ペット生活ファーストステップ Vol.2

一生飼い続けられる? 避けては通れない「お金」の話

[2015/11/02 6:00 am | 辻村多佳志]

何をするにもまず必要になるのは「お金」です。日本ペットフード協会の調査によると、小型犬や猫の平均寿命は約15歳だそうですから、「愛情」や「責任」を15年間保てるかどうかももちろん重要になってきます。しかし残念ながら、愛情だけではペットは飼えません。今回は、ペットを飼うにはどれだけの費用がかかるのかを考えていきましょう。

ペットを飼い始めるにはいくらかかるのか、飼い続けるにはいくらかかるのか、どの程度の時間を割くことになるのかは、じつは一概には言えません。ハムスターなど、ほぼケージのなかだけで飼い、種類によって飼育費用がそれほど変わらないペットの場合はだいたいの目安が立てられます。しかし、たとえばチワワとセント・バーナードのように、同じ種族とは思えないほど身体のサイズが異なる犬の場合はそうはいきません。食事の量からしてまったく異なりますし、毎日の散歩にどのくらいの時間を割くのかなど、人間の生活パターンも大きく変わります。さらに、飼い主がペットの飼育に関してどのような考え方を持っているのかによっても、飼育費用と世話に必要な時間は明らかに変化します。

犬の場合はサイズで飼育費用も変わります

ということで、「お金」と「時間」の話は、あくまでも一例としての目安です。実際にどのくらいの費用を見ておかなくてはならないのかは、みなさんそれぞれが考えていただければと思います。ご自身で表組を作って、絶対必要な予算と、できれば必要な予算を一覧にするとわかりやすいはずです。私も愛犬を迎える前には何度もシミュレーションを行いましたが、あれこれ考える時間もまた楽しいものです。ただし、そうしてシミュレーションを繰り返した私でも、実際に飼い始めると、予期せぬ出費が次から次へと発生しました。予算ギリギリの状態で飼うのではなく、資金計画にはある程度余裕を持つ必要がありそうです。今回は、私が行ったシミュレーションの項目を元に、実際にかかった費用などを織り交ぜながらご紹介しましょう。

ペットを飼い始めるときに考えておきたい予算

まず、「子犬や子猫を購入して、飼育用のアイテムをそろえる費用」から見ていきましょう。子犬や子猫の価格は、シェルターや知人からもらってくれば0円、なかには50万円以上する子もいる、と本当にバラバラです。ペットを飼いたいと思ったら、いきなり購入しようとはせず、あちこちのペットショップを回ったり、インターネットなどで子犬出産情報を探すなりして知識を深めるのがオススメです。

ちなみに、わが家のサモエドはブリーダーさんから直接お迎えしたので10万円台半ばでしたが、サモエドはもともとペットショップには滅多に出回りませんし、いい子が見つかるまで1年待ったという人もいるほど稀少な犬種なので、参考にはならないかもしれません。うちは探し始めて3カ月くらいで見つかったと記憶しています。いまから考えると、これはかなり運がいい方だと思います。まずはあせらずじっくり構えた方がいいでしょう。

わが家の愛犬のサモエドです。探し始めて3カ月で出会うことができました

お迎えする子犬や子猫が決まったら、犬小屋や猫用ケージ、食器、トイレ用品、犬ならリードや首輪などを揃えます。猫はともかく、犬は犬種によってサイズや体型、飼い方が大きく変わりますから、どの子にしようか決める前にアイテムをそろえてしまうのは失敗の元です。

必要なアイテムはたくさんありますが、買い過ぎには注意です

このあたりのアイテムは、気にいったものを揃えようとすると予算がどんどん膨らんでしまう傾向があります。この罠には私もはまりました。とにかく、アレもかわいいコレもかわいい(わが家のサモエドは女の子です)、この8000円のサークルよりもこの2万円のサークルの方が、枠が木製になっていてオシャレだな、など、こだわり始めるときりがなく、気づくと何でもかんでも大量に買い込んでいるのです。

お迎えするときに購入したアイテムだけでずっと満足できるとは限りませんし、クッションやベッドなどは買い替えることもあるでしょうから、リーズナブルで機能的なモノを買った方が、私自身の経験からもベターだと思います。どんなアイテムが必要で、どこに注意して選んだらいいのかは、別の回にあらためて考えていきましょう。

ペットフード代

ペットフードは、ただ単に飢えなければいいというものではありません。出費を切り詰めることだけを考えるなら、私の子ども時代には当たり前だった「犬まんま」、つまり人間の食事の残り物を与えておけばいいのかもしれません。しかし、愛するペットに健康的に長生きしてほしいなら、ペットフードにはある程度こだわる必要があるでしょう。ただし、そのぶんペットフード代はどうしても増えてしまうことになります。

東京都福祉保健局が調査発表した、犬の餌代についての最新統計資料によると、年間の餌代は「1万円~3万円未満」が犬飼育者の約3分の1、「3万円~6万円未満」が約3分の1となっています。ただ私の場合は、年間6万円では足りませんでした。おやつや手作りごはんを与えていると、小型犬でもそれなりにかかるはずです。猫の餌代については、ペルシャ猫を繁殖販売していたブリーダーさんに聞いてみたところ、超小型犬とほぼ同じと考えていいようです。

ペットの健康を守るための予算

ペットは、ペットフードを食べさせていれば健康に育つわけではありません。普段からの健康管理がとても重要になり、もちろんこの健康維持のためにもお金がかかります。なお、ペットの健康診断やワクチン、治療などは、人間とは異なり動物病院によって代金がかなり変わりますので、あくまでも目安とお考えください。

まず、犬を飼う際に義務付けられているのが、狂犬病の予防接種。生後3カ月以上の犬には毎年の接種が義務づけらていて、行きつけの動物病院では接種代+登録代で3500円くらいでした。ほか、畜犬登録をしていない場合は別途3000円が、初回登録時にだけ必要になります。また、将来子どもをつくる予定がない場合は去勢手術や避妊手術を行うことも多く、ペットフードメーカーのペットラインの資料では、オスの去勢手術(入院なし)で2万円~3万円前後、メスの避妊手術(1泊入院)で3万円~5万円前後となっています。ちなみに、わが家のサモエドの場合は入院費込みで4万円くらいだったと記憶しています。ただ、手術の際に行きつけの獣医さんに聞いたところ、病院によって手術代はかなり変わるそうなので、場合によってはセカンドオピニオンを考えてみてもよさそうです。

義務ではありませんが、オススメしたい病気予防・早期発見対策としては、健康診断と混合ワクチン接種、フィラリア対策、ノミ・ダニ対策があります。ワクチンの内容などの詳細は別の回に譲りますが、うちの場合は、毎年のフィラリア対策プログラム実施時に、血液などまで詳しく調べてもらい、健康診断費用がたしか1万円くらい。ワクチン接種が8000円くらいでした。フィラリア対策とノミ・ダニ対策は、それぞれ年間1万円~1万5000円くらい(犬のサイズによって変わります)と考えておけばよさそうです。もちろん猫も、ワクチン接種やノミ・ダニ対策は重用になります。

東京都福祉保健局の調査でも、年間医療費「1万円~3万円未満」が約4分の1、「3万円~6万円未満」が約3分の1ですから、大きく外れてはいないはずです。ただし、入院や手術、腎臓病などの慢性疾患を患った場合には、健康保険が使える人間とは比較にならないほど多額の出費が求められることが珍しくありません。対策として、ペット保険に加入していれば多少は安心ですが、保険料はそれなりにかかります。犬仲間に話を聞くと、老後の治療や介護のためにかなりの金額を貯金している人も珍しくないようです。

快適に楽しく暮らすための予算

ここからは、ペットを飼う人それぞれによって予算が大きく異なってくる項目です。家の中でトイレをさせていればペットシーツ代が必要になりますし、しつけのための費用、お散歩用品、食後の歯磨きやブラッシング用品、ペットウェア、お出かけ用アイテム、おもちゃなど、出費の場面はいくらでもあります。旅行などでペットホテルに預ければ1泊数千円はかかりますし、シャンプーやトリミングを行う犬種なら、その予算も必要です。

ちなみに、わが家のサモエドはシャンプーに1回出すだけで1万円前後かかっています。また、これはサモエドのような北方犬種のみの特殊なケースだと思いますが、一軒家でエアコン2台をフル稼動させていましたので、夏場の電気代は毎月3万円~4万円でした。東京都福祉保健局の調査では、餌代と医療費を除いた年間の飼育費用は、4人に1人が「3万円~6万円未満」。次に多かったのは「1万円~3万円未満」の14%です。

ここまでの予算をざっと合計すると、ある程度節約したとしても、飼育費用が比較的少なくてすむ小型犬や猫で年間20万円、大型犬になると30万円くらいは見ておいた方が、いざとなったときに慌てずにすむということになります。「案外多い」とお感じの方もいらっしゃることでしょう。いざ飼い始めてから、あるいはペットが年老いたときに、お金がなくて飼いきれないとなったら困りますから、将来にわたる資金計画をしっかり立てておきたいですね。

次回は、ペットはどのように探しお迎えしたらいいのか、ペットを飼う前に整えておきたい家庭環境や飼育環境とは、について考えていきましょう。

[辻村多佳志]