科学雑誌「Frontiers in Nutrition」に掲載された論文によると、口腔から腸の表面にある粘膜細胞は、隣同士の細胞ががっつり”スクラム”を組んでバリアをつくり、ウイルスの体内への侵入を防御しています。しかし、ビタミンCやビタミンD、亜鉛が欠乏すると粘膜細胞のスクラムが崩れてウイルスの侵入を許してしまうことが確認されました。つまり、ビタミンC・D、亜鉛は、口から腸までの粘膜細胞の”スクラム”にとって大事な役割を果たしているのです。
また、ビタミンDがアトピー性皮膚炎や花粉症、アレルギー性鼻炎などの治療に有効かもしれないと注目されていて、アトピー性皮膚炎と診断された人と健康な皮膚の人の血中ビタミンDの濃度を計測したところ、アトピー性皮膚炎の人が、明らかに血中ビタミンD濃度が低かったというデータもあります。
さらに、ビタミンDはカルシウムやリンの吸収を促進し、骨を丈夫にすることだけではなく、細菌やウイルスに対する免疫を高めたり、炎症を引き起こす警報(炎症性サイトカイン)を抑えてアレルギーの症状を和らげ、免疫を整える作用もあるという報告もされています。
どうやらビタミンDは、かなり大切なミネラルであることはなんとなく理解されたと思います。ならば、ビタミンDをガッツリ飲めばいいか? となると、そうでもなさそうです。
ドイツの有機化学者リービッヒが提唱した「リービッヒの最小養分の法則」という植物の成長のしくみを説明した理論があります。この理論をわかりやすく噛み砕いて説明すると、「生物の成長は、1番足りない栄養分に左右されるから、1番足りない栄養分を足さない限りどんなにほかの栄養分を足してもダメ(生物の成長はその生物が利用できる必須栄養素のうち最少のものに依存)」ということです。
この理論を、ドイツのドベネックという研究者が直感的にわかりやすく説明するために書いたのが、「ドベネックの桶」というイラスト。植物の成長を桶のなかに張られる水に見立て、桶をつくっている板を成長に必要な要素や養分と仮定します。たくさん摂れている養分の板は高くなりますが、不足している養分の板は低いままで、結局、そこから水が漏れていってしまう。つまり、植物の成長にはもっとも少ない要素が関係するということ。従って、ひとつの養分をガッツリ補給するのではなく、バランスよくすべての要素を補給することが大事だという教えです。
落合博満、清原和博、タフィー・ローズといった他球団の4番打者を並べた史上最強の巨人打線ですらペナントレースで優勝できなかったのも、打線のバランスが悪くてチームが機能不全になったから。ヒトも動物も三大栄養素であるタンパク質・脂質・炭水化物のほか、ビタミン、ミネラルという必要な栄養素をバランスよく摂取したいですね。