしないコースが分かれることもあります。犬が快適に歩けるよう、散歩中はつねに犬の様子を観察しましょう」
ゴミが落ちていると、特にラブラドール・レトリバーやビーグルのような犬種はパクッと食べてしまうことがあります。コンビニの近くには食べ残しが放置されていたりするので、拾い食いの癖をつけさせないためにも、誘惑の多い場所での散歩は避けた方がいいでしょう。トラブルが起きてから対処するのではなく、そもそもトラブルを起こしにくいコース選びを心がけたいものですね。
次回は、飼い主さんから多く聞かれるお悩みのひとつ、「吠え癖」について藤田先生にうかがっていきましょう。
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