【猫飼いTIPS】猫の複数頭飼育をする前に考えよう

近年、犬猫の「多頭飼育崩壊」が大きな社会問題になっています。「多頭飼育崩壊」とは、安易に数を増やし、さらに知識がないまま繁殖をしてしまい、飼い主の経済力や世話が追いつかず破綻してしまう状態を言います。

とくに猫の場合は繁殖効率が高く、飼育環境や個体によって年に4回程度の出産が可能です。放っておくと1組の雄と雌が1年後には、あっという間に20頭以上に増えてしまうのです。飼っている猫が増えれば、飼育スペース、トイレなど日々の世話、キャットフードや猫砂などの用品代、医療費などが増えます。

また、それだけでなく1頭で飼っているとき以上の配慮が必要になります。確かに何頭かの猫を飼っていると、それぞれ個性があってとても楽しいのですが、許容範囲を超えてしまうと、飼い主も猫も不幸な道をたどることになります。複数頭飼育をする前に自分の生活スタイル、住環境、経済力、体力などを冷静に考えて、自分が猫を何頭飼えるのかを判断する必要があります。下記のことを考えながら、しっかりとした飼育ができるかどうか、新しい猫を迎える前に考えてみましょう。

室内飼育を徹底する

これは1頭で飼っていても同じですが、外に遊びに出すことは、ほかの猫と喧嘩になりケガをしたり、病気をもらってくる原因になります。感染するような病気であれば、1頭で飼っているときとは違い、他の猫たち全てに感染してしまいます。また、交通事故にもあう可能性もあります。そうなれば、手術費や治療費は大きな金額になってしまいます。

室内飼育を徹底しましょう

それぞれの猫に十分な生活スペースと寛げる場所をつくる

それぞれの猫が快適に過ごすためには、一定の広さや上下運動ができる仕様(キャットタワーなど)、隠れたり寛げる場所が必要です。しかし、猫の数が多すぎるとそれがストレスとなり、問題行動や病気として表面に現れてきます。下記のような猫の行動や症状が見られた場合には、ストレスのサインかもしれません。そうなると、一時的に猫を隔離したり、部屋を分ける必要が出てきます。

・過度に体を舐めたり、毛が抜けてハゲができる
・グルーミングをしなくなり、毛艶が悪く、毛がバサバサになる
・トイレ以外の場所で排泄をしたり、過度なマーキングを壁などにする(雌でもマーキングはある)
・辺り構わず爪とぎをしてしまう
・隠れて出て来なくなる
・異常な鳴き声をあげる
・ほかの猫に対して攻撃的になったり、追いかけ回したりする
・飼い主に対して攻撃的になる
・元気がなく食欲不振になる
・膀胱炎や便秘、下痢になる

猫にストレスを与えない部屋づくりを心がけましょう

すべての猫の避妊・去勢手術を徹底する

1頭飼いの場合でも万が一の場合を考えて、また生殖器系の病気を防ぐためにも避妊・去勢手術は必要です。複数頭飼育をする場合には、さらにその重要性が増します。雄同士を飼う場合は縄張り争いやストレスを防ぐため、また、雄と雌を飼う場合には放っておくと驚くほどのスピードで増えてしまうので手術が必要です。

猫にとって繁殖行動は抑制することができないものです。近親であっても交配をしてしまいますので、1~2年で世話ができる頭数を超えてしまいます。また、避妊・去勢をせず、欲求を残したまま交配をさせないことは、猫にとって大きなストレスになります。それが原因で、下記のような問題行動や病気を引き起こすこともあるのです。

・猫同士の喧嘩
・トイレ以外の場所で排泄したり、過度なマーキングを壁などにする(雌でもマーキングはする)
・過度に体を舐める
・自分の尻尾をグルグル回りながら追いかける
・異常な鳴き声をあげる
・外に出たがる
・自分の体を血が出るほど噛む

トイレは猫の頭数分+1個を用意する

猫はとてもキレイ好きです。トイレが汚れていると、別の場所で排泄をするようになります。そうなると、飼育環境までも不衛生になり、猫へのストレスだけでなく、異常な鳴き声や悪臭などで近隣住民に迷惑をかけることになります。とくに密集している住宅地やマンションなどの集合住宅では、大きな問題になってしまうのです。

それぞれの猫にトイレを用意しましょう

ワクチン接種と定期的な健康診断をきちんと受ける

病気に感染したり、重篤な病気を早く発見できるように、ワクチン接種をすることや定期的な健康診断を受けることはとても大切なことです。複数頭飼育するということは、その頭数分の費用がかかることになります。

ワクチンや健康診断はきちんと受けましょう

1頭1頭にあわせた食事の管理をする

普段の食事の量や質も、1頭1頭の年齢や健康状態に合わせて用意する必要があります。多頭数飼育になればなるほど、その管理は難しくなっていきます。

猫同士の相性に気をつける

1頭飼いであれば、飼い主との関係性だけを考えればよいのですが、多頭数飼育になると猫と猫の関係性を考える必要がでてきます。猫にも感情があり、相性が悪ければトラブルや問題行動を引き起こすことになります。また、大喧嘩になり、その後の関係性が猫の生涯に渡って悪くなることもあります。相性が悪く、仲良くできない場合はそれぞれ別の部屋で過ごすことにもなってしまいます。そうなれば、より多くのスペースが必要となります。とくに成猫同士の初対面には十分な注意が必要です。無理に合わせることなく、時間をかけて様子を見るようにしましょう。

猫同士の相性にも注意が必要です

災害時の避難方法を考える

近年、地震や噴火、洪水など自然災害等で避難を余儀なくされる事態が多々発生しています。自治体では、災害時にペットと一緒に非難する同行避難を推奨するところが増えてきました。日ごろから飼い主は万が一のことを考え、猫をどう運び、避難所でどのように飼育するのかをしっかりと考えておく必要があります。1頭なら無理なく速やかに移動ができますが、多頭数飼育の場合には頭数によっては、飼い主一人では限界がでてきます。家族がいる場合には役割分担をしておく必要もあります。

まとめ

いかがでしょうか? 猫はあまり手がかからないといわれますが、それでもひとりでしっかりと飼える頭数には限度があります。飼った以上は、その猫の終生に渡って責任を持って育てて行く必要があります。もし、事情があって育てて行くことができなくなった場合にも、猫の幸せを願い、しっかりと育ててくれる人に自らが託す必要があります。決して「捨てる」ことは許されない行為です。もちろん「多頭飼育崩壊」することもです。飼い主も猫も幸せに過ごすことが何よりも大切。それを一番に考えて決断しましょう。