飼い犬・猫へのマイクロチップ装着「悩む」飼い主〜6月1日から義務化スタート、普及や理解が課題
このコーナーでは、注目ニュースに対する編集部や識者のコメントを紹介します。
6月1日から、ペットショップやブリーダーが販売する犬や猫へのマイクロチップ装着の義務化がスタートしました。マイクロチップを装着していれば、保護された際に身元証明ができ、飼い主と再会できる可能性が高くなります。災害の多い日本では、海外よりも装着のメリットは大きいといえます。
しかし、マイクロチップに対する認知や有用性の理解は進んできたものの、実際に普及が進んでいるとはいえない現状もあります。それには、メリットよりもかわいそうといった感情論、間違った認識による抵抗もあります。
例えば健康被害について。記事にもあるように、健康被害の事例はほんどありません。英国の例でも誤差の範囲といわれる程度です。それなのに、健康被害の可能性を訴える獣医がいることにも疑問を感じます。
同じように、痛そうという意見もあります。確かに注射針は太くて痛そうです。しかし、NITTOKUが開発したマイクロチップは一般のものよりも30%小型し、インジェクタも最小径の低痛バックカット針を採用するなど医療グレードでの製品も開発されています。
ただし、義務化を謳ったにも関わらず、国や自治体、獣医師会の取り組みも中途半端にも思えます。例えば、義務化されたのは、ペットショップやブリーダーが販売する犬や猫のみです。すでに飼っている飼い主、保護施設の犬猫については努力義務とされました。
マイクロチップ装着の義務化は、迷子や災害時などに再会しやすくしたり、遺棄防止などを目的としています。それならば、もっと積極的に推進すべきではないでしょうか。これでは、「仏造って魂入れず」です。
マイクロチップを普及させたいのであれば、もっとできることがあるはずです。自治体や各都道府県の獣医師会は、新型コロナウイルスのワクチン接種時と同様に、大規模接種会場で説明会や装着キャンペーンを定期的に行うこともできるはずです。そして、国はその活動を資金面でバックアップする。また、装着費用も統一すべきでしょう。実際に、筆者の自宅の周辺にある動物病院では、料金はバラバラでした。製品ごとに売価が違うのが理由のようですが、それならば不足分を国が助成するなどしてもよいと思います。
さらに、手続きについても、もっと簡単にできるようにすれば、装着を躊躇している飼い主も減るのではないでしょうか。例えば、自分で登録するのではなく、動物病院で装着した際に登録を代行したり、ペットショップで購入した際に所有者変更を積極的に代行するなどすれば、装着する人も増えると想定されます。
また、「努力義務」を「装着しなくてもいい」と勘違いしている飼い主もいます。しかし、「努力義務」とは、法律の条文で「~するよう努めなければならない」と規定されたものです。法的拘束力や罰則はありませんが、規定のとおり「装着するよう努めなければならない」のです。
繰り返しになりますが、マイクロチップは健康被害がほとんどなく、安全性は世界的に認知されています。装着していれば、災害の際に再会できる可能性が高まります。また、安易な遺棄を抑止する効果も期待されています。まだ、装着をためらっている飼い主は、正しい情報を得て、装着を検討すべきでしょう。
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