犬との暮らしで知っておきたいこと Vol.189

受動喫煙が犬の健康に与える影響とは?愛犬を守るためのガイド

[2024/09/03 6:01 am | 編集部]

厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると、喫煙する人の割合は16.7%(男性 27.1%、女性 7.6%)でした。10年間で減少傾向が見られます。

タバコが人間の健康に悪影響を与えることは広く知られていますが、喫煙者の周囲にいる人々がタバコの煙を吸い込む「受動喫煙」は、喫煙しない人々だけでなく、犬にも深刻な健康被害を及ぼすことがわかっています。

今回は、受動喫煙が犬に与える影響とその予防策についてのお話です。

喫煙が犬に与える総合的な健康リスク

犬が直接タバコを吸うことはありませんが、受動喫煙や三次喫煙を通じて深刻な健康リスクにさらされる可能性があります。

受動喫煙とは、喫煙者が吐き出す煙(呼出煙)やタバコから直接放出される煙(副流煙)を吸い込むことを指します。さらに、三次喫煙は、家具や衣類などに残留した有害物質が、体内に取り込まれることを意味します。

直接喫煙

直接喫煙とは、喫煙者が直接吸い込む煙(主流煙)を指します。タバコ、葉巻、パイプを吸うと、その煙が肺に吸い込まれ、高濃度の有毒化学物質にさらされます。

この直接的な曝露が、喫煙に関連する多くの病気や健康問題の主な原因です。

受動喫煙

受動喫煙とは、呼出煙や副流煙を非喫煙者や犬が吸い込むことを指します。副流煙には呼出煙よりも多くの有害物質が含まれており、深刻な健康リスクをもたらします。

受動喫煙は特に閉鎖された空間で発生しやすく、周囲にいるすべての人や犬がその影響を受けることになります。

タバコの煙は空気よりも重いため、床に近い場所に滞留しやすく、床に近い位置で生活する犬は、有害物質に長時間さらされることになります。

さらに、犬は人間よりも体が小さいため、吸い込んだ有害物質が体に与える影響がより大きくなります。

三次喫煙

三次喫煙は、タバコの煙が消えたあとに残る有害物質にさらされることを指します。タバコの煙は家具やカーペット、壁、衣服などに付着し、長時間残留します。

この残留物には発がん性物質や毒性物質が含まれており、時間が経つにつれて空気中に再放出されることがあります。そのため、長期間にわたって有害物質にさらされるリスクが生じます。

三次喫煙は、犬にとっては非常に危険です。彼らは家のなかを自由に歩き回り、床や家具に直接触れることが多いため、これらの表面に付着した有害物質を舐めたり、皮膚から吸収したりするリスクがあります。

受動喫煙が犬に与える影響

犬は人間よりも小さく、さらに有害物質が滞留する床の近くにいる時間が長いので、空気中の有害物質を吸収する割合が高くなります。そのため、受動喫煙が犬に与える影響は深刻です。

主な影響として、以下のような健康リスクが挙げられます。

呼吸器疾患

受動喫煙によって犬が最も影響を受けやすいのは、呼吸器系です。タバコの煙に含まれる有害物質は、犬の気道や肺に炎症を引き起こし、喘息や慢性気管支炎を発症させるリスクを高めます。

また、長期間にわたって受動喫煙にさらされることで、肺機能が低下し、呼吸困難を引き起こすことがあります。犬は人間に比べて肺が小さく、呼吸器系が繊細であるため、これらの影響がより深刻になりやすいです。

がん

受動喫煙は、犬のがんリスクを著しく高めることが知られています。副流煙には多くの発がん性物質が含まれており、犬が長期間これらの物質にさらされると、健康に深刻な影響を与える可能性があります。

短頭種は、煙の影響で肺がんのリスクが増加することがあります。一方、長頭種は、煙の粒子が鼻腔に侵入しやすく、鼻腔内腫瘍のリスクが高まります。

さらに、別の研究では、副流煙にさらされた犬の膀胱腫瘍の発生率が6倍に増加することが示されています。

心血管疾患

受動喫煙は、犬の心血管系にも悪影響を与えます。有害物質が血管に入り込むことで、血液の流れが悪くなり、高血圧や動脈硬化のリスクが高まります。

これにより、心臓に負担がかかり、心筋梗塞や心不全などの重篤な心血管疾患を引き起こす可能性があります。犬の心臓は人間よりも小さく、これらの影響が命に関わる場合もあります。

そのほかにも、受動喫煙は犬の健康に対してさまざまな悪影響を与えます。例えば、皮膚炎やアレルギー反応が現れることがあり、これにより犬が頻繁にかゆみを感じたり、皮膚に炎症を起こすことがあります。

また、タバコの煙に含まれる有害物質は、犬の免疫システムを弱体化させ、感染症に対する抵抗力が低下することもあります。さらに、食欲不振や体重減少など、全体的な健康状態が悪化するリスクもあります。

犬への影響を防ぐ方法

ペットに対する受動喫煙のリスクをなくす最善の方法は、飼い主および家族が禁煙することです。しかし、どうしても禁煙できない場合は、副流煙からペットを守るための効果的な対策を講じる必要があります。

【禁煙エリアをつくる】
特にリビングルームや寝室など、犬が長い時間を過ごす場所は禁煙にしましょう。

【喫煙は屋外で】
屋外で喫煙することを心がけましょう。また、喫煙後は衣服を着替え、手や顔を洗うことで、犬が有害物質に触れるのを防ぐことができます。

【換気と清掃】
窓を開けて家の換気をよくしてください。そのうえで空気清浄機を使用して室内の空気中の有害物質を除去します。
また、床の残留物を取り除くためこまめに掃除します。さらに、犬の寝具やおもちゃなどもこまめに洗いましょう。


まとめ

受動喫煙はペットにとって深刻な健康リスクをもたらす可能性がありますが、飼い主が適切な対策を講じることで、その影響を最小限に抑えることができます。

禁煙や屋外での喫煙、換気や空気清浄機の利用など、愛犬の健康を守るための行動を今すぐ始めましょう。

彼らは家族の一員であり、私たちが責任を持って健康な環境をつくってあげることが大切です。

[編集部]