ドッグランなどで、呼んだら来る犬にしつける方法は?
藤田先生に聞く、しつけについてのワンポイントアドバイス、今回は、名前を呼ぶとダーッと駆けつけてくれる「呼び戻し」のしつけです。ドッグランや自宅で重宝するほか、お散歩中や旅先で、犬が迷子になったり危険な場所に走って行ってしまうトラブルも防げます。
なぜ呼び戻しが必要なの?
わが家の愛犬・サモエドは、溺愛しすぎで寂しがり屋の甘えん坊に育ってしまったようで、見えない場所に勝手に行ってしまうことは滅多にありません。また、広いドッグランで遊んでいても、「おいで~」と声をかければ、満面のサモエド・スマイルをたたえながら走り寄ってきてくれます。ただ、藤田先生によると、呼び戻しに応えてくれない犬はけっこういるそうです。とはいえ、散歩中は必ずリードをつけているわけですし、呼んでも無視されたらこちらからつかまえに行けばいいのでは……と考える人もいるかもしれませんが、じつは、これではダメなのだとか。
「しつけを行うにしてもコマンドを教えるにしても、まずは犬に近くに来てもらわなくては始まりません。『呼び戻す→コマンドを与える→実行』は、セットですね。何か別のことをしていても、飼い主さんの呼び声に応えてくれる犬は、飼い主さんとの信頼関係がしっかり培われている犬です。」
たしかに、呼んでも来てくれない犬は、本当にそう思っているかどうかは別にして、飼い主さんを馬鹿にしてるみたいですもんね。また、トレーニング時だけではなく、日ごろの生活でも、呼び戻しができないと困ることがあります。
「散歩中はリードをつけているから安心、ではありません。リードが手からすっぽ抜けたりカラーが切れたり、自宅のドアや窓が開いていて脱走したり、ドライブでの休憩でクルマのドアを開けたとたんに車外に駆けだしてしまったり、犬がフリーになってしまう場面は日常的に起こり得ます。こんなとき、飼い主さんの声に応えてすぐに立ち止まり戻ってくる犬でないと、迷子になったりクルマにはねられたり、生命に関わるトラブルに発展しかねません」
そういえば、わが家のサモエドは猫を発見すると突進する癖があります。あるとき、あまりの突進力に革製のリードが切れてしまい、逃げる猫を追いかけて姿が見えなくなってしまいました。事故を起こすのではないかと本当にヒヤヒヤしましたが、大声で呼ぶうちに戻って来てくれたのでひと安心。でも、ダーッと駆け出したまま戻れなくなってしまう場合も珍しくないようです。
まずは家の中で練習開始。
では、呼んだら来てくれる犬になってもらうには、どうすればいいのでしょうか。
「呼び戻しは、しつけの中では比較的教えやすい部類に入るかと思われます。ただし、飼い主さん側が、『呼び寄せるとはどういうことか』という基本を理解していないと、トレーニングの効果が上がらないこともありますね」
「たとえば、何かにつけて口癖のように、『おいで~』と言ってしまう飼い主さんは、呼び戻しのしつけがヘタな飼い主さんです。なぜなら、『オイデ』や『コイ』など呼び戻すためのコマンドは、飼い主さんと犬との約束のようなものだからです。飼い主さんは親でもあり先生でもあるのですから、自らの行動や言葉をしっかり定義づけないと、犬は飼い主さんの意思が読み取れずにまごついてしまいます」
定義づけとは、具体的にどういうことでしょうか?
「『おいで』という言葉をきっかけに、『来る』という行動を起こし、その結果『いいこと』がある。つまり、刺激、反応、結果のパターンを学習してもらう。これが、呼び戻しに限らず、多くのトレーニングを効果的に覚えてもらうためのコツです」
つまり、呼ばれたら、飼い主さんのもとに走って行けば、おやつをもらえる。だから呼ばれたらすぐ走って行きたくなる。こういうことですね。もちろん、「いいこと」はおやつに限りません。飼い主さんのところに行ったら褒めてもらえる、遊んでもらえる、おもちゃがもらえるなど、犬にとってメリットがある行動ならばいいわけです。
「家の中からトレーニングを始めましょう。最初は、大好きなおやつを見せて、『オイデ』と声をかけます。寄ってきたら、その瞬間に褒めておやつを与えましょう。慣れてきたら、おやつを入れたタッパーを家のあちこちに用意します。家の中のどこにいても、呼ばれたら飼い主さんのもとに行けばおやつがもらえると理解してもらうのです。これもできるようになったら、おもちゃで遊んでいるなど、ほかのことをしているときに呼び寄せて、声をかけられたら何かを中断してでも飼い主さんのもとに行くことを習慣づけます」
たしかに、こうしておけば、何かに夢中になってトラブルを起こす前に呼び戻せそうですね。
「家の中で呼び戻しが成功するようになったら、お散歩中の呼び戻し、安全な場所で伸びるリードを使っての呼び戻し、ドッグランで自由に遊ばせているときの呼び戻しというように、少しずつ難易度を上げていきます。最初からすべてができる子はいません。段階を追って少しずつ高度に、はあらゆるしつけに共通するコツです」
また、こうしたステップアップのためのトレーニングも、飼い主さんの理解の深さが上達度を左右するようです。
「おやつを使う場合、『おやつだよ~』と声をかけるのは好ましくないですね。オイデでは来ない、おやつだよ~で来る犬になってしまいますから。また、ごほうびは、寄って来たらすぐに与えましょう。呼び戻して何もしないでいると、呼んだら来るけれども、そのまま飼い主さんの脇をスーッと通り過ぎてしまう犬になってしまうこともあります」
自分のコマンドを犬はどう理解するのか、コマンドを受けて行動することで犬にどのようなメリットがあるのか、コマンドと行動を明確に関連づけるにはどうすればいいのかなど、犬目線でいろいろ考えてみることが、しつけ力向上のコツと言えそうですね。
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