欧州で注目される「おやつ」と「キャットフード」の収益性。日本のペットフード市場にも共通点が?

欧州のペットフード市場において、「おやつ」と「キャットフード」が特に高い利益率を誇るという調査結果が発表されました。私たち日本の飼い主にとっても、ペットの食事選びや今後の市場動向を考えるうえで非常に興味深いトレンドです。とはいえ、日本市場にも当てはまるのでしょうか?

欧州ペットフード工業会連合(FEDIAF)が2025年に発表したレポートによれば、欧州のペットフード市場は総額293億ユーロに達し、前年比で9%という堅実な成長を遂げています。全世帯の約半数(49%)がペットを飼育しており、猫の飼育数は1億800万頭、犬は9,000万頭と、猫が犬を上回っています。

このような市場規模で、特に高い利益率を生み出しているのが「おやつ」と「キャットフード」のカテゴリーです。ここでの「利益率」とは、売上高に対して製造コストを差し引いた粗利益の割合を指します。つまり、製品ひとつあたりの儲けが大きいカテゴリーということです。

欧州全体の市場価値をカテゴリー別に見ると、ドッグフードが47%、キャットフードが39%を占めています。残る14%は主に小動物用やおやつなどに分類されますが、注目すべきは「おやつ」の占める割合の大きさです。

たとえば、欧州のドッグフード市場において「おやつ」は、ドッグフード全体の市場価値の24%を占めており、主食と比較して少量でも高価格で販売されやすい傾向があります。嗜好性や機能性に特化した製品が多く、製造コストに対して販売価格が高く設定されているためです。このような構造により、メーカーは高い粗利益率を確保しやすくなっています。

キャットフードにおいても、収益性の高い構造がはっきりと見られます。特にウェットフードは、ドライフードよりも1食あたりの単価が高く、猫の嗜好や特定の健康ニーズに合わせた製品展開が進んでいます。その結果、ウェットフードはキャットフード市場全体の60%という大きな価値を占めており、いかに市場の収益性に貢献しているかがわかります。

さらに、キャットフードに含まれる「おやつ」も注目に値します。キャットフード全体の価値のうち約10%を占めるとされ、こちらも単価が高く、香りや食感といった猫の好みに応じた製品が多く展開されています。

欧州市場では「多く売る」よりも「高付加価値な製品を効率よく売る」ことで、利益率の最適化を図る傾向が明確になっています。ペットフード市場が成熟し、消費者の関心が“量”から“質”へとシフトしていることを象徴しているといえるでしょう。企業にとっても、価格競争に陥ることなく収益を確保できる、持続可能な戦略として位置づけられています。

日本の市場も、欧州と同様に「キャットフード」と「おやつ」が重要な位置を占めつつあります。ペットフード協会の調査によると、日本の猫の推定飼育数は約915万頭、犬は約679万頭で、猫が犬を上回る状況が続いています。すでに2017年にはキャットフードの市場構成比がドッグフードを逆転しており、この猫優位の傾向は今も継続中です。キャットフード市場には安定した需要基盤が生まれ、メーカー各社が新製品開発や売場拡大に積極的に取り組んでいます。

さらに、日本でも「ペットの家族化」と「健康志向」が市場の成長を後押ししています。ペットを家族の一員と考える飼い主が増えたことで、高品質・高栄養な製品へのニーズが高まり、プレミアムフードの需要が拡大しています。

犬の飼育頭数は減少傾向にあるものの、高価格帯のドッグフード需要が単価の上昇を支えており、市場全体の金額ベースは横ばいを維持しています。一方で、猫の飼育頭数は横ばいから微増傾向で、キャットフード市場の安定成長を支えています。

猫がかかりやすい腎臓病や下部尿路疾患などに配慮した「機能性フード」も一般化しており、これがさらなる高付加価値化を促しています。

おやつ市場も犬猫問わず堅調に拡大しています。かつてはコミュニケーションツールとしての位置づけが中心でしたが、近年では「健康志向」「機能性」「安全性」などをうたった高付加価値製品が多く投入され、市場が多様化しています。

とくに猫用おやつでは、ペーストタイプの製品が増加傾向にあり、香りや食感が猫に好まれることもあって、収益性の高いカテゴリーとなっています。

欧州と日本のペットフード市場を比較すると、いくつかの共通点が見えてきます。いずれも「ペットの人間化」と「健康志向」に支えられた市場構造であり、プレミアム化への移行が進んでいます。また、おやつ関連の製品は、飼い主の関心が高まりやすく、ブランド側も差別化しやすいため、高い利益率を実現しやすい分野といえるでしょう。

欧州で見られる「おやつ」と「キャットフード」の高収益性というトレンドは、日本市場にも十分に当てはまる傾向です。猫の飼育数の増加と安定、プレミアムフードへの関心の高まり、そして高機能おやつの多様化は、その証といえるでしょう。

ペットの健康と幸福のためには、主食だけでなく、おやつや機能性フードといった“質”にも目を向けることが大切です。市場のプレミアム化は、飼い主にとっても選択肢の拡大というメリットがあります。

愛するペットのQOLを高めるために、市場の動向を見極めつつ、信頼できる製品を選ぶことが大切です。ただし、すべての飼い主が高価格帯の製品を選べるわけではありません。物価高や生活コストの上昇が続く今、無理のない範囲で最適な選択をすることが、ペットとの暮らしを長く幸せに続けていく鍵となるでしょう。