【猫飼いTIPS】猫の「ウイスカーパッド」の役割は?

みなさんは猫の「ウイスカーパッド(Whisker Pad)」をご存じですか? ウイスカーは英語で猫やネズミなどの頬ヒゲという意味があります。パッドは詰め物や枕などの意味があり、頬ヒゲが詰まっている部位のことです。わかりやすくいえば「猫のヒゲ袋」のことです。

猫の顔のヒゲが生えているぷっくりと膨らんだ部分で、笑っているようにも見えて愛猫家の間ではかわいいと親しまれています。しかし、かわいいだけでなく、ウイスカーパッドにはたくさんの役割があるのです。今回は、猫の「ウイスカーパッドの役割」についてのお話です。

猫のヒゲ袋にはどんな役割があるの?

ウイスカーパッドの役割は大切なヒゲを支えることにあります。では、なぜ猫にはヒゲが必要なのでしょうか? じつは、ヒゲは以下のように猫にとって大切な役割を果たしているのです。

・体の平衡感覚を保つ
・自分が通れる幅の場所であるかどうかを確認している
・敵や障害物などから自分の目を保護する
・暗闇でも安全に歩くことができる
・ヒゲの動きで感情の表現をしている


猫のヒゲはこのウイスカーパッドからだけでなく、いろいろな箇所に生えています。顎に生えている「頭下毛(とうかもう)」、鼻の横に生えている「上唇毛(じょうじんもう)」、頬骨辺りに生えている「頬骨毛(きょうこつもう)」、目の上に生えている「上毛(じょうもう)」、口の端に生えている「口角毛(こうかくもう)」で、猫のヒゲは全部で50~60本あります。それぞれの生えているヒゲの本数や役割は以下のとおりです。

【頭下毛】
猫の顎にあるいくつか飛び出している毛。姿勢を低くして歩く際に、地面からの障害物で傷付かないように察知する役割がある。
【上唇毛】
左右対称で24本生えている。このヒゲで障害物を察知したり、通れる幅であるかどうかを測っている。
【頬骨毛】
頬骨の上あたりに2本ほど生えている毛。猫によっては生えていないこともある。
【上毛】
猫の目の上に6本ほど生えている毛。危険を察知して目や頭が傷付かないようにしている。
【口角毛】
口の端に生えている毛。抜けやすいため生えていない個体もいる。

ウイスカーパッドから生えているヒゲは左右合わせて24本もあり、ヒゲ全体の約半分がそこにあります。その重要性がわかる本数です。

猫のヒゲを切ってはいけない理由

猫のヒゲは体の被毛と比べて2倍も太く、3倍も深いところから生えています。神経に近いところから生えているので、とても敏感なのです。ヒゲの根元には、外の変化を感知するセンサーの役割をもった感覚受容器がたくさんあります。ですから、無理やり引っ張る、切るなどは猫にとって嫌なことであり、絶対に避ける必要があります。

1本ずつのヒゲの根元に液体が入った袋があり、ヒゲはこの袋に浮いているというような構造です。また、ウイスカーパッドには数多くの神経が集中しているとともに、たくさんの血液が流れています。興奮時に赤くなるのはこの血液のためだと考えられています。また、このような興奮時に膨らんだ状態になるのは、ヒゲを前に倒すことで袋によってぷくっと前方に盛り上がるからです。

ウイスカーパッドは猫のセンサーなので、目の前に敵がいる場合には興奮状態になり膨らみをみせます。猫じゃらしなど遊んでいるときがそれを見る絶好のチャンスかもしれません。

ヒゲでわかる猫の気持ち

ウイスカーパッドが膨らむのはヒゲが前方に向いて盛り上がるからですが、そのほかにもヒゲの向きで猫がどんな気持ちでいるのかを知ることができます。

前方を向いている:興奮・警戒・緊張
目の前に敵がいる、獲物を狙っているなど興奮・警戒状態時にはヒゲが前方に向きます。また、緊張をしているときも同様です。

後方を向いている:驚き・恐怖・飲食
何かの音に驚いたとき、恐怖を感じたときには、猫は耳だけでなくヒゲも後方に向けます。また、猫によっては飲食時にもヒゲが汚れないように後方に向けることもあります。これはキレイ好きな猫の習性といわれています。

上方を向いている:嬉しい・甘えたい
猫は嬉しいとき、甘えたいときにはヒゲを上方に向けています。しっぽも立てているのは本当に機嫌がよいときです。

下方を向いている:リラックス・眠い
危険を感じることなくリラックス時には猫のヒゲは下方を向いています。また、眠いときも同様です。体と同じように脱力しているようです。

ウイスカーパッドは個体差がある

ウイスカーパットは形や柄などは個体差があります。同じ猫種や親子であっても、同胎の兄弟姉妹であってもそれぞれ違いがあります。同じような顔に見える猫同士でも、ウイスカーパットには違いがありますので、並べてみると見分けがつきます。

ちなみにキャットショーではウイスカーパッドの形やマズル(鼻先から奥歯までの口元全体のこと)の形などが審査対象になっています。猫種ごとにそのスタンダード(標準・基準)に沿った評価がなされます。

まとめ

猫のウイスカーパッドはとても大切な役目を担っています。猫にとってはセンサーなので、なくてはならないものです。ですから、むやみに猫のヒゲを引っ張ったり、切ったりするのは絶対にやめましょう。