新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく緊急事態宣言が出され、私たちの生活にもいろいろな影響が出てきました。海外のようにロックダウン(都市封鎖)されるわけではなく、不要不急の外出自粛や学校の休校、商業施設などの休業や短縮営業を要請するものです。食品、医薬品、衛生用品など生活必需品、ライフラインや公共交通機関は引き続き運営されます。
大切なことは自分が感染するかどうかというだけでなく、人に感染させる可能性があることを理解して行動することでしょう。これは、ペットと暮らす私たちも同様だと思います。まずは、自分が感染しないようにする。そして、万が一感染してしまった場合は、適切に対応・行動することです。
現時点でわかっていることは、犬や猫などのペットから人への感染のはないということです。世界中の公衆衛生機関が同様の見解を示しています。しかし、飼い主自身が新型コロナウイルスに感染してしまった場合は、ペットとの直接の接触を最小限に抑える必要があることを推奨しています。
先日、ベルギーで猫が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したというニュースが配信され、猫の飼い主として驚いたものでした。PCR検査では陽性を示し、一過性の嘔吐、下痢、呼吸器疾患の症状が見られましたが、すでに猫は何事もなく回復したようです。その後、ウイルスに対する血清抗体の発生についてもモニタリングが継続されていますが、中国・武漢における新型コロナウイルス発生時(1月~3月)に102匹の猫から採取された血液サンプルと、発生前(2019年)に採取された39匹の猫から採取された血液サンプルを比較したところ、発生後に採取されたサンプルのうち15匹(14.7%)にSARS-CoV-2に対する抗体が検出されたという調査報告もあがっています。
WSAVA(世界小動物獣医師会)によると、高用量のSARS-CoV-2を猫に接種して経過を見たところ、接種した猫の中には発症した猫もいれば、近くで飼われている他の動物に感染させたケースも確認できるなど、猫やフェレットが理論的にSARS-CoV-2に感染しやすいことが実験環境では明らかになています。同時に「実験環境で起こることと、通常環境で起こることを比較することはできない」とも強調していました。
しかし、WSAVAの続報によると、米ニューヨークのブロンクス動物園でトラがSARS-CoV-2に陽性反応を示し、さらに3頭のトラと3頭のライオンも乾いた咳をするなど症状が出ていることを米国農務省(USDA)の国立獣医研究所 (NVSL)によって確認されたとしています。感染源はウイルスに感染していた無症状の飼育員である可能性が高いようですが、もし陽性反応を示したトラから、他の3頭のトラやライオンに感染したことが証明されれば、試験管などの実験(特殊な環境)だけでなく、一般の環境でも動物から動物への感染が起こるりうることを裏付けるだろうとしています。
アメリカ獣医医学会(AVMA)やアメリカ疾病管理予防センター(CDC)では、飼い主に対してのアドバイス発信しています。米国ではペットが新型コロナウイルスに感染したという報告はありませんが、もしウイルスに感染した場合は、ウイルスについての詳しい情報が得られるまでペットとの接触を制限することが推奨されています。そうすることが、飼い主とのペットの両者とって良い結果につながるからです。
WSAVA、AVMA、CDCは、もし飼い主が感染してしまった、または感染の可能性がある場合は下記のとおりアドバイスをしています。
“ペットと接する前後には、これまで以上に手洗いなど衛生管理を徹底しましょう”
“ペットと接する際にはマスクを着用しましょう”
“ペットを撫でたり、寄り添ったり、キスや舐められたり、食べ物を分け合ったりするなどの過度な接触を避けましょう”
“入院する場合は家族や友人にペットの世話をお願いしましょう”
“わからないことや懸念がある場合は、すぐに獣医に連絡しましょう”
繰り返しになりますが、現時点でペットから人に感染することは確認されていません。過剰に恐れることなく、決して飼育放棄したりしないようにしましょう。また、推奨事項や要件は急速に変化しています。正しい情報を得ていつもどおり生活してください。ペットは幸せをくれる愛する家族なのですから。
<参考>
・厚生労働省
・日本獣医師会
・日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)
WSAVAでは、Covid-19パンデミックが人々に苦痛と不確実性をもたらしており、またペットがウイルスを蔓延させる可能性があるかどうかという報道が多く見られ、コンパニオンアニマルの福祉(Companion animal welfare)にも大きな脅威をもたらしていると危惧しています。その現状を踏まえ、COVID-19 に関する最新の知見を共有するために4月17日にWEBセミナーを開催します。
ここで話された内容は、この困難な時期における人とペットの絆を強くし、ペットの福祉を促進するための提言になるでしょう。ペトハピでは、後日その内容をお伝えする予定です。