【犬飼いTIPS】古代エジプトの神話に登場する犬の神「アヌビス」をご存じですか?

歴史の長いエジプトで比較的に古い時期から崇拝されていたのが「アヌビス」です。エジプト神話に登場する冥府の神で、「アヌビス神」とも呼ばれています。ミイラづくりの神であり、死後の魂がいくとされる冥府で死者の魂を守る仕事をしています。今回は犬の神「アヌビス」のお話です。

アヌビスは人の体に犬の頭部をもつ神

アヌビスは、アフリカンゴールデンウルフの頭部を持つ半獣として描かれています。アヌビスとはギリシャ語で「若い犬」という意味ですが、古代エジプトでは「インプゥ」と呼ばれていたようです。

アフリカンゴールデンウルフは、ごく最近までキンイロジャッカルとして分類されていました。そのため、ジャッカルの頭部を持つ半獣といわれることもあります。しかし、現在は絶滅してしまったイヌ科の動物や想像上の動物がモデルだという説もあります。

実際にエジプトにいるアフリカンゴールデンウルフは、その名のとおり明るい色の毛並みを持つオオカミです。「アヌビス」の身体が真っ黒なのは、ミイラづくりの神であることに関係しています。ミイラ製造時には、防腐処理のためにタールを塗りこむため、遺体が真っ黒な状態になるのです。その姿を模倣しているといわれています。また、大地・闇を映した観念的な色だとも考えられています。

アヌビスは冥府の神

アヌビスは冥府の神として、死者の眠りとその魂を守る役割を担っています。死者が再び生き返るまで、その未来を守っているのです。死者に関わっていることから「死者を冥界に導く神」や「死神」などと勘違いされることが多々あります。

しかし、死者を冥界に導くのは「ハトホル」という牛の頭を持つ神であり、死神とされるのは「セクメト」という殺戮の神であるため、アヌビスとはまったくの別物です。古代エジプト人にとって犬は荷物を運ぶ動物ではなかったようで、図柄的にも犬が背中に物を載せている図は存在しません。

なぜアフリカンゴールデンウルフの頭部が用いられたのか

冥府で死者の魂を守る仕事をしているアヌビスの頭部に、なぜオオカミや犬の頭部が用いられたのでしょうか。それは、古代エジプトにおいて、墓場の周囲を徘徊するオオカミあるいは犬の様子が、死者を守ってくれているように見えたから、あるいは犬の忠誠心から、亡き飼い主につきそう姿が死者を守っているように見えたことがその理由ではないかとされています。

アヌビスに似ている犬種は?

アヌビスに似ているといわれているのが「ファラオ・ハウンド」というサイトハウンド犬種です。その起源には諸説ありますが、紀元前3000年ごろの古代エジプトで、ガゼル狩りの猟犬であった犬が祖先だといわれています。もっとも古くから存在していたとされる原始犬の1種で、現在までその外見がほとんど変わっていないとされています。

ファラオ・ハウンドはアヌビスを連想させるような、小さな顔と大きな耳をもちます。スリムでスタイルが良くクールな印象の犬です。その高貴な姿からファラオという名がつけられていますが、エジプトではなくマルタ共和国の国犬に選ばれています。

まとめ

死者の魂を守る仕事をしていたというアヌビス。その高貴な姿を連想させるような犬種がファラオ・ハウンドというのはとても納得ができます。近年のJKC(ジャパンケンネルクラブ)への登録数は10頭前後と、とても少ないので、なかなか日本では実際にファラオ・ハウンドを目にするのは難しいかもしれません。しかし、国内にもブリーダーは存在するようなので、もしかしたら出会えるかもしれませんね。