VMAT(ブイマット)とその活動を知っていますか?
Disaster Medical Assistance Teamの頭文字をとって、DMAT「ディーマット」と呼ばれる災害派遣医療チームについて、またその活動については、ニュースを通してみなさんは十分にご存じだと思います。
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、死者と行方不明者6425名という多くの尊い命が奪われました。もちろん、多数の動物も犠牲になりました。この大災害では、災害発生初期の救急医療の必要性が指摘され、通常時の救急医療が提供されていたら、災害死500名は避けられたとも言われています。
この教訓から、災害時の救急医療の提供体制を整備するため、消防、警察、自衛隊、行政機関と連携しながら、災害発生直後に活動できるトレーニングを積んだ医療チームであるDMATが発足しました。
大規模災害の発生初期、おおむね48時間以内に、専門的訓練を受けた医師と看護師、業務調整員で構成された医療チームが、災害現場に派遣され、活躍しています。DMATは、国の防災基本計画にも定められ、2011年3月11日に発生した東日本大震災や2016年4月14日と16日に発生した熊本地震の際にも大いに活躍したことは、みなさんの記憶にあると思います。
一方で、阪神・淡路大震災、有珠山や三宅島の噴火災害、新潟中越地震、東日本大震災では、さまざまな動物たちも被災しました。全国緊急災害時動物救援本部(現:ペット災害対策推進教会)の支援により、地元獣医師会や日本獣医師会、また都道府県や政令都市の55獣医師会が協力し、被災動物の救護、保護、診療をはじめ、避難所や仮設住宅で暮らす飼い主の飼育相談に応じ、救援活動を行ってきました。しかし、災害発生直後に、迅速かつ組織的な初期段階での緊急動物救済活動は十分でなかったと言わざるをえません。
そこで、福岡県獣医師会の舩津敏弘先生方が中心となって、2013年に全国で初めて災害発生時に活動する災害派遣獣医療チームであるVMAT「ブイマット」(Veterinarian Medical Assistance Team)が発足しました。動物の救急・救護処置に関する講習を受講した獣医師や動物看護師、訓練士等から構成された獣医療チームが、災害発生時に人命救助を妨げないで、初期の被災動物の救出・保護活動を目指しています。同様な組織は群馬県獣医師会でも誕生し、活動が期待されます。
なお、こちらの記事でお伝えしましたが、福岡県獣医師会の災害派遣獣医療チームのVMATは、熊本地震の際、被災動物の救護や獣医療の提供を行い、その成果が高く評価されています。
今後、都市直下型地震、東海地震、東南海・南海地震等のほか、台風、局地的豪雨、河川氾濫、地盤崩壊等の自然災害が起きないことを願っていますが、万が一に備えて、平時と同様な救急・救命獣医療が提供でき、災害現場で機動性と専門性を備えたVMATの活動が期待されます。今後は関係機関の協力により、全国的にVMATが設置されることが望まれます。
一方で、家庭飼育動物だけでなく、動物愛護管理法で人に危害を与える恐れがある危険な動物として指定されているトラ、ニホンザル、タカ、ワニ等の「特定動物」、また野生動物、さらに東日本大震災の際に放置されたり放浪していて問題になった所有者のある「家畜」について、その飼養目的に沿った災害発生時の取り扱いも、行政機関と連携を図りながら取り組まなければなりません。
緊急災害時におけるVMATによる被災動物の救急・救護活動に対し、みなさんのご理解とご支援をお願いします。
コメントを送信