無理しない愛犬・愛猫介護のススメ 第9回「身体を清潔に保つために必要なケア」前編

愛犬・愛猫に介護が必要になった場合には、より一層に体を清潔に保つことが大切です。老化や病気で抵抗力が落ちているときに清潔にしておかないと、別の病気になる要因をつくってしまうことになります。また、愛犬や愛猫が今まで自分でできていたケアができない場合も多く、できないことへのストレスも抱えがちです。飼い主がその気持ちを汲み取って、ケアすることで心を癒してあげる必要があります。さらに、毎日ケアすることで、身体の変化にも気が付くことができます。今回は体を清潔に保つために必要なケアのお話です。

ブラッシングをする

まず、ブラッシングに必要な以下のものを用意します。

・ラバーブラシ
突起が短い被毛を立ち上がらせて抜け毛を取り除き、新陳代謝も即します
・スリッカーブラシ
被毛を整えるブラシ。「スリッカー」は英語のSlick(滑らかな)から転じ、毛並みを整え、被毛を滑らかに整えるほか、ホコリや花粉などの除去、ノミ・ダニの寄生予防、血行促進などの効果も期待できます
・コーム
コームは櫛(くし)のこと。毛を梳(と)いて、被毛を整えるのに使います
・スプレー
最後に被毛を整えるときに使います。ブラッシングスプレーや静電気防止スプレーなど色々な種類があります

製品の準備ができたら、いよいよブラッシングしてみましょう。

①全身のブラッシング
 被毛に付いた汚れを取り除き、毛並みを整えるためにラバーブラシやスリッカーブラシで丁寧にブラッシングをします。皮膚への刺激にもなるので、血行がよくなり、新陳代謝の活性化にもなります。まずは、抜け毛を除去するために、毛を逆立てるようにブラッシングします。毛玉がある場合は、手で優しくほぐします。どうしてもほぐれない場合には毛玉をハサミでカットする必要がありますが、猫の場合は皮膚が柔らかいので、皮膚を一緒に切らないように気をつけましょう。
 また、ブラッシングのときに痛い思いをさせると、ブラシを見るだけで嫌がるようになってしまいます。地肌を傷つけないように、ブラシの先が皮膚にあたらない程度の力加減で行いましょう。特に犬は皮膚が弱いので、注意が必要です。最後に毛並みに沿ってコームでとかして仕上げます。最初にコームの目が粗いほうで梳かし、その後、目が細かいほうで梳かすとキレイになります。ブラッシングスプレーや静電気防止スプレーなどを使用すると、毛並みが美しく仕上がります。愛犬・愛猫の心を癒すように、優しく、丁寧に行うようにしましょう。

②顔のブラッシング
 愛犬・愛猫が動かないように、背後から左手で顎を固定します。右手にブラシを持って、顔の中央から外側に向けて丁寧に梳かします。(左ききの飼い主は逆の手)垂れ耳タイプの耳をブラッシングするときは、耳の下に手を添えると上手にできます。スリッカーブラシの1本1本は細いので、ブラシで目や耳を傷つけないように充分に気を付けましょう。

③四肢のブラッシング
 ブラシを持っていない手でそれぞれ脚の付け根を持ちます。足に病気や怪我を抱えている場合には、強く引っ張ったり、曲げたりしないように気を付けましょう。

部分的にシャンプーをする

全身シャンプーは体力を消耗するので、部分的なシャンプーをしてあげるとよいでしょう。ただし、体調がよいときを見計らって行うことが大切です。

①足を洗う
 大きめの洗面器に37~38度のお湯を入れて、後ろ足から洗います。小型犬の場合は洗面器に四肢を入れ、バランスを崩さないようにお腹を片方の手で支えます。中型犬・大型犬の場合は1本ずつ洗面器に足を入れて洗います。台所用のスポンジに水とシャンプーを含ませると、簡単に泡立ちます。
 洗ったあとは、指と指の間も含めて丁寧にタオルで拭きます。愛犬や愛猫が呼吸器官疾患を抱えている場合には、湿気が原因で命に関わる事態に陥る危険があります。風呂場などの湿気が多いところでは、換気に気を付けるようにしましょう。

②陰部を洗う
 お尻の下にお湯を入れた洗面器を置き、後ろ足を洗面器のなかに入れます。陰部やその周辺の汚れがちな部分を洗います。お尻を押すと前のめりになって体勢を崩しやすいので、片方の手で体を抑えておきます。シャンプー剤が残らないように、しっかりと洗い流しましょう。
 被毛をしっかりと乾かさないと湿気が残り、雑菌が繁殖してしまいます。皮膚疾患の原因にもなりますので、洗ったあとはタオルでよく拭き、低温設定のドライヤーで乾燥させましょう。もし、愛犬・愛猫がドライヤーを嫌がるようなら、水分を吸い取りやすいタオルで丁寧に拭き、ときどき、櫛で梳かしながら自然乾燥させるとよいでしょう。
※シャワーを使用する場合には、皮膚への刺激を抑えるために水流は弱めに設定します。シャワーの音を嫌がる場合には、洗面器にお湯を入れ、そのなかにシャワーヘッドを入れてお湯を出すと音がしません。その後は素早く愛犬・愛猫の体にシャワーヘッドを密着させると音がしなくなります。ぜひ、試してみてください。

全身を拭く

寝たきりの愛犬・愛猫の場合は、シャンプーをするのは大変です。その場合は、月に2~3回ほど全身を拭いてあげましょう。

①首からお尻に向かって拭く
 お湯で濡らしたタオルをよく絞り、タオルを広げて全身を包み込むようにします。ごく短時間のみ蒸らすと汚れが浮いてきます。首からお尻に向かって、少しずつ拭いていきます。被毛の流れに沿って拭いていくとよいでしょう。被毛に水分が残っている場合には、ドライヤーを使用して乾燥させましょう。
※ドライシャンプーを使用するのも効果的です。

②陰部を拭く
 ①と同じ方法で、陰部やその周辺を暖かいタオルで拭いていきます。被毛に汚れがある場合には、スリッカーブラシなどで被毛を整えてから拭くとよいでしょう。雑菌が繁殖しないように、ドライヤーなどを使用して、しっかり乾燥させます。

③四肢を拭く
 暖かいタオルで、脚の1本1本を包み込むように優しく拭いていきます。肉球・指の間・爪など汚れがこびりついている場合があります。少し蒸らすと汚れも落ちやすいので、汚れが酷い場合には何度かタオルで蒸らしてから拭くとよいでしょう。

まとめ

基本的に犬や猫はキレイ好きな動物です。しかし、さまざまな理由でシャンプーが困難になることがあります。身体が汚れてくれば、ニオイも強くなります。それは飼い主だけでなく、愛犬・愛猫もストレスが溜まる要因になります。そんなときには、部分シャンプーや全身を拭いてあげることで、心身ともに快適に過ごすことができます。愛犬・愛猫の体調がよいときに、ケアしてあげましょう。

次回は、「身体を清潔に保つために必要なケア」の後編をお伝えする予定です。