クレートトレーニングのメリットは?

今回から、しつけについてのピンポイント情報を中心に、藤田先生のアドバイスをうかがっていきます。まずは「クレートトレーニング」です。クレートは犬が寝る場所、お出かけの際に犬を入れておく箱、としか認識していない飼い主さんもいるかもしれません。しかし、じつは犬の成長にとって大切な意味を持つのだそうです。

監修/訓練士 藤田真志
麻布大学獣医学部卒/動物人間関係学専攻 (社)ジャパンケネルクラブ公認家庭犬訓練士 (社)ジャパンケネルクラブ愛犬飼育管理士 2004年に「HAPPY WAN」を開業

そもそも、なぜクレートが必要なの?

多くの飼い主さんは、ご自宅にクレートを用意されていることと思います。ただ、そのクレートを有効に活用できていますか? 年に数回のお出かけの際にしか使わないという人もいらっしゃるのではないでしょうか。

「クレートトレーニングをしておけば、犬との暮らしのさまざまな場面で活用できますし、ほかのしつけも行いやすくなります。まず、犬にとって快適な寝床づくり。犬の祖先はもともと洞窟の中で寝ていた動物で、体の周囲が囲まれた環境で休むことを好みます。クレート内は落ち着ける空間なのです」

好きな場所で自由に寝かせておくのがベスト、とは必ずしも言えないようです。クレートは、犬にとっては落ち着ける自分の部屋。お出かけの際には、その部屋ごと移動できるというメリットもあります。

「たとえば、クルマなどで移動する際にクレートがあれば、車内を歩き回ることで起こりがちなケガも防げますし、万が一の災害時でも同行避難させやすくなります。また、骨折など大きなケガや病気にかかってしまったときは、クレートで安静にしてもらうことが治療にも役立ちます」

しつけ面でのメリットはいかがでしょうか?

「室内飼い、とくにトイ・プードルなど人と密接な関係を好む犬種と暮らしていく際に、いい意味で人との距離感をとってもらいやすくなります。自立心を養うことで、お留守番が上手にできる犬になってもらうわけですね。また、トイレトレーニングの際にも役立ちます。犬はもともと、寝床内で排泄をしたがらない動物ですから、トイレとそうでない場所の区別が付けやすくなりますし、してはいけない場所ではガマンして、トイレで出すという習慣も身につきます」

クレートに入りたがらない犬は、どうしつけるの?

メリットが多いクレートですが、なかにはクレートに入りたがらない犬もいます。クレートに入ってもらうためにはどうすればいいのでしょうか?

「無理矢理に閉じ込めるようなしつけだと、犬はクレートを嫌な場所だと認識してしまいます。クレートの中にいるとくつろげる、何かいいことがある、と考えてもらえるようなしつけが大切です。まず、散歩や遊びなどで犬の運動欲求をしっかり満たします。適度に疲れて眠くなったらクレートで休む、この習慣を身に付けてもらいましょう。なかなか入ってくれない場合は、クレート内にドライフードをひと粒ずつ投げ込むと、喜んで入ってくれます。1食分のフードを、TVを見ながらひと粒ずつ放り込み、犬がずっとクレート内にいる状況をつくり出すのもいいでしょう」

扉を閉めると嫌がる犬の場合は、どうしたらいいのでしょうか?

「ビジーバディなど、熱中できるチューイングトイをクレート内で与えましょう。クレート内に30分いることができるか、が最初の目標です。おやつは、ここぞという場面で有効に使いたいので、クレート内でしかおやつを与えないようにすると、しつけの効果が高まります」

どんなクレートを選んだらいいの?

クレートは、材質や構造、サイズなどさまざまな種類があります。どんなクレートを選ぶのがベストなのでしょうか?

「寝床としての快適性を重視するなら、犬が体を伸ばして寝られるサイズを選びましょう。お出かけ用に使うなら、クレート内で体をサポートしやすい、ややタイトなサイズがいいでしょう。理想は、何種類かのクレートの使い分けです。ハードクレートかソフトクレートかは好みで選んでいいと思います。ただソフトクレートは、お留守番中にファスナーなどをかじられると使えなくなってしまうので、ハードクレートのほうが安心かもしれません」

使いやすいオススメのクレートはありますか?

「クレート選びのご相談をいただいた際には、アイリスオーヤマの『エアトラベルキャリー』をオススメしています。価格のわりにつくりがよく、小型犬用以上のサイズでは、扉が左右どちら側にも開けられます。開け閉めする際にギシギシときしんだりしませんし、通気性がしっかり確保されているので快適に眠れるはずです。多くの犬にとって、寝場所は涼しいほうがいいのです。寒そうだからと保温性の高いマットなどを入れてしまうと、犬にとっては不快な環境になってしまいかねません」

IATA国際航空運送協会の基準をクリアした、手ごろな価格ながら、つくりがしっかりしたキャリー。扉が全部外せるため、室内ではハウスとして使用できます。サイズも超小型犬用~中大型犬用まで4種類を用意。別売のキャスター・ストラップセットと組み合わせればさらに便利になります(小型犬サイズ以上)

ベッドなどの選択でもそうですが、人間と犬とでは寝心地のいい環境は異なります。空気がよどむ場所や、エアコンやストーブの熱い風が吹き付ける場所などは、当たり前ですが寝床に向いていません。

「お出かけ用にソフトタイプのクレートを選ぶなら、ファーストラックスの『ソフ-クレート n2』がオススメです。素材が丈夫で各部のつくりがしっかりしており、床が防水構造なのでアウトドアでも快適に使えます」

開放的な3面ドア仕様と大型メッシュで通気性が高く、底面防水加工で地面の湿気を防げる、アウトドアにも適したモデル。本体カバーは丈夫なナイロン製で、汚れが拭き取りやすいよう内面撥水加工されています。フレームは強度のある金属フレームで、SHシステムという組み立てやすい構造を採用。ガタつかず長期にわたって使えます

じつは、わが家のお出かけ用クレートも、このソフ-クレートn2です。もうだいぶ長く使っていますが、型崩れや破損はありませんし、簡単に折り畳めるのも便利です。クルマで移動する際に、加減速で滑ってしまうこともなく、安心して使えるので気に入っています。

次回は、「拾い食いを止めさせるコツ」について話を伺っていきます。