犬と猫にマイクロチップの装着を
2015年12月28日、日本経済新聞夕刊に興味のある記事が掲載されていました。それは、ドイツのベルリン郊外でクリスマスの当日、7年前に失踪した飼い猫が飼い主のところに無事に帰ってきたことを、動物保護団体が明らかにしたというニュースでした。その猫は保護団体の施設に預けられていましたが、装着されていたマイクロチップの情報から飼い主が明らかになり、飼い主の元へ戻ったという内容でした。とてもハッピーエンドなお話ですが、じつはその主役は猫に装着されたマイクロチップです。
みなさんは、マイクロチップをご存じですか? 日本獣医師会のホームページの「動物の福祉及び愛護」や「マイクロチップを用いた動物の個体識別」に、詳しい内容が掲載されていますので、ぜひご一読ください。
マイクロチップは、直径2mm・長さ約12mmの円筒状の、生体適合ガラスカプセルやポリマーで包まれた電子標識小型器具で、ICチップとも称されています。そのマイクロチップの中に犬や猫の個体識別番号が保存されていて、読み取り機である専用リーダーを近づけると、リーダーが発する電波にマイクロチップが反応して番号を送り返し、これをリーダーが感知して動物の番号を読み取ることができるしくみです。
マイクロチップは電源を必要としないので、一度犬や猫の体内に埋め込めば生涯にわたり交換する必要はありません。マイクロチップの装着は、犬や猫の背側頚部の皮下に専用インジェクターで埋め込みますが、通常の皮下注射と変わらず、身体への負担や副作用はなく安全性についても証明されています。マイクロチップには、国、メーカー及び動物種のコード、個体番号が記録されていて、国内はもちろん、世界中で1つしかない番号が認識されます。
ペットのマイクロチップは人間のマイナンバー的なもの
マイクロチップが装着された犬や猫、そして飼い主の情報は、日本獣医師会のデータベースで管理されていて、マイクロチップを装着した犬や猫が発見された際は、そこから読み取った個体識別番号をデータベースに照会して、瞬時に飼い主を検索し、連絡することができます。マイクロチップの装着は世界的に普及し、特にヨーロッパでは早くから利用されていて、EU全域では2500万頭の犬に装着されているといわれています。
わが国において、犬や猫を海外から持ち込む場合、動物検疫を受ける際にマイクロチップ等で個体の識別を可能にしておかなければなりません。また、海外でマイクロチップの装着が義務付けられている国に、犬や猫を一緒に連れて行く際は、それに従わなければなりません。
平成24年9月に改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」の附則第14条にあるマイクロチップの装着等について、国は平成30年度を目途に、ペットショップ等で販売用の犬や猫等へのマイクロチップの装着の義務化や、その情報の管理体制の整備等に必要な施策を講じるとされています。
そして、日本獣医師会は、平成18年1月付環境省告示第23号に規定された団体として、マイクロチップの情報登録とその管理を行っていますが、改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」の趣旨を踏まえて、マイクロチップによる動物の個体識別と所有の明示を推進しています。さらに、マイクロチップの情報登録管理体制を整備するため、マイクロチップ普及推進特別委員会を設置するなどの対応を進めています。特に、犬や猫の所有を明示するものとしてのマイクロチップの装着の義務化と国民的な合意形成、データベース管理体制の一元化、関係機関の組織化を検討しています。
ペットフード協会による平成26年4月の飼育頭数推計は、犬1034万頭、猫996万頭であり、日本獣医師会による平成27年3月のマイクロチップ登録頭数を、犬88万頭・猫20万頭とすれば、装着率は犬が約8.5%、猫が約2.1%であり、極めて低い装着率となっています。飼っている犬や猫が迷子、災害、盗難、事故に遭遇した際、マイクロチップを装着していれば、確実な所有の明示ができるため、人とペットの共生社会においては極めて重要な絆となります。今後はより一層、マイクロチップ装着の推進を図る必要があります。
なお、マイクロチップの装着は獣医療行為であるので、動物病院の獣医師に依頼し、また、犬や猫にマイクロチップを装着した際は、その情報を必ず登録する必要があることを忘れないでください。
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