「愛情がないならブリーダーを辞めるべき」という理由

[2020/09/14 6:01 am | ペットジャーナリスト 阪根美果]

今年3月6日、東京府中市でペットショップを経営するブリーダーの男が、売れ残った犬を劣悪な環境で飼育していたなどで逮捕されました。犬9頭を糞尿が溜まった環境で飼育していた動物愛護法違反の疑いがもたれています。昨年7月にも熱中症で死亡した犬31匹と猫7匹を焼却施設に持ち込み、事件が発覚しています。今年2月にも保護された40匹の一部が激しく衰弱するなどしており、警視庁は飼育放棄が常態化していたとみて実態解明を進めているところです。

しかし、2019年6月12日に動物愛護法が改正されたばかりで、そのなかには「動物虐待に対する罰則の強化」が示されています。ブリーダーであればそれを知らないはずはなく、それでもこのような犬や猫の命を軽視するブリーダーがいるということは、単に法を強化すれば解決するというものではないということです。

私は以前から「ペット業界に携わる者には、愛情がなければならない」と考えてきました。特に「命」を産みだすブリーダーには絶対条件だと。それはとても大きな要素で、愛情があれば健全な道を歩んでいく原動力になりえる、また、今回のような最悪の事態を防ぐことができると考えるからです。

上記の事件を起こしたブリーダーの男には、犬や猫に対する何の愛情も感じません。愛情があれば、熱中症にならないようにエアコンなどで温度調節をし、体調が悪ければ病院へ連れていくなど、飼育環境も健康管理もしっかりしていることでしょう。

利益ばかりを追求し、犬や猫に愛情を持てないブリーダーは辞めるべきだと思っています。なぜなら、そこに健全性は見いだせず、ただ尊い命が軽視され続けるだけだからです。それは「ブリーダー」ではありません。

このような事件がマスコミで報道されるたびに、犬や猫を大切に育てている飼い主はもちろんのこと、愛情をかけて、健全性を追求しながら頑張っているブリーダーは、「なぜそんな酷いことができるのか」「命に責任を持つべきだ」「同じブリーダーとして情けない」と心を痛めています。この心情から「ブリーダー」といっても、そこには雲泥の差があることがわかることでしょう。

今回は、愛情溢れる健全なブリーダーが日々どのようなことを考え、行動しているかをお話しするとともに、「ブリーダー」と呼ぶにふさわしい資質、また、犬や猫を幸せにするために必要なことについて考えてみたいと思います。

「ブリーダー」とは?

私は仕事柄、多くの犬舎・猫舎の取材をしていますが、そこには全てにおいて健全性を追求し、愛情をかけて犬や猫を育てているブリーダーが存在します。その取材で見聞きしたことや経験したことから、以下に述べる内容が「ブリーダー」と呼ぶにふさわしい資質だと考えています。

もし、そこから欠けている部分が多いとしたら、それは「ブリーダー」ではなく、「繁殖業者」「パピーミル(子犬工場)」「キトンミル(子猫工場)」と同等と思われてもしかたがありません。

繁殖する犬種・猫種に対して、深い愛情と責任のある「ブリーダー」であれば、これらのことは自ずとできることなのだと実感しています。新たに子犬や子猫をブリーダーから迎えることを検討しているなら、子犬や子猫だけを見て決めるのではなく、以下の点を確認しながら、検討することをお勧めします。

▶繁殖する犬種・猫種に心から惚れ込んでいる
 まずいえることは、健全なブリーダーは、その犬種や猫種を愛してやまないということです。そのときに人気の犬や猫を何種も繁殖するのではなく、心から惚れ込んだ1種あるいは2種など数少ない種を繁殖し、そしてその質の向上を図るためには努力を惜しまないという姿勢があります。「愛している」という表現だけでは足りないくらい、心から惚れ込んでいるのです。日々、愛情をかけて親犬・親猫を家族同様に育てています。産まれた子犬・子猫もまるで自分の子であるかのように、深い愛情を注ぎながら大切に育てています。この圧倒的な愛情が、健康で魅力あふれる子犬や子猫を産出する源になっているのです。

▶その犬種・猫種のスタンダードを目指した繁殖をしている
 本来ブリーダーとは、その犬種・猫種のスタンダード(標準的であるさま)を目指して繁殖をする者を指します。後世に伝承するべき資質を持った犬や猫を作出し、「種の保存」をすることもブリーダーのひとつの使命だからです。そのためには、世界的に認知された団体に所属し、各地で行われる展覧会やショーに参加して、そのスタンダードを理解する必要があります。繁殖に関する勉強会やセミナーで多くのことを学び、それを活かしていく努力をする必要があります。健全なブリーダーは、そのような広い視野と卓越した知識を基盤として、日々、努力を重ねているのです。もちろん、所有する犬や猫の血筋はその祖先まで明らかです。しかし、スタンダードを目指した繁殖をしていても、そう簡単に理想的な犬・猫が産まれるわけではありません。そのため、ブリーダーはその個々に不足する部分を見極め、それを補えるような交配相手を選んで、よりスタンダードに近づけるような繁殖をしています。交配相手を探しに、海外にまで足を運ぶことも珍しいことではありません。遠い血統の交配相手を選ぶことも、長く繁殖を続けるうえで血が濃くならないようにとの配慮があるからです。自らが惚れ込んだ犬種・猫種のスタンダードを追い求め、良質な子孫を残していこうと精進しているのです。

▶何よりも健康であることを第一に考えている
 愛情をかけて親犬・親猫を育てていることはもちろんですが、健全なブリーダーは徹底した健康管理をしています。定期的な健康診断、必要なワクチン接種はもちろんのこと、その犬種・猫種に対して検査可能な遺伝子検査を信頼のできる機関で行っています。健康に問題のない親犬・親猫だけをブリードラインに入れ、体調を管理しながら繁殖をしているのです。無理な繁殖はせず、母犬・母猫の出産の間隔もしっかりと考えています。血統を重視し、スタンダードを追い求めていても近親交配をすることなどはありません。良質なフードや水、サプリメントを与えながら体調を整え、グルーミングなどをしながら体や皮膚・被毛の状態などを確認しています。飼育環境もしっかりと清掃され、嫌なニオイもなく衛生的です。親犬や親猫はケージなどに閉じ込められていることはなく、多くの時間を犬舎・猫舎で自由に過ごしています。一般家庭のなかで自由に過ごしている親犬・親猫も多くいます。ストレスのない飼育環境を整えるため、自宅を増改築したり、引っ越しをしたりするブリーダーもいます。これらは、「健全な子犬・子猫を産出する」というブリーダーとしての責任をしっかりと認識しているからできることです。また、「愛する犬や猫が健康で幸せに過ごせるように」と願っているからこそできることなのです。

▶性格や社会性を重要視している
 子犬・子猫は両親からの気質を受け継いで生まれてきます。そのため、健全なブリーダーはスタンダードや健康状態だけを考えて繁殖をしているのではなく、性格が安定している親犬・親猫をブリードラインに入れるようにしています。産まれた子犬・子猫は、生後2~3か月以降まで手元に置きます。両親や兄弟姉妹などと共に過すことで、しっかりと社会性が身につくようにしています。ブリーダーやその家族など人と接すること、また様々な生活音などを聞くこともその後の生活において大切な要素であり、できる限り多くの経験をしてもらうように努力をしています。性格の良し悪しや社会性の有無は、子犬・子猫のその後の幸せを左右します。その意味を十分に理解しているからこそ、その時期を大切に、愛情を込めて育てているのです。

▶自ら飼い主を厳選し、譲渡後も飼い主との交流を続けている
 健全なブリーダーにとっての繁殖は、良質な子孫を残していくことが目的です。販売することが第一の目的ではありませんので、譲渡する子犬・子猫の数はそれほど多くないというのが現状です。しかし、譲渡をするとなったときには、愛情たっぷり、手塩にかけて育ててきた子犬・子猫を手放すわけですから、自ら厳しい目で飼い主を厳選します。生涯に渡って責任を持って大切に育ててくれる人かどうか、あらゆる面からチェックをします。無理だと判断したら、断る勇気も持っています。譲渡が決まれば、条件等をお互いに納得したうえで、しっかりとした内容の契約書を交わします。「その子犬・子猫の生涯に渡ってサポートします」というブリーダーが殆どで、譲渡後も飼い主との交流を続けて、飼い主に困ったことがあったり、譲渡した子犬・子猫に何か問題があったときには、惜しみないサポートをしていきます。生涯に渡って見守ることもそこに愛情があるからであり、またブリーダーとしての責任だと考えているからです。そして万が一、飼い主に飼えない事情ができたとしても、自ら引き取ったり、一緒に新しい飼い主を探すので、路頭に迷うことはありません。

▶繁殖を引退した親犬・親猫の幸せに責任をもつ
 多くの場合、親犬・親猫が繁殖を引退するのは5~6歳くらいです。去勢・避妊手術をして、そのまま愛情をかけて飼うブリーダーもいれば、信頼できる飼い主にその後の幸せを託すブリーダーもいます。託す場合でも、既に自分の犬舎・猫舎から子犬や子猫を家族に迎えてくれた飼い主に熱望されてということが多く、そこには信頼関係が既にできているので、お互いに安心してご縁を結んでいます。もちろん譲渡後も惜しみないサポートをしていきます。繁殖を引退した親犬・親猫が路頭に迷うことはありません。

「ブリーダー」は学び続けることが必須

最近、あちらこちらで「にわかブリーダー」が増えていると耳にします。にわかブリーダーは、「我が家の子の子犬・子猫が見てみたい」というような感覚で繁殖を始めます。しかし、純血種を繁殖するうえで必要なことを学ぶ気持ちがないので、その犬種・猫種に対する探求心(情熱)、知識量、情報量がことごとく不足しています。

スタンダードを追求し、展覧会やショーなどに参加して評価を受けたり、繁殖に関わるセミナーや勉強会に参加したり、情報交換をすることもないので、親犬・親猫はもちろん、子犬・子猫も健康的にも容姿的にも質が良いとはいえません。その結果、健康的に問題のある子犬・子猫が産まれる、正しい飼育管理ができていない、飼い主に間違ったアドバイスをしてトラブルになるなど様々な問題が生じています。

ブリーダーになるには、第一種動物取扱業の登録と共に、動物取扱責任者の資格要件を満たす、あるいは満たした者を置く必要があります。「悪徳ブリーダー」や「繁殖業者」、また「にわかブリーダー」などを巡る問題を重要視し、ブリーダーの質を向上させるため、今年6月1日に施行された改正動物愛護管理法では、動物取扱責任者の資格要件が以下のように変わりました。

ア、獣医師(国家資格 農林水産省所管)
イ、愛玩動物看護士(国家資格 農林水産省及び環境省所管)
ウ、資格(専門性を有する社団法人等の試験に合格している)及び実務経験(第一種動物取扱業者で6か月以上の実務経験がある)
エ、卒業(獣医学、動物看護学、畜産学などを学ぶ大学、専門学校などの教育機関を卒業している)及び実務経験(第一種動物取扱業者で6か月以上の実務経験がある)

改正前は業務に関する資格、実務経験、卒業などのいずれかであれば動物取扱責任者の要件を満たしていました。現在1つの要件により動物取扱責任者となっている場合には、施行後3年以内にもう一つの要件を満たす必要があります。

この法改正により今後は資格と実務経験など2つの要件を満たさなければならず、それがクリアできないブリーダーは必然的に消えていくことになります。しかし、クリアしたからといって、ブリーダーとして必要な知識や情報、経験を全て持ち合わせているわけではありません。まして、愛情を兼ね備えているかどうかもそれだけでは判断できません。「ブリーダー」であるためには、前述した健全なブリーダーのように、愛情はもちろんのこと、日々進化するさまざまな知識や情報を得ながら、学び続ける必要があると考えます。

「愛情をかけて育てている」「私には愛情がある」という言葉を度々耳にしますが、「愛情」はブリーダーとして持ち合わせていなければならない資質であり、まずはその「スタートラインに立てた」ということです。そこから学ぶ努力をしなければ、犬や猫、また飼い主を不幸にする可能性も大きく、「にわかブリーダー」と呼ばれても仕方がないことだと思うのです。愛情があると思うのなら、「ブリーダー」として少しずつでも階段を登っていく努力をすることが大切なのではないでしょうか。

飼い主のニーズも「悪徳ブリーダー」や「繁殖業者」をなくすカギに

日本では、悪徳であろうが健全であろうが「ブリーダー」とひとくくりで批判されることが多々あります。しかし、ペット先進国といわれる国においては、健全なブリーダーの存在が広く知られています。犬や猫を飼いたいときには、「健全な動物愛護団体・保護施設から迎える」あるいは「健全なブリーダーから迎える」のが好ましいと認知されています。

日本には昔から子犬・子猫を店頭で販売するペットショップがあり、その裏には利益ばかりを追求するような「悪徳ブリーダー」や「繁殖業者」も存在しています。もちろん、そこにいる親犬や親猫には血統書があるというだけで、前述したスタンダードは存在しません。ある犬種・猫種にブームが起これば、親犬や親猫の健康など度外視して無理な繁殖も行います。劣悪な飼育環境であることが多く、そこから産出された子犬・子猫の健康状態は悪く、幼いころに親や兄弟姉妹から離されるため社会性も身についていないことが多いのです。そこに「愛情」はありません。

数年前にペットオークション関係者の言ったある言葉が、私の心にずっと残っています。犬や猫の流通過程の一つであるオークションが批判されていることに対して「ニーズがあるからやっている。それのどこが悪いのだ」と言っていたのです。だとするならば、その先にある利益ばかりを追求するようなペットショップ等から子犬や子猫を迎える飼い主が減れば、その流通経路も途絶え、必然的に「悪徳ブリーダー」や「繁殖業者」は消えていくことになります。

犬や猫を飼いたいと思ったときに、飼い主がどこから迎えるかも、不幸な犬や猫をなくすための重要なカギとなるわけです。ですから、飼い主自身がそのような点もしっかりと考え、迎える先を厳選することが大切なのです。

飼い主になるために必要なハードルもある

ペットショップでは、誰もが子犬や子猫を簡単に手に入れることができます。購入代金が足りなければ、クレジットカードの分割払いやローンを組むこともできます。なかには、従業員に子犬・子猫の販売ノルマを課していることもあります。そこでは、飼い主が生涯にわたって子犬や子猫を大切に飼育できるのかを問うことなく、積極的に購入を勧めてくるわけです。

もちろん、法改正や動物愛護の観点から子犬・子猫の入手先を厳選したり、店舗の飼育環境を改善したり、また、保護犬・保護猫の譲渡活動をしたりと様々な努力をしているペットショップもあります。しかしながら、そもそもモラルや責任のない人でも安易に飼えてしまうという販売形態に問題があります。子犬・子猫のその後の幸せを望むなら、「ペットを飼う前に研修を受けなければならない」「条件をクリアしなければならない」など飼い主に対して何らかのハードルが必要だと思っています。

そのようなハードルを設けているのが、「健全な愛護団体・保護施設」や「健全なブリーダー」です。しかしながら、そのようなところから迎えることを、敷居が高いと感じている飼い主も多いようです。どちらも様々な譲渡条件を提示して、飼い主に資質を問うわけですから、当然そう思うことでしょう。

しかし、それは犬や猫の幸せを考え、飼い主に責任と覚悟を持ってもらうために必要なことなのです。決して路頭に迷わせないために必要なハードルだと思います。安易に飼うことは、安易に手放す可能性も大きく、それは絶対に避けなければならないことです。責任と覚悟がある人にとっては、問題なく超えられるハードルです。

「健全な愛護団体・保護施設」や「健全なブリーダー」は飼い主に困ったことがあれば、その愛犬や愛猫の幸せのために愛情を持ってアドバイスをしてくれることでしょう。そのアドバイスは飼い主を助け、生涯に渡って共に幸せに暮らしていけることでしょう。ですから現状では、多少ハードルが高くても、自分の希望や考えに近い、いずれかの迎え方を積極的に考えていくことが、結果的に不幸な犬や猫の産出を減らし、路頭に迷う犬や猫を減らしていくひとつの方法になるのです。

動物愛護法に基づく省令の数値規制について

現在、悪質な業者から動物を守るために、環境省では有識者による検討会が行われ、動物愛護法に基づく省令の作成が進められています。主な焦点はブリーダーやペットショップ従業員が飼育できる一人当たりの犬や猫の数で、今のところブリーダーは犬15頭、猫25頭、ペットショップ従業員は犬20頭、猫30頭を上限とするとされています。そのほか、繁殖の回数、ケージの広さ、爪などの手入れなどについても議論が進められています。環境省は今後、審議会で取りまとめを行い、来年6月1日に省令を施行する予定です。

しかし水面下では、環境省に対してさまざまな意見を述べようという運動がSNSを通じて行われています。私にもたくさんの相談や意見が届いていますが、その中には疑問を感じるものもあります。「環境省に抗議しましょう」とSNSなどで回ってきたり、「この検討会に関わる超党派の議員に請願(陳情)書を送りましょう」とその例文や送付先がFAXで送られてきたりするのですが、「飼育頭数やケージの広さの制限自体が必要ない」とする反対意見も見受けられます。

例えば、1人で100頭近くの犬を飼育しているブリーダーが、ケージも広げられないし、従業員も雇えないと反論しています。見解の違いにより、多少の変更意見はあっても仕方がないと思いますが、これは明らかにしっかりとした飼育管理ができているとは思えない頭数です。いかに過酷な環境に置かれている犬や猫が多いかということです。また、そのようなブリーダーやペットショップが、その状況をおかしいと感じていないことが問題なのです。そこに犬や猫に対する愛情があるとは到底思えません。

今回の省令の施行によって、ある程度の「悪徳ブリーダー」や「繁殖業者」は淘汰されていくことでしょう。しかし、資金力があって飼育環境を拡大させたり、従業員を新たに雇うことができれば、そこに「愛情」がなくても存続できることになります。また、法の抜け道を考える輩も出てくるかもしれません。その結果、犬や猫が受ける扱いは、これまでと何ら変わらない可能性もあります。

確かに数値規制や罰則の強化がされれば、行政の取り締まりはやりやすくなります。これまでより摘発される数は増えることでしょう。それはとても有益なことだと考えます。しかしながら、それだけでは不幸な犬や猫をなくすという根本的な解決にはならないと思います。問題にしなければならないのは「ブリーダーの資質」だと考えます。その向上には、愛情はもちろんのこと、卓越した知識と経験が必須です。そのようなブリーダーを選別し、また増やすためには、それに見合う教育機関やライセンス制度などの道しるべが必要だろうと思っています。

前述したような健全なブリーダーは、今回の数値規制に大きな問題を感じていません。なぜなら、それ以上の飼育環境を整え、常に健全性を追求しながら繁殖をしているからです。それは誰に強制されたものでもなく、その犬種・猫種に対する圧倒的な「愛情」から生まれた行動です。その「ブリーダー」と呼ぶにふさわしい資質を大いに取り入れた道しるべを構築することが、今後の大きな課題となるでしょう。

しかし、健全なブリーダーのように圧倒的な愛情があれば、そもそも道しるべなどなくても、自ら知識を習得し、経験を重ね、犬や猫の生涯を幸せにすることができます。「愛情」がなければ、それはできません。ブリーダーにとって「愛情」は必須なのです。

「愛情がなければブリーダーを辞めるべき」と考えるのはそれが理由です。

まとめ

犬や猫の幸せのために、まず、「愛情」のないブリーダーは辞めるべきだと思っています。そして、「愛情」があるなら、繁殖に必要な多くのことを学び、その努力を続けることが大切です。それが、命を産みだす「ブリーダー」としての本来あるべき姿だと考えるからです。どうか、自らに問いかけてみてください。

また、飼い主にも学ばなければならないことが沢山あります。愛犬や愛猫の幸せのためには、迎える先をしっかりと厳選し、飼育に必要な多くのことを学び、その努力を続けることが大切です。それが、命と共に過ごす「飼い主」としての本来あるべき姿だと考えるからです。安易に手放したり、路頭に迷わすようなことが無いように、「愛情」を持ってそれらができるかどうか、迎える前に問いかけてみてください。

私は、これまでの多くの取材を通じて、「愛情」を持って学び続ける努力をすることこそが、「幸せ」に繋がるのだと実感しています。犬や猫などの動物に関わる全ての人がそのことを真面目に考え、実行していけば、多くの「命」が救われることになるでしょう。

[ペットジャーナリスト 阪根美果]