東京都渋谷区が、子どもと高齢者をIoT技術で見守る社会実証を開始
昨今、子どもを狙った悪質な犯罪が後を絶ちません。つい先日も千葉県で女児殺害事件が起こり、幼く尊い命が奪われてしまいました。警察庁のデータによると、13歳未満の子どもの被害件数は平成19年の3万4458件から、年々減少傾向にはあるものの、平成26年には2万4707件となっており、子どもを狙った事件はこれだけ起きています。また、高齢者を狙った犯罪も平成14年の約22万5000件のピーク時から減少傾向にありますが、平成24年には約13万件となっています。
こうした社会事情のなか、渋谷区と東京電力ホールディングスは、IoT技術を活用し、子どもや高齢者を見守る社会実証を6月からスタートします。昨今の高齢者や子どもが対象となる事件や事故、認知症による徘徊などの社会問題の解決につながる新サービスの創出を目指しています。その共同記者発表会が5月17日に開催されました。渋谷区長・長谷部 健氏によると、高齢者の徘徊対策などは大きな課題のひとつで、早期発見が大切なので、このようなサービスは導入したいと考えていたそうです。
この見守りサービスは、スマート防犯サービスの開発・運営をする「otta」の持つIoT技術を活用。ottaは、代表取締役社長・山本 文和氏がご自身の娘が安心して暮らせる社会をつくりたい、という想いから設立されたそうです。
では、どのようなサービスなのかというと、ビーコンを搭載したキーホルダーなどの専用端末を持つ子どもや高齢者の位置情報履歴を、保護者や家族などがスマートフォンやパソコンで把握することができます。また、あらかじめ登録した場所を見守り対象者が通過した場合に、位置情報をメールで確認することも可能。データはクラウド上に無期限で保存される予定とのこと。
専用端末はGPS端末と比較しても、低コストで電池寿命も長いため、頻繁な充電も不要。ビーコンの電波を受信する基地局も電源コンセントにさすだけの設置なので、サービスの基盤となるシステムを簡単に構築できるのが特徴です。
対象エリア内では、基地局を公共施設や民間施設、東京電力グループの設備などの500カ所に設置予定。無料アプリをインストールした地域の方自身のスマートフォンをビーコンの電波を受信する基地局として活用。渋谷区内の小学校の生徒全員に専用端末を配布し、どのくらいの基地局を必要とするかを検証する予定になっています。
また、基地局整備については、キリンビバレッジバリューベンダーと協力し、渋谷区内に設置されている清涼飲料自動販売機に基地局端末を取り付け、自動販売機をサービスに活用していくとのこと。記者発表会で端末のデモンストレーションも実施されましたが、現段階の試験では、基地局端末1台で30~40mのエリアをカバーし、600人分の専用端末を同時に確認できているそうです。電波状況にもよりますが、100mくらいのエリアをカバーすることもあったとのこと。
現在、料金に関しては検討中とのことですが、東京電力ホールディングス 常務執行役・見學 信一郎氏によると、ワンコイン(500円)程度での提供を検討中とのことです。また、ペットの世界もIoT技術を活用した見守りサービスが増えていますが、ニーズが高まればペットの見守りサービスを提供することもすでに視野に入れているそうです。
この社会実証は6月から数カ月かけて有効性を検証していく予定です。将来的には、位置情報の提供だけでなく、見守り対象者の交通事故や日常生活の賠償事故の補償、健康・医療・育児・介護の電話相談など、安心・安全な暮らしの実現につながる付加価値サービスについての拡充も考えているそうです。有効性が確認でき、さまざまな自治体でもこうしたサービスの取り組みが進み、子どもや高齢者、ペットもみんなが暮らしやすい安全な町づくりが進むことを期待します。
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