捨てられるペットたち ~物価高騰でインフレ深刻なイギリス 飼育費に困り捨てられるペットも

[2022/11/01 6:01 am | 編集長 国久豊史]

捨てられるペットたち

物価高騰でインフレ深刻なイギリス 飼育費に困り捨てられるペットも

NHK | 2022/10/25

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このコーナーでは、注目ニュースに対する編集部や識者のコメントを紹介します。

ペット先進国といわれる欧米で起こっていることは、いずれ日本にも起こると考えられます。

2020年初頭の欧米では、ロックダウンによってシェルターから犬や猫が引き取られているという記事が多く見られました。実際に、シェルターで里親を待つ犬や猫がいなくなったり、「里親になる」というワードの検索は120~130%上昇するなど、世界的にも“保護ブーム”となりました。

しかし、この状態を危惧する声もありました。イギリスの保護団体「Dogs Trust」は、ロックダウンが解除されライフスタイルが元に戻ったときに、ペットを手放す人が増え、再びシェルターが満杯になることを心配し、“A dog is for life, not just for lockdown”(犬はロックダウンのときだけでなく、一生を共に過ごすパートナー)というスローガンを掲げました。

日本でもコロナ禍で迎えられた犬や猫を手放すという問題が顕在化しています。ペットジャーナリストの阪根 美果さんが「36回ローンで購入された猫の悲しすぎる結末」で指摘したように、飼い主の安易な購入と、流通の無責任な販売に問題があったのです。

実際に、保健所や動物愛護団体に持ち込まれたり、ペットの里親募集サイトで新しい飼い主を探す人も多く見受けられます。理由を見ると、「こんなはずじゃなかった」というものがほとんどです。日常が戻って出社するようになったので世話ができなくなった。思った以上にお金がかかる。実際に飼ってみたら想像とは違っていたなど、飼い主の身勝手な理由で、迎えて間もない子犬や子猫が手放されているのです。

英国と同様、日本でも物価の上昇が止まりません。10月には前月の約2.5倍となる食料品が値上げされました。この記録的な値上げは、ペットフードにも及んでいます。みなさんが購入されているペットフードは、ほとんどの銘柄で10%ほど値上がりしている状況です。なかには20%以上値上がりしたフードや、2020年・2022年と2回も値上げした海外メーカーもあります。

ペットも大切な家族なので、生きるためには食事は重要です。ただ、私たちの賃金が上がらないという現実があり、物価高で生活費切り詰める事態にもなっています。これが進行すると、「生活が苦しくなって……」という理由でペットを手放す人も増えてしまう可能性もあります。

ペットも大切な家族なので、生きるためには食事は重要です。ただ、私たちの賃金が上がらないという現実があり、物価高で生活費を切り詰める事態にもなっています。これが進行すると、「生活が苦しくなって…」という理由でペットを手放す人も増えてしまう可能性もあります。

ペットに対して政府からの援助はありません。ですので、自助が難しいようであれば共助で乗り切るしかありません。実際に、ブードバンク活動も広がりつつあります。あるメーカー担当者によると、賞味期限が3カ月を過ぎると流通できず廃棄処分となるようです。流通からはじかれたフードが自動的にフードバンクに送られるなど、業界全体でサポートし、この難局を乗り切るしくみづくりがあってもよいかと思います。

ペットフード市場の90%以上が会員社である一般社団法人ペットフード協会には、そうした共助の働きも期待したいものです。

[編集長 国久豊史]