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「“痒み”空港」発「“快適”空港」行きのアトピー航空2022便、離陸せよ!

[2022/01/04 6:01 am | 獣医学博士 川野浩志]

新年あけましておめでとうございます。 今年は寅年。寅年を植物にたとえると、春になって根や茎が伸びて成長する時期で、いわゆる草木が伸び始める状態といわれています。

昨年は、まさに発芽したといってもいい一年でした。アトピー性皮膚炎の犬に糞便移植をしてみたら、痒みを抑える一定の効果があることを知ってから、アレルギー治療に対する考え方がコペルニクス的に変化したのです。そして、今年はさらに成長させる年だと考えています。

「お前は何がやりたいのか? 世界をどう変えたいのか?」と問われたら「犬と猫のアレルギー性皮膚疾患に対して、できるだけ薬に頼ることなく症状を緩和する治療を目指している」と答えます。糞便移植から教わった腸内細菌の大切さは、まさに自らが向かうべき方向を示す“北極星”となったのです。流行りものに流されずに、我流追及、一点突破でこの問題をただなんとかしたいというシンプルな想いは1ミリも揺るがない確信があります。

ガットマイクロバイオータ(腸内細菌)への介入は現代獣医医療の枠では想像もできない、まるで次元が違う世界のように展開していく日々。身体という70兆個の細胞の集まりと、それ以上の腸内細菌で構成される生命体の無限の可能性を目の前で見せてもらっています。

ただ、いま挑戦しているやり方だけでは打率は良くて3割で、すべての症例に対して満足した結果が得られているわけではありません。毎日どうしたら“打率”をあげられるか? という命題に対して自問自答しています。

ルービックキューブをクルクル回すと赤が揃ってくるけれど、一度揃った赤を一旦崩さないと全面揃えることができないように、既成概念をぶっ壊しながら進んでいかないと現状をなかなか打破できません。ベルリンの壁のように高く、マリアナ海溝のように深い謎に包まれている腸内細菌のルール。

痒がる動物たちをできるだけ薬を使わないで治療するためには、腸内細菌の力を借りないわけにはいきません。目の前に我々獣医師の助けを求めるペットと飼い主がいる限り、その悩みに全力で向き合い解決したいと思います。

たとえそれが獣医学的に解決することが難しい場合でも、本気で寄り添い献身的にサポートする気持ちは忘れたくない。小学生のころに憧れてなった獣医師。娘たちに「お父さん、かっこいい!」といわれるように、地図もコンパスもないけど、燃料タンクに“自分の思い”というジェット燃料を満タンにしてビジョン(北極星)に向かって2022年離陸します。今年もよろしくお願いします!

[獣医学博士 川野浩志]