激動の2020年、ペットとの暮らしを振り返る

[2020/12/31 6:00 am | 編集部]

今年は、まさに社会や生活を一変させた一年だったといえます。それは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がきっかけでした。読者のみなさんも、たくさんのご不便やご苦労があったと思います。

発端は前年に、中国武漢市で発生した原因不明の肺炎でした。これは、あとに「COVID-19と名付けられました。 その後、またたく間に世界中に拡散され、WHOが3月11日にパンデミックを宣言したときには、感染者数は10万人を超えていました。

当初は、犬や猫からの感染が疑われ、中国の一部の地域では犬や猫を捨てる飼い主や地域自治体が住民にペットを処分するように求め、犬が撲殺されるという悲しいニュースも伝えられました。

ペットからの感染はない

しかし、国際獣疫事務局(OIE)によると、実際にはペットが感染源ではなく。新型コロナウイルス感染症に感染した人間(飼い主など)との密接な接触の結果、ペットも感染してしまったという報告もなされました。

「ペットが新型コロナウイルスに簡単に感染するとは考えられていない」

同様に、「ペットが新型コロナウイルスに簡単に感染するとは考えられていない」で詳しくご説明したとおり、世界小動物獣医師会(WSAVA)やアメリカ獣医医学会(AVMA)、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)でも同様の見解を発表し、以下のようなアドバイスを出しました。

 ペットと接する前後には、これまで以上に手洗いなど衛生管理を徹底しましょう
 ペットと接する際にはマスクを着用しましょう
 ペットとの濃厚接触(キス、食べ物をシェアするなど)を避けましょう
 入院する場合は家族や友人にペットの世話をお願いしましょう
 わからないことや懸念がある場合は、すぐに獣医に連絡しましょう

ペットとの生活も一変した

日本国内では2月に、ダイヤモンドプリンセス号内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のクラスターが発生しました。その後、感染者数が拡大したことで、政府は4月7日に緊急事態宣言を発出しました。5月25日に解除されるまで、不要不急の外出自粛(ステイホーム)や学校の休校、商業施設などの休業や短縮営業が行われました。

私たちの生活も様変わりしました。マスクの着用は日常となり、どこにいってもアルコール除菌が当然のマナーになるなど、徹底した衛生管理がなされています。また、リモートワークが推奨され、会議などもネットワークを介してなされるのが普通になりました。

こうした変化は、ペットにとっても同じだったと思います。一番の変化は、一緒にいる時間が増えたということでしょう。通常、私たちは昼間は仕事で留守にしているので、夜帰宅するまでの時間、彼らはお留守番していました。それが、“ステイホーム”によりつねに飼い主が家にいることで、状況は一変しました。

「愛犬・愛猫にマスクトレーニングは必要?」

まず、マスクで飼い主を認識できずに混乱してしまったという事実。そのような状況でご紹介したのが「愛犬・愛猫にマスクトレーニングは必要?」でした。特に犬は私たちの表情を読み取るのが得意で、それを読み取って自分の気持ちを伝えるのです。マスクの着用が日常生活の一部になり、突然人の顔が覆われてしまうと、犬は混乱したり、心配になったりしてしまうのです。

「“ステイホーム”でのペットとの関わり方~過度な接触はストレスになる危険も~」

コミュニケーションについても同様でした。これまで以上に時間があるので、ついついかまってしまう。そんな人も多かったのではないでしょうか。しかし、過度な接触が続くと、愛犬や愛猫にはストレスになる危険もあるのです。 「“ステイホーム”でのペットとの関わり方」でもお伝えしたように、彼らは、私たちよりもずっとストレスに弱い生き物なのです。ちょっとした変化を見逃さず、ちゃんと休息をとれるように心がけてあげましょう。

【猫飼いTIPS】いま話題の「ネコハラ」ってなに?

「ネコハラ」という言葉も聞かれました。これは、猫ハラスメントの略語なのですが、2つの意味があります。ひとつは、愛猫が飼い主の仕事を邪魔するというものです。飼い主にとってはとても邪魔で迷惑だけど、怒る気になれず逆に心が和んで、癒されて、幸せな気分になってしまうのです。もうひとつは、犬と同様に過度にコミュニケーションすることで、ストレスになってしまうというマイナス効果です。

「こんな時だからこそ自宅でペットのグルーミング」

また、せっかく自宅にいるのだから、コミュニケーションの一環として、グルーミングをしてあげようという動きもありました。 英国にある世界最古のケネルクラブ「The Kennel Club」では、犬の健康と福祉の観点から、パンデミックの期間中に家で定期的に手入れをすることを推奨しました。「こんな時だからこそ自宅でペットのグルーミング」では、彼らのアドバイスとヒントをご案内しています。

いずれにしても、愛犬、愛猫の気持ちを考え、ちょっとした変化(サイン)を見逃さず、よい関係を築き、お互いに楽しく幸せな生活を送りたいものです。

世界中でペットが癒やしになったが…

そして、この時期に世界中で新たにペットを飼い始める人が増えました。欧米の保護シェルターでは、里親を待つ犬や猫が新しい家族に出会えたという心温まるニュースも見られました。しかしその一方で、それが一過性のものではないかという危惧もありました。

「日本は大丈夫か…欧米で危惧されているアフターコロナのペットたち」

「日本は大丈夫か…欧米で危惧されているアフターコロナのペットたち」でご説明したとおり、英国の保護団体「Dogs Trust」によると、この現象はクリスマスの状況に似ているらしいのです。欧米ではクリスマスにペットを迎えるケースが見られますが、クリスマス休暇が過ぎるとペットを手放す人が増えるというものです。

そこで彼らは、有名なスローガンに変更を加えました。これまでは、“A dog is for life, not just for Christmas”(犬はクリスマスのときだけでなく、一生をともに過ごすパートナー)でしたが、“A dog is for life, not just for lockdown”(犬はロックダウンのときだけでなく、一生をともに過ごすパートナー)に修正したのです。そのうえで、あなたがいまペットを迎えるのに相応しいかどうかを確認できるコンテンツも提供しています。

「新型コロナウイルスでロックダウンしている欧米で起こっていること」

飼い主のモラルと責任

じつは、同じ状況が日本でもみられます。ステイホーム中に、新たに家族を迎える人が増えました。実際に、ペットショップは盛況で、コロナ禍の癒やしを求めて子犬や子猫を購入していく光景を何度も目にしました。ペットフード協会が発表した「全国犬猫飼育実態調査」によると、今年新たに飼育された犬と猫は約95万匹で、前年比で約15%も伸びているそうです。実際に大手ペットショップチェーンでは、例年の2~3倍の頭数が売れていて、販売する子犬や子猫が不足しているという話も聞きました。

しかし、外出自粛が終了して、徐々に通常の生活が戻ってきてから、ペットを手放すケースが増えているというのです。実際に、里親募集のサイトでは、生活環境の変化を理由にした募集が多くみられます。そしてそれは、まだ生後数カ月の子犬や子猫たちなのです。これは、ペットジャーナリストの阪根 美果さんも、はやくから警鐘を鳴らしました。「コロナ禍でペットを飼う前に考えるべきこと」で、いま本当にペットを飼うことができるのかを冷静に考えることが重要だと指摘しました。

「コロナ禍でペットを飼う前に考えるべきこと」

もちろん、飼い主と同様に、販売サイドの責任やモラルも重要です。東洋経済オンラインに掲載された「36回ローンで購入された猫の悲しすぎる結末」は大いに話題となりました。そして、この記事をきっかけに「お金と心に余裕がない人はペットを飼わないで欲しい」というマンガがTwitterに投稿され、こちらも大きな反響となりました。

商機とみて繁殖をはじめたり、飼育頭数を急に増やした業者も問題です。環境省では、「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」の一部改正、いわゆる数値規制としての省令を来年6月に施行するとしています。この数値規制は、1人当たりが飼育できる犬や猫の数、飼育するケージの大きさを数値化することで、劣悪な環境で動物を飼育する事業者を排除しようというものです。

最終的には、来年6月から段階的に適用するという現実的なものになりました。施行を急ぎすぎると、行き場を失う犬や猫がいっきに増える危険もあり、経過処置が必要と判断したのだと思います。しかし、どんなに法律で規制を強化したとしても、いくらでも逃げ道はあるのです。

“健全”こそが幸せな共生社会を実現する鍵

結局のところ、ブリーダーの愛情、モラルを改善しない限りは、不幸な犬や猫の数を大きく減らすことはできないと思うのです。「愛情がないならブリーダーを辞めるべきという理由」で、健全なブリーダーの資質に言及しています。飼い主としての願いは、健康な子犬や子猫を迎えること。そして、困ったときや不安なときに、相談に応えてくれることではないでしょうか。健全な繁殖とそこから産み出される健康な子犬や子猫、ブリーダーと飼い主の信頼関係が、不幸な犬や猫を産まない社会の実現につながると信じて疑いません。

「愛情がないならブリーダーを辞めるべきという理由」

欧米や日本の健全なブリーダーは、飼い主として相応しいかどうかを厳密に判断します。犬や猫を飼うということは、愛情とともに、彼らが幸せに生きていけるだけの費用も必要になります。小型犬の寿命を15年とすると、最低でも約150万、それに加えてトリミング代や洋服代、保険や医療費、さらには介護や供養やお墓の費用も必要となります。それらのことを考えると、安易に迎えることは、ペットにとって「運命の出会い」ではないのです。

確かに、コロナ禍において、ペット業界は大いに盛り上がりました。しかし、同時に「責任」についても考えるきっかけになったとも言えます。ペトハピは、ブリーダーの健全化は車輪の片側だと考えています。愛護・保護活動と両輪で、人とペットの幸せな共生社会を実現していきたい。そのためには、しっかりと倫理観をもった健全なブリーダーを、どんどん紹介し、みなさんとの橋渡しができればと思います。

今年もご愛読ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

[編集部]