【編集興記】ペットフードにも紅麹!? 飼い主が知るべき現実とリスク

[2024/04/04 6:01 am | ペットジャーナリスト 阪根美果]

ちょっと気になったペット関連のトピックスを、編集スタッフが持ち回りで紹介する“不定期”コーナーです。

小林製薬の紅麹原料を使用したサプリメントを摂取した人に健康被害が出ている問題で、ペットの飼い主たちにもSNSを中心に不安の声が上がっています。

いなばのペットフードの「CIAOちゅ~る」にも「紅麹色素」が表示されている商品があり、いなば食品に「与えても問題はないのか」と問い合わせが相次いでいるそうです。

そうした不安に答える形で、いなばペットフードは3月26日に「現状、弊社使用の紅麹色素につきましては、小林製薬株式会社が供給している関連原料と一切の関係はございません。」と公式サイトなどで明らかにしました。

しかし、ペットの健康を大切にする飼い主であれば「これで一安心」にはなりませんよね。筆者はキャットショーに行った際に、審査が終わったご褒美にと愛猫に「CIAOちゅ~る」を与えているので、気になっていろいろと調べてみました。

ここ最近、紅麹は健康食品の原材料としても注目されていました。それは、コレステロールを減らしたり、血圧を低下させたりする作用を持つ成分が含まれているためです。

小林製薬は独自の発酵法による菌の大量培養に成功したため、紅麹をサプリメントや食品の原材料として173社に供給していたそうです。

しかし、紅麹菌のなかには「シトリニン」というカビ毒を生成し、腎臓疾患を引き起こすものも存在するとか。欧州では紅麹に由来するサプリメントの摂取が原因なのではと思われる健康被害が複数報告されたため、欧州連合(EU)は食品に含まれるシトリニンの基準値を定めて規制しています。

スイスでは、紅麹を含む食品の販売は禁止されています。また、フランスでは紅麹を含む食品を摂取する前に、医師に相談するように注意喚起しています。

ただ、小林製薬の紅麹にはこのシトリニンをつくる遺伝子はないとされています。公式サイトには「小林製薬では、紅麹のゲノム解析を行い、シトリニンをつくる遺伝子を持たない紅麹菌を見出しました。シトリニンをつくることのできない紅麹菌を使用しているので、小林製薬の紅麹にはシトリニンが含まれません」と明記されています。

では、なぜ今回のような腎臓疾患を引き起こす健康被害が出てしまったのでしょうか。

小林製薬は、今回の健康被害の報告を受けて製品の成分分析を行った結果、シトリニンは検出されなかったそうです。しかし、「意図しない成分が含まれる可能性が判明した」としています。

小林製薬と共同で紅麹のゲノム解析を行った奈良先端科学技術大学院大学の金谷重彦教授(生物情報学)は、今回の件について「小林製薬のほかの微生物が混入した可能性があり、毒性物質が生合成された過程の解明が重要になる」と指摘しています。

現時点ではまだ何もわかっていない状態です。いなば食品を含め、風評被害を恐れた企業が「小林製薬の紅麹とは何の関係もありません」と次々に公表をしていますが、欧州の紅麹に対する対応を考えると避けられるものなら、摂取しないほうがよいように思います。

また、紅麹が食品原料として食品に使われているのか、紅麹から抽出した色素が食品添加物として使われているのかによっても認識は異なります。前者は、原材料表に「紅麹」と表示され、後者は「紅麹色素」「べ二コウジ色素」「着色料(紅麹)」などと表示されます。

それぞれは別物で、今回問題になっているのは紅麹そのものです。ですので、すべてが危険ということではないことを理解すべきです。実際に、各ペットフードメーカーも使用しているのは紅麹色素であることを公表しています。

「CIAOちゅ~る」にはさまざまな種類がありますが、紅麹を使用していないものも多数あります。また、同様のペースト状のおやつもたくさんの種類が販売されています。ですので、紅麹を使用していないものを選べばよいのです。

愛犬・愛猫を守れるのは飼い主しかいません。製品に書かれた原材料をよく見て、安全なものを選ぶことが大切です。

[ペットジャーナリスト 阪根美果]