子犬や子猫の命を扱う繁殖で「それは安易だよ」と思うこと
先日、新しい地図の草彅 剛さんが飼っているフレンチブルドックが3匹の子犬を産み、その幸せそうな様子がメディアで取り上げられていました。飼っているのは1匹なので、外交配をして子犬を生ませたのだと思います。その際、親犬のブリーダーさんなど知識のある方が、しっかりサポートをされたのかなぁなどと想像しています。また、3匹のうち2匹は知り合いに譲ったとのことで、私たちブリーダーがいつも感じている「嬉しいような、寂しいような複雑な気持ち」を経験されたようでした。
しかし、「かわいい」「幸せ」という様子だけがクローズアップされる情報を目にすると、ブリーダーである私は少し心配になります。取り上げ方に問題があるのですが、その情報には「命を扱う」という重要なことが抜け落ちているからです。出産には大変な面やサポートが必要なことが多くあります。草薙さんもこの出産・子育てで、大変さを感じたと思うのです。そのことを知らずに「私もかわいい子犬がみたい」と安易に繁殖をする人が増えないといいなぁと危惧するのでした。
わが家にも「子猫を産ませたいのですが」という問い合わせがあります。ですが、私は基本的にお断りをしています。なぜなら、繁殖は「命」を扱うものですから、安易に知識がないままに行ってはならないと私は考えているからです。繁殖をする場合、いろいろなことを考える必要があります。親猫の健康状態、遺伝的疾患、血統(近すぎないか)、親猫の血液型(問題のない組み合わせか)、母猫の出産間隔といった命や健康に直接に関わることに加え、親猫の気質、カラーの組み合わせ、スタンダードなどなど。ブリーダーはこのようなことをつねに考えます。もちろん、交配・出産・子育てに関わる知識が必要です。簡単に産ませているように見えるのかもしれませんが、健全な子犬・子猫を産出し、育てるのは本当に大変なことなのです。
ですから、私は問い合わせてきた方にこのように聞きます。
「産まれる子猫は考えているよりも多いかもしれません。わが家では11匹が一度に産まれたことがあります。その子猫をすべて飼うことができますか? 難産であれば、出産途中で母猫が命を落とすこともあります。子猫も仮死状態、あるいは亡くなって出てくることもあります。もしかして、すべての子猫が奇形や障害などを背負って産まれてくるかもしれません。その場合でもすべて自分で飼うという覚悟がありますか? 知識がないことで、不幸な子猫を産ませてしまう可能性もあるのですよ」。
そうすると、大抵の方は「そこまで考えていませんでした。簡単ではないのですね」といって納得してくれます。極端なことをいっているようですが、それくらいの覚悟を持っていなければ「命」に向き合うことなどできないと思うのです。安易に繁殖を考えてほしくないなぁというのが本心です。覚悟があれば、事前に知識や情報を得る努力をするでしょう。ですが、安易に「かわいいから産ませてみたい」ということであれば、そこまで追求はしないでしょう。「命」を扱うということはそんな簡単なことであってはならないと思うのです。
最近は、「悪徳ブリーダー(繁殖業者)」や「にわかブリーダー」が増えています。彼らにも同じことがいえます。「悪徳ブリーダー」はいうまでもありませんが、「にわかブリーダー」とは、純血種を飼育・繁殖するうえで、その犬種・猫種に対する探求心(情熱)・知識量・情報量が圧倒的に不足しているブリーダーのことです。それらが不足していることで、いろいろな場面で問題が生じていることを耳にします。私は、特にこの「にわかブリーダー」が増えているなぁと感じているのですが、みなさんはどう思いますか?
結局のところ、ブリーダーは「資質」がすべてだと思うのです。それは、生まれてくる子犬・子猫の質に確実に表れます。例えば、「この子、本当にメインクーン?」というような容姿の子猫もいます。「愛情をかけて育てている」といいますが、それは当然のこと。でも、そこから探求心をもって知識・情報・経験などを得ようと努力をするのが、「ブリーダー」という名のプロだと思うのですが。何の努力もしないのなら、安易に「ブリーダー」を名乗ってほしくないなぁというのが本心です。
コメントを送信