無理しない愛犬・愛猫介護のススメ 第3回「シニア期からの食事」【犬編】

犬も高齢になると食欲の減退、消化機能や新陳代謝の低下などが起こります。外見が若く見える個体もいますが、内臓機能が衰えている場合もあります。また、新陳代謝の衰えにより、これまでのドッグフードではカロリーが多すぎて肥満におちいることもあります。愛犬の便が柔らかくなった、ゲップやおならが多くなったなどの体調の変化が出てきたら、老化に配慮したシニア用フードへの切り替えを検討する必要があります。

第3回は「シニア期からの食事」についてお話します。

シニア用フードへの切り替えはいつごろ?

小型犬や中型犬は老化のサインが現れる7~10歳ごろ、大型犬は5歳ごろを目安に考えるとよいでしょう。犬の場合は、与えたら与えただけ食べてしまうので、量の管理も大切です。切り替え時期を飼い主が判断できない場合には、かかりつけの動物病院での相談をオススメします。

シニア期に必要な栄養素は?

シニア期の食事は低カロリーで、栄養価の高いものが理想です。愛犬の健康のために、必要な栄養素を飼い主が知っておくことが大切です。

①タンパク質

タンパク質は、体に必要なアミノ酸の供給や免疫機能を保つために必須な栄養素です。特に動物性タンパク質が豊富に含まれた肉は、老犬が効率よく消化吸収するのに優れていて、筋肉をつくるために必要なアミノ酸も豊富に含まれています。年齢を重ねるにつれて少なくなる筋肉を新たにつくるためにも肉をメインとした食事は欠かせないといえます。牛肉、豚肉、魚、鶏肉、乳製品、卵などを含むフードが適切です。ただし、慢性腎臓病や重度の肝臓病ではタンパク質は制限が推奨される場合があるので、注意が必要です。

②脂肪

脂肪は活動に必要なエネルギー源で、犬の体をつくる栄養素です。体温の維持や脂溶性ビタミンを体に運ぶ役割もあります。しかし、老犬は運動量が減るだけでなく新陳代謝が低下するので、脂肪の燃焼が減り、体重が増えやすいという傾向があります。タンパク質の摂取に必要な肉類には脂肪が含まれています。肥満が心配される場合には、低脂肪の鶏肉や牛肉をメインにしたフードを選ぶとよいでしょう。かさを増すために低脂肪ヨーグルトやカッテージチーズをフードに混ぜてもよいでしょう。ただし、肝機能が低下している場合には、脂質を与えすぎないように注意が必要です。

③ビタミン・ミネラル

ビタミンとミネラルは体の調子を整える栄養素ですが、犬はこの栄養素を体内でつくることができません。必要とするのはわずかですが、バランスのよい食事を考えて、食事でとれるようにしたいものです。フードのほか、最近ではサプリメントで摂取する方法もあります。

④ブドウ糖

ブドウ糖は脳の栄養として唯一の栄養素です。脳を働かせるのに必要で、老犬の認知症予防にも役立ちます。消化吸収がよいので、食事で必ず摂取できるようにしてあげましょう。

【炭水化物について】

犬は雑食傾向の肉食なので、主要なエネルギー源は肉から摂取できるタンパク質や脂質です。そのため、人間のように炭水化物は多く必要としていません。過剰な摂取は肥満のもとになるので、摂取量に気を付ける必要があります。

【水分について】

老犬になると健康状態により、脱水症状におちいりやすくなります。食事のほかに、こまめな水分摂取を心がけましょう。

トッピングやサプリメントで不足気味の栄養素を補う

最近のシニア用ドッグフードはサイズや犬種に分けられ、老犬にありがちなトラブルに配慮したものや、衰えやすい部位のサポート機能を備えたものなどかなり充実しています。栄養バランスがよく、カロリー調節がしやすいので、運動量や新陳代謝の低下が見られる老犬の肥満予防にもなります。「総合栄養食」と表記されたドッグフードの利用をオススメします。手づくり食は栄養バランスやカロリー調整が難しく、飼い主がしっかり知識を持たないと難しいといえます。シニア用ドッグフードやサプリメントを利用しながら、必要な栄養素が含まれる食材をトッピングするなどして、効率よく栄養摂取できるように工夫しましょう。

トッピングにオススメの食材には、下記のようなものがあります。肉・魚・野菜は茹でて細かく切って、ドッグフードに混ぜて与えます。食感の違いで、食べ付きもよくなります。肉・魚:野菜の割合は7:3くらいが理想です。あくまでもトッピングですので、ドライフードがメインと考えて量を調整しましょう。

●タンパク質
・鶏肉・豚肉・牛肉・牛すじ・鶏や豚のレバー・ラム肉・うなぎ・白身魚・青魚・おから・豆腐

●脂肪
・青魚(DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸)

●食物繊維・ビタミン
・きのこ・海藻

●カロテン・ビタミン・カルシウム
・緑黄色野菜

食欲アップの秘策とは?

愛犬の食欲が低下したときには、加齢による臭覚や味覚の低下が考えられます。1回の食事を4分の1ほど残すことが続いたら、嗜好性を高める工夫をしてみましょう。ドライフードのニオイを強めるために、ぬるま湯でふやかして与えます。ふやかすときはドライフードの成分が壊れるのを防ぐため、熱湯の使用は避けましょう。水分を増やすことで、脱水症状になることも防げます。トッピングを温めるだけでも効果はありますので、いろいろと工夫してみましょう。

療養食はどんなときに必要?

バランスよい食事を与えているのに痩せる場合には、消化機能の低下や病気が疑われます。嘔吐や下痢にも注意が必要です。食に関する異変を感じたときには、早めに動物病院を受診しましょう。万が一、消化機能の低下や関節炎、心臓病などを患っていた場合には、特別に調整された食事療養食を与えてみるのもひとつの方法です。嗜好性が高くつくられているので、それを与えることにより症状が軽くなることもあります。それらは臨床的に証明されているので、試してみる価値があるでしょう。

まとめ

老犬の健康を維持するために、しっかりと食事をとることはとても重要です。シニア期に入った愛犬の食事を考えることは、飼い主としての大きな役目です。愛犬の年齢や体調にあった栄養が十分に摂取できるよう、適切な食事を心がけてあげましょう。元気なシニア期を過ごせるように。

第4回は「犬・猫の介護の心得」についてお伝えする予定です。