たくましく生きる猫

太鼓判ブリーダーが猫たちとの暮らしをご紹介。ほのぼのした日常やブリーダーならではの話など、いろいろな日常をお届けします。今回はメインクーンのブリーダーCattery Amangroup/阪根美果さんです。

以前、私は釣り堀でアルバイトをしていたことがあります。その釣り堀にはヘラ鮒を釣る池が1つ、鯉を釣る池が1つ、金魚を釣る池がいくつかありました。ある日、仕事をしていると、釣り堀の垣根から白黒の猫が様子をうかがっているのが見えました。よく見るとお腹が大きく、雌猫であることがわかりました。なぜヘラ鮒の池の様子をうかがっているのか、その後、すぐに理由がわかりました。

ヘラ鮒を釣りに来るお客さんは釣り堀の常連客で、毎日9:00~16:00まで10~15人くらい訪れます。お昼になるとお弁当を食べたり、釣り堀で出前を取ったりしています。その際におこぼれをいただいているのです。雌猫は常連客の近くに寄るものの、ある一定の距離を保っています。そのあたりはやはり野良猫で、警戒心は忘れません。お腹が大きいせいか勢いよく食べています。そのほかにも、この釣り堀には数匹の野良猫がいついており、その時間になると様子をうかがいに来ておこぼれをもらっているのでした。

それからしばらく経ったある日、雌猫は5匹の子猫を連れて釣り堀にやってきました。これがまたみんな白黒で、ということはお父さんもこれに近い毛色なのだろうなと想像ができます。どこかで産んで、育てて、そして子猫たちに生きるすべを教えるために釣り堀にやってきたのです。当然、5匹も子猫がいるのですから、常連客のおこぼれだけでは生きていけません。ではどうしているかというと……。

ある日、偶然にも目撃しました。ヘラ鮒や鯉はときどき水面上にジャンプをするのですが、その着地点を間違えると陸上に落下してしまいます。その場合は、私たちが気付いて水中に戻すのです。しかし、その日は気付くのが遅く、雌猫が猛ダッシュで魚を捕獲。まさに「お魚くわえたドラ猫~♪」状態で草むらに消えていきました。その姿を子猫たちはじっと見つめています。母猫から生きるすべを教えてもらっているのです。まずは魚を食べるところから学んでいるようでした。

それからしばらくして、子猫が小さな鯉を口にくわえて草むらに消えていきました。雌猫はそれを見守っています。小さい鯉だから、子猫に練習をさせたのかもしれません。野良猫は本当にたくましい。

そう感心している私の横で店長は「また鯉を獲られたよ~」と嘆いていました(笑)。