【犬飼いTIPS】犬にヒゲがあるのはなぜですか? どんな役割があるの?
計測器であり、早期警戒信号でもある。触覚と視覚の両方の感覚を高める。私たちの顔をくすぐったり、心の状態を伝えたりする。そして、かわいい。
何のことでしょう?
答えはヒゲです。ラテン語で「振動する」という意味の「vibrio」を語源とするこの多機能な毛は、犬の生活をさまざまな面でサポートしています。今回は犬のヒゲについてのお話です。
ヒゲ哺乳類の進化を促進した
ヒゲは触覚と暗闇での感知に重要です。盲目の動物の多くは、物にぶつからないようにするためにヒゲを頼りにしています。犬はヒゲの近くに骨格筋があるので、自発的にヒゲの動きを制御することができます。
ヒゲの出現は、哺乳類の進化にとって極めて重要であったと考えられます。初期の哺乳類は、視覚、聴覚、嗅覚、触覚といった複数の感覚を統合することができ、恐竜などの捕食者が活動しない暗闇のなかで狩りや移動ができるようになりました。そして、それらが顔の筋肉の発達や脳の発達を促進したのです。
犬のヒゲの特徴
犬のヒゲは、私たちの髪の毛や手足の爪をつくる成分と同じケラチンというタンパク質でできています。ヒゲは皮膚に深く入り込んでいるため、ほかの毛のように簡単に抜けることはありません。実際、ヒゲが生える毛包は、ほかの毛の毛包の約3倍も皮膚の奥深くまで伸びているのです。通常の場合、ヒゲは成長期が終わると自然に抜け落ち、新しいヒゲに生え換わります。
ヒゲはマズルの両側から扇状に伸び、目の上でアーチ状になります。また、口ひげのように唇の上に生えることもあります。長い口ひげは大顎ヒゲと呼ばれ、頭の周りにあるものを感知するのに使われます。下向きに生えている小さなヒゲは「微小ヒゲ」と呼ばれ、物を識別するのに役立っています。あご(鼻)のヒゲは下顎に沿って生えていることから、下顎ヒゲと呼ばれています。
ヒゲの長さや本数はさまざまですが、一般的には犬の顔(頭)の幅とほぼ同じ長さまで伸びます。ヒゲはすべて、細長く湾曲した先細りの柔軟な毛で、振動触覚情報(触ることで振動を感じる)を伝達するものですが、その形状や顔への配置はすべて同じではありません。猫のヒゲが4列に整然と並んでいるのに比べ、犬のヒゲは顔に散らばって生えています。
ヒゲの色もさまざまです。ヒゲの色は犬の毛色と関係があると言われています。片側が黒、もう片側が白というように色が異なる場合や、顔の左右に色が混在している場合があります。白いヒゲは、その部分の色素が不足していることを示し、黒や茶色のヒゲは、顔の色素細胞が豊富な部分に見られるものです。また、年齢が上がると白くなるなど、ヒゲの色が変化することもあります。
犬のヒゲの役割
ヒゲ自体には神経はありませんが、感覚神経が豊富な特殊な毛包から生えています。毛根の根元にある神経の束が、周囲の環境に対応して絶妙に同調しているです。ヒゲが物に当たると振動し、毛包の神経を刺激します。その結果、神経インパルスは、顔の感覚を脳に伝える三叉神経を経由して脳に情報を伝達するのです。
動物によっては、ヒゲが物を見つけたり、動きを感知したりするのに役立っていることがわかっています。子犬の場合、ヒゲは最初に生える毛のひとつであり、犬の脳の触覚を処理する領域の40%がヒゲに関連していることがわかっています。
ヒゲはとても敏感なので、急に触ったりすると、犬が驚いたり目を閉じたりすることがあります。ヒゲの保護機能のひとつに、「何かが近づいている」という警告があるのです。ヒゲが感知する範囲は広く、非常に小さな動きでも反応することがあります。
犬はヒゲは計測器
ヒゲは、犬が暗闇で道を探したり、危険を回避したりするのにどのように役立っているのでしょうか。気流の変化でヒゲがくすぐられることで、障害物やほかの動物の存在を感知します。
また、ヒゲは物体に触れると振動し、その形状や質感を伝えます。さらに、丈の長い草や突起物に触れると、瞬目反射(まばたき)が起こり、目を突かれるのを防いでくれます。狩猟犬は、密集した藪の中から獲物を探さなければならないことが多いので、ヒゲがあると便利なのです。また、ヒゲは獲物が走ったときの振動を拾って、進むべき道を教えてくれます。
猫の行動と思われがちですが、ヒゲで入り口を通れるかどうかを判断している犬もいます。もちろん、犬の体に合わせてヒゲが伸びるわけではないので、ヒゲで入れるかどうかを判断していると、動けなくなる可能性はあります。
犬のヒゲはカットしてはいけない
ヒゲは犬の顔にある触覚器官の一部であるとされています。犬の生活をサポートする機能にとって非常に繊細で重要なものと考えられており、ドイツやスイスなどの動物保護法では、トリミングをすることは禁止されています。
犬の顔をキレイに見せるためにヒゲを切っていることもあります。しかし、シニア犬や視覚障害のある犬の場合は、ヒゲを残しておくのがベストです。ヒゲは、犬が自分の行く先を認識するためにとても重要な役割を持っているので、切ってしまうと、特に視力が低下している場合、物にぶつかってしまう可能性があります。
ヒゲの別の役割
ヒゲにはもうひとつ、コミュニケーションという重要な役割があります。ヒゲが、犬の気持ちを私たちに伝えてくれるのです。遊んでいる時にヒゲが前を向いているのは、おもちゃなどの対象物に興味を持っている証拠です。
ヒゲがピクピク動くのは、緊張や警戒している可能性があります。前方に広がったりするのは、ストレスや興奮を表しています。下を向いている場合は、犬が苦痛や脅威を感じていることを伝えていることが多いです。ヒゲがマズルにぴったりとついている場合は、リラックスしている証拠です。また、眠っている犬は、夢を見ているときにヒゲを動かすことがあります。
ヒゲの状態によって、年齢や健康状態がわかることもあります。年齢が重ねるにつれて、ひげが粗くなったり、もろくなったり、長さが短くなったりすることがあります。病気は、ヒゲの正常な質感や形、強さに影響を与えることもあります。皮膚炎でもっともよく見られるヒゲの変化は、切れやすくなることです。白癬菌もまた、毛包に炎症を起こし、ヒゲが自然に抜けたり折れたりします。
まとめ
犬にとってヒゲは生活する上で大切な器官のひとつなのです。私たちの髪と同じ成分だからといって、短くカットしたり、パーマをかけたり、カラーリングしてはいけません。
また、ヒゲが抜け落ちたり、もろくなったりしている場合は皮膚疾患の可能性があります。そんな状態のヒゲを見かけたら、動物病院で診察を受けましょう。
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