【猫飼いTIPS】イギリスで黒猫が“インスタ映え”しないという理由で捨てられる件

先日、テレビのバラエティ番組にペトハピのスタッフが出演して英国の黒猫の話題についてコメントしました。ご覧になった方もいらっしゃると思います。しかし、尺の関係でしょうか、編集されて“インスタ映え”の部分だけしか採りあげられませんでした。まあ、キャッチーなネタではあるので、そこにフォーカスされてしまったのかもしれませんね。ただ、番組では実際に英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)にも確認し、イギリスの現状から動物愛護の大切さを周知させたいという目的は達成できたのではないかと思います。場をあらためてここで全体を説明したいと思います。

イギリスで保護された猫の7割が黒猫という事実

まず事の真相について。動物愛護先進国といわれるイギリスの英国王立動物虐待防止協会が2014年にリリースしたように、彼らの保護している約1000頭の猫のうち約70%が黒猫であるという実態は事実です。そして、カラーの偏見、今日の“インスタ映え”によって、黒猫の里親を見つけるのが困難になっているのです。もともと、イギリスでは黒猫は幸運のシンボルと言われていたため、大切に飼育されていたはずです。そのために黒猫が多い土地柄であることも要因でしょう。これらのことから、黒猫の保護件数が増え続け、イギリスでも深刻な問題になっています。

そのうえで、同協会は「捨てられる黒猫の数が増加している原因は、黒猫の写真映えが悪いから」と言っています。

<参照>「Hundreds of black cats are being abandoned by their owners because they don’t look good in SELFIES」
Daily Mail Online(英文)

さらに、同協会のジェーン タイソン博士は「黒猫が幸福や不運をもたらすことはないが、他のカラーと差別されることなく、永遠の家が必要だ」と言っています。そして、イングランド北西部のデヴォン州にある動物保護施設Gables Farmのクレアス パークス氏は、「Instagramの文化が問題を悪化させている」と言い切っています。

<参照>「Black cats shunned at rescue shelter because they don’t look good in selfies」
The Telegraph(英文)

猫のカラーは遺伝のしくみで決まる

このように、同協会は黒猫の保護数が多いのは複数の理由があるとしていますが、一番の理由は黒猫の毛色の遺伝のしくみにあると言えます。黒猫が生まれるためには、その両親猫がともにソリッド因子(縞のない指令を出す遺伝子)と非ダイリュート因子(濃いカラーになる指令を出す遺伝子)を持っていなければいけません。

黒猫のカラーの遺伝子は「ww o aa ii D」で、「ww」はノンホワイト(有色)であること、「o」はオレンジ(レッド)でないこと、「aa」はソリッド(単色)であること、「ii」はシルバーでないこと、「D」は淡い色でないことを表します。そのため黒猫同士の繁殖で生まれた子はすべて黒猫になるのです。避妊・去勢をしていない黒猫が多い地域では、ネズミ算的に黒猫が増えていくことになります。ですから、年々増えていくのは当然のことと言えます。

※写真はイメージです

“インスタ映え”しないので捨ててしまう飼い主

また、同協会は「黒猫は見分けがつきにくいから捨てられる」とも言っていますが、違和感を感じます。飼い主であれば見分けがつくと思います。黒猫でも顔がみんな違いますし、性格やしぐさも違います。飼い主は愛するペットのことは本当によく観察しているものです。必ず自分の猫を見分けるでしょう。

ただ、黒猫が“インスタ映え”しないからと捨てる飼い主がいることは確かだと思います。ペットを愛しているわけではなく、アクセサリー感覚でペットを飼う飼い主が近年増えているからです。黒猫は暗い毛色であるとともに、縞のある猫たちと違い目の周りにアイラインがないため目も小さく見えがちです。どちらかというと寂しい表情と感じてしまうのです。人間もアイラインを引いているかいないかで、目の華やかさが違うのと同じです。

しかも、黒系の目の色をしていたらなおさら画像には反映されにくいのです。そのため、自分の思い描いていた画像が撮れず、人気が出ないときにはアクセサリー感覚で捨ててしまうのでしょう。捨てられれば黒猫が増えるし、そこで繁殖をしてしまえばさらに増えることになるのです。「今年は黒猫の保護数が多い」という理由のひとつだと考えます。

また、黒猫の里親になる人が少ないということですが、上記のインスタ映えしないという理由のほかに、この地域はもともと黒猫が多いため、ほかの毛色のほうが新鮮にも映るのでしょう。黒猫より少ないことで希少価値を感じ、ほかの毛色を求めているのだと思います。

黒猫をうまく撮影できたとき、その美しい凛とした姿に圧倒されます。黒猫が気に入らないと捨てる前に、撮影の腕を磨くべきではないでしょうか。責められるべきは飼い主自身です。