賢者の目 Vol.14

高齢世代とその家庭動物にとって安心な社会を

[2016/03/10 6:00 am | 酒井健夫]

社会のしくみが複雑化し、目まぐるしいスピードで変化し、さらには人口減少、少子高齢化、核家族化がいっそう深刻となる昨今。家族の一員であり、かつ生活のパートナーである家庭動物(コンパニオン・アニマル、一般にはペットと呼ばれています)と飼い主との暮らしも大きく変わりつつあります。それに伴い、高齢世代の人々とその家庭動物が、ともに安心して幸せに暮らせる新たな環境を整備充実する必要があります。

以前に高齢世代とその家庭動物を、地域社会でお世話する時代が来たことをお伝えしましたが、今回は新たな方策を紹介します。そのひとつが、2月に東京都福祉保健局 健康安全部 環境保健衛生課が発行した冊子「ペットと暮らすシニア世代の方へ」にありました。

家庭動物も飼い主も高齢になると、万が一のときを日ごろから考えておく必要があります。家庭動物や飼い主のライフスタイルが大きく変わり、獣医療技術も高度化されてきましたが、飼い主が家庭動物を終生飼育する責任は変わりません。しかし、切実な問題として、飼い主が高齢になると、体力が落ち、足腰が弱ってくると、家庭動物の毎日の散歩や飼育が大変になり、さらに自身が入院や自宅療養、介護などが必要になると、家庭動物の飼育が十分にできなくなります。その結果、あってはならないことですが、家庭動物を不衛生な状況や不健康な状態で放置することになります。

そのように困ったときの解決方法の実例が、前述しました冊子「ペットと暮らすシニア世代の方へ」に、記載されています。その一部を紹介しますと、以下のとおりになります。


    1.飼い主自身の体力や能力に合わせて、民間業者のサービスを利用したり、かかりつけの動物病院などで専門的なアドバイスを受けること。
    2.飼い主が病気や怪我で突然入院しなければならない場合に備えて、普段から近所の方々や友人に頼んだり、ペットホテルなどを利用して、一時的に動物を預かってもらう場所を見つけておくこと。
    3.家庭動物を健康で幸せに過ごさせるには、体力も経済力も必要であるので、我慢や無理をせずに、勇気を持って新しい飼い主を捜し、また動物愛護推進員に相談して新しい飼い主にゆだねることを考えること。
    4.動物愛護相談センターや区市町村の窓口等の行政機関に、動物に関して相談すること。
    5.万が一に動物より先に飼い主自身が死亡したり、動物との暮らしが急転する場合に備えて、専門家に動物のための遺言を残したり、信託を利用すること。
「ペットと暮らすシニア世代の方へ」はこちらからPDFをダウンロードできます

このように飼い主は、家庭動物を終生にわたり、健康かつ適切に飼育する責任があります。しかし、高齢や病気、怪我などで万が一家庭動物が飼育できなくなる場合や、飼い主自身が先に亡くなった場合でも、家庭動物が安心して過ごせる環境を準備しておくことが飼い主の責務です。みなさん、考えてみましょう。

[酒井健夫]