その叱り方、愛犬に伝わっていますか?(前編)
藤田先生に聞く、しつけについてのワンポイントアドバイス、今回は「叱り方」についてです。人間の子どもを育てる場合、叱り方ひとつがその子の成長に大きく影響すると言われていますが、犬を叱るときでも同じこと。言葉が通じないぶん、より難しいとも言えるようです。あなたの叱り方は間違っていませんか?
叱るのはいいけど怒るのはダメ!
犬を飼った経験がある人のなかで、一度も叱ったことがないという人はいないのではないでしょうか。お客さんに飛びかからんばかりにキャンキャン吠えて威嚇した、家具をかじってボロボロにした、花壇を掘り返してしまったなど、多くの犬は困った行動をするもの。何の問題も起こさない、神様のような犬はたぶんいません。でも、そもそも「叱る」とはどういうことなのでしょうか? 「怒る」とは違うのでしょうか? 藤田先生に解説してもらいましょう。
「人間の子どもの育て方と同じように、犬のしつけ方は、時代によって変わってきました。いまは『叱るよりも褒めろ』とお考えの方が多いのではないでしょうか。もちろん、褒めることは大切です。しかし、褒めて育てるためには、叱ることも大切なのです。私がトレーニングを担当させていただく際には、飼い主さんに『褒めるために叱りましょう』とアドバイスします。なぜかというと、褒める・叱るは、犬に自ら考えてもらうための手段だからです」
褒めるために叱る、などと聞くと、なんだか機嫌がコロコロ変わる扱いづらい人の姿を想像してしまいそうですよね。でも、実際はまったく逆。犬と飼い主さんがともに信頼し合い、ともに社会性を身に付けて、楽しく幸せに暮らしていくための鉄則なのです。
「まず、叱るとは何か、を考えてみましょう。叱るとは、人や社会にとってよろしくない行動を止めさせ、犬が自ら考えてもらうためのメッセージですし、犬の安全や健康を確保するためのアドバイスです。人が犬を叱るだけではなく、親犬も子犬を叱ります。これも、犬社会のルールを身に付けさせ、群れの調和を保ち、安全を守るために叱っているのです。行動を抑制する手段としてごくごく一般的に行われる手法ですので、叱るのは悪いことだ、と過敏に反応するべきではないですね。また、大声を上げるだけが叱る方法ではありません。たとえば、要求吠えする犬に無視で対処する手法も、叱ることになります。ただ、必ず理解しておきたいのは、その場の感情のままに怒りやワガママを犬にぶつける行為は、しつけではないということです」
犬がイタズラをしたとき、私たちはついカッとなってしまうものです。しかし、それは飼い主の勝手な感情に過ぎません。怒りを感じること自体は否定しませんが、犬に幸せになってもらう、という目的を忘れて怒りまくっていたら、犬も人も、幸せになれるはずがないですよね。実際、そういう飼い主は多いのでしょうか?
叱り上手な飼い主さんを目指しましょう
「叱り方がヘタな飼い主さんも、叱るべきときに叱らない飼い主さんも多いですね。正しく叱って意思を伝えていないから、犬が困った行動を起こしてしまい、飼い主さんの手に負えなくなって相談にお見えになる、というパターンがほとんどだと感じています」
ヘタな叱り方というのは、具体的には、どのような叱り方なのですか?
「多いのは、ご自身がひとしきり怒ったことで満足してしまうパターンです。なんのために叱るのかをまず考えてください。止めさせたい行動を発見する→叱ることで、それはやってはダメなことなんだよと犬に伝える→飼い主さんの意思を感じ取った犬が考える→抑制または消失させたい行動が減っていき、やがてなくなる。この流れが完成しないと、叱る意味がありません」
たしかに、犬に意思が伝わっていなければ、行動を変えてくれるわけがないですよね。
「嫌悪刺激というのですが、その犬にとって居心地が悪い刺激を一時的に与えて、これをすると嫌なことが起こる、だから止めよう、と犬自身に考えてもらう。これが叱るということです。しかし、テンションが高い犬は、大声で叱るとかえって喜んで、はしゃぎ回ってしまうことがあります。これでは嫌悪刺激ではなく遊びですよね。また、叱るつもりで無視しても、人嫌い・犬嫌いな犬にとってはまったく嫌悪刺激になりません。ほかの犬に向かって激しく吠えている犬を背後から大声で叱っても、犬は飼い主さんが加勢してくれた、もっとやれと考えてしまいます。こうしたコミュニケーションのミスを避けるには、犬の性格や行動を、日ごろからつねに観察し続けることが大切です」
叱るタイミングも重要になってきます。
「叱られる行動をしている最中か、行動が終わってから10秒以内が目安。1分も過ぎてしまったら叱ってはいけません。犬の行動をよく観察していれば、然るべきタイミングに叱ることができるはずです」
現行犯でないとダメということですね。叱りベタな飼い主さんの特徴は、ほかにもいくつかあるようですので、次回も叱り上手になるためのコツをお伝えしていきます。
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