犬との暮らしで知っておきたいこと Vol.164

【犬飼いTIPS】人のインフルは愛犬にうつる?~犬インフルエンザについて知っておくべきこと

[2024/02/19 6:01 am | 編集部]

今冬は暖冬予測でしたが、昨年末からインフルエンザが流行し、学級閉鎖になる小中学校が増えています。国立感染症研究所の「インフルエンザ流行レベルマップ」によると、28都道府県で感染者が増加し警報レベルを超えるケースも出ています。

自分がインフルエンザになってしまったときに、愛犬にうつしてしまうと心配になる飼い主さんも多いと思います。今回はインフルエンザについてのお話です。

犬にインフルエンザはうつる?

犬もインフルエンザにかかる可能性はありますが、人間がかかるインフルエンザとは異なります。また、人間のインフルエンザウイルスと犬のインフルエンザウイルスは異なります。つまり、人間から犬に感染することはありませんし、その逆もありません。

ただし、犬インフルエンザに罹った犬から拡散されたウイルスが衣服に付着することがあります。衣類が媒介となり、ほかの健康な犬に感染することもあるので注意が必要です。

犬インフルエンザとは

犬インフルエンザの原因となるウイルスには2種類あります。ひとつは、2004年にフロリダで初めて確認されたH3N8型ウイルスです。もうひとつは、2015年にシカゴで確認されたH3N2型ウイルスです。

主に呼吸器系に感染し、感染力は非常に強いのが特徴です。ただし、感染しても臨床症状を示すことなく、感染を抑えることができる場合もあります。

犬インフルエンザの感染経路

インフルエンザウイルスは空気感染するため、ほとんどの犬は、感染しているほかの犬の犬吠や咳、くしゃみに触れることで感染します。通常は2~4日で犬に感染の徴候が現れます。

H3N8型に感染した犬は10日間感染力を保持すると考えられていますが、H3N2型に感染した犬は最大26日間感染力が持続する可能性があります。25%程度は感染しても徴候が見られませんが、それでもウイルスを拡散させることはあります。

インフルエンザウイルスは、感染した犬が使用した食器やおもちゃ、毛布の上でもしばらく生き続けます。咳やくしゃみをしている犬は、ほかの犬から隔離する必要があります。

幼犬や老犬、免疫力が低下した犬は、健康な成犬よりも感染症にかかりやすい傾向にあります。ドッグランなど、ほかの犬と交流する可能性が高い場所では、ほかの犬の鼻や口腔と直接触れ合うことで原因菌を得てしまう可能性があります。さらに、ストレスが通常の生活パターン(食事、排泄、睡眠など)を変化させ、それによって免疫系に悪影響を及ぼし、感染症にかかりやすくなります。

犬インフルエンザの症状

一般的な症状には、咳やくしゃみ、食欲不振、発熱、嗜眠(しみん)などがあります。目の充血や目やに、鼻水が出る犬もいます。犬インフルエンザにはふたつの症状が見られます。

【軽度】
一般的にゴホゴホと痰を伴った湿った咳(湿性咳嗽)をし、鼻水が出ることもあります。場合によっては、コンコンと乾いた咳(空咳)が出ることもあります。

【重度】
通例として、高熱(40℃以上)を出し、肺炎、特に出血性肺炎を起こすことがあります。インフルエンザウイルスは肺の毛細血管を侵すため、喀血したり呼吸困難になったりします。また、細菌性肺炎に感染している場合もあり、状況はさらに複雑になります。


犬インフルエンザの診察

獣医師は、健康診断に加えて血液検査をすることがあります。犬インフルエンザにかかった犬は、通常、白血球(特に好中球)の数が増加しています。

内視鏡の一種である気管支鏡気管支を使い、細胞サンプルを採取することもあります。これらのサンプル解析することで、好中球の量や、細菌の有無を特定できます。

犬インフルエンザの治療

犬インフルエンザに対する確立された治療法はありませんが、症状に対応することはできます。軽度の場合、症状は10~30日続きますが自然に治ります。二次的な細菌感染がある場合は、咳止めや抗生物質が処方されます。まずは安静にし、ほかの犬から隔離することが重要です。

重症の場合は、各種抗生物質、点滴、その他の補助療法で積極的に治療する必要があります。犬の症状が安定するまでは、入院と隔離が必要となります。

犬インフルエンザの感染予防

アメリカでは、H3N8に対応したワクチンが実用化されていますが、現時点で日本では導入されていません。

幸い、まだ日本では発症が確認されていないため、最大の予防は犬インフルエンザを国内で発症させないことです。そして、万が一発症しても、感染を広げないことが大切です。

そのためには、免疫システムがインフルエンザウイルスや細菌を駆除できるようにするために、可能な限り健康的でストレスのない生活をさせることが重要です。

また、犬インフルエンザと似た症状がみられる犬パラインフルエンザは混合ワクチンの摂取で予防することができます。有効期限を確認し、確実に摂取するようにしましょう。

まとめ

犬と人間のインフルエンザは異なり、直接の感染はありませんが、犬同士の感染が広がる可能性があります。日本ではまだ発症の事例はありませんが、どのような経路で感染するのかはわかりません。まだワクチンも導入されていませんので、自己防衛するしかありません。

とにかく、寒く空気が乾燥するいまの時期は、私たちと同じように健康的でストレスのない生活をして免疫力を高めておくことが大切です。

[編集部]