ドッグトレーニングの現場から Vol.33

初心者でも多頭飼いはできるの?

愛犬との日常 ワンポイントアドバイス(その6)

[2017/3/14 06:00 | 辻村多佳志]

藤田先生に聞く、しつけについてのワンポイントアドバイス、今回は「多頭飼い」についてです。多頭飼いをすると、「いいことがたくさんある」とはよく聞く話ですが、犬同士の仲が悪かったらたいへんです。どちらかを里子に出すというわけにもいかないですよね。多頭飼いを成功させるコツはあるのでしょうか。

監修/訓練士 藤田真志
麻布大学獣医学部卒/動物人間関係学専攻 (社)ジャパンケネルクラブ公認家庭犬訓練士 (社)ジャパンケネルクラブ愛犬飼育管理士 2004年に「HAPPY WAN」を開業

多頭飼いには、メリットがいっぱい

多頭飼いという、犬の飼い方があることは、読者のみなさんもご存じのことでしょう。身近な犬仲間のなかにも、2頭3頭、あるいはもっと多くの犬と一緒に暮らしている人がいらっしゃるかもしれません。もちろん、単頭飼いと多頭飼いのどちらが優れている、どちらの飼い方が幸せだ、などとは決めつけられません。愛犬も含めた家族と、家族を取り巻く周囲の人々が、みんなで幸せになれれば、それがベストなのです。

この大前提を踏まえたうえで、多頭飼いのメリットとデメリット、注意すべき点を見ていきましょう。藤田先生は、多頭飼いについて、どのようにお考えですか?

「個人的には、多頭飼いはオススメですね。私がトレーニングを担当させていただいた方にも、多頭飼いをされている方が数多くいらっしゃいましたが、多頭飼いして失敗だった、と後悔されている方に出会ったことはないです」

すごく基本的な話になるのですが、多頭飼いのメリットを教えていただけますか?

「犬と人とは生涯の友であり、家族でもあるのですが、やはりまったく別の生き物同士です。お互いに信頼し合い、支え合っていたとしても、わかり合えない部分はどうしても出てきます。しかし、犬同士なら、犬の方法論で付き合っていけるので、生活環境としてはよりよいものになるはずです」

「まず、犬から見たメリットについて考えていきましょう。たとえば、留守がちのご家庭で犬を飼う場合、単頭飼いだったら、犬はずっと単独で待っていなくてはなりません。以前の記事で、分離不安についてご説明しましたが、こうしたストレスも、仲間が一緒にいれば大幅に軽減できます。部屋の中で自由にさせておけば、一緒に遊んで運動欲求を解消することもできるでしょう」

このあたりは、人間の子どもでも同じことが言えそうです。さらに、人間の子どもなら、ひとりで遊んで待っている手段はいくらでもありますが、ケージに入れられた犬の場合は、寝るしかなくなってしまいます。説明して納得してもらうこともできませんし、犬は群れ動物ですから、ストレスはより大きくなりそうですよね。

「飼い主さんから見たメリットとしては、幸福感、充実感が増すという話を聞きますね。むかしに比べて、犬と人間との距離がとても近くなったいま、犬が増えるということは、家族が増えるのと同じ意味を持ちますから。また、これはセンシティブな問題になるのですが、重いペットロスを防ぐ効果もあるようです。私の経験でも、1頭が亡くなってしまった悲しみを、ほかの犬が救い支えてくれたという話はよく聞きます」

デメリット面はいかがでしょう。

「デメリットと言っていいのか分かりませんが、餌代や病院代などは頭数分かかりますね。ただ、グッズなどは共有できるので、2頭分を別々に買う総額に比べれば安いといえます。世話の手間も、2頭になったから2倍に増える、ということはないですね。ただ、お散歩時間の確保については、しっかり考えておくべきです。理由は後ほどご説明します」

飼育初心者でも、多頭飼いは可能です

多頭飼いと単頭飼いを比較したとき、しつけの方法などに違いはありますか? 多頭飼いは犬の飼育に慣れたベテラン飼い主向きというイメージもあるようですが。

「飼育経験が少ない方でも、多頭飼いで幸せに暮らしている方はたくさんいらっしゃいます。犬のことをしっかり観察し、犬の生態を勉強されている方なら、問題なく飼えるはずです」

犬同士が仲良くできるのかどうか、不安な方も多いのではないでしょうか。

「私の経験では、8割くらいは仲良くなれます。でも確かに、仲が悪いケースはありますね。よく、先住犬と後からきた犬との、扱いに注意しようという話を聞くことがありますが、じつは、先住犬か後からきた犬か、犬の年齢が上か下か、という判断方法をもとにしたしつけは、あまり意味がありません。もっとも大切なのは、それぞれの犬が社会化できているか、著しく犬嫌いではないかという、多頭飼いを始める前の判断です」

社会性が上手く育まれず、犬嫌いだったり極端に臆病だったりする犬を、多頭飼いで慣れさせて直す。こんな話を聞いたことがあるのですが。

「それは危険な賭けですので、私はオススメしません。もし、それで慣れなかったとしたら、もっとも安心して過ごせる場所であるはずのわが家が、ストレスの塊になってしまいます。社会性が低いなら、まず直してから多頭飼いをするべきです。考え方がそもそも逆ですよね」

初めての多頭飼いをする場合、事前に何をしておけばいいですか?

「まず、個別に散歩に行ける時間があるかどうかを考えましょう。仲が悪ければ一緒に散歩できませんから。次に、相性がよくなりやすい組み合わせを考えましょう。オスとメスの組み合わせの場合は、うまくいくことが多いですね。ただし、子犬を望まないなら必ず去勢をしてください。対して、オス同士や、避妊をしたメス同士の場合は、ケンカが多くなることもあります」

老犬と子犬、大型犬と小型犬といった組み合わせは、相性がいいですか?

「老犬と子犬とは、やはり温度差があります。子犬の元気さに老犬が付いていけない場合、老犬が子犬の相手に疲れているようなら、老犬にはケージで休んでもらい、子犬は飼い主さんが別に思いきり遊ぶという対応も求められます。大型犬と小型犬の組み合わせは、とくに問題はないでしょう。相性というよりも、やはり性格を見るべきですね。ドッグランに連れていくと喜ぶ犬は、多頭飼いでもうまくいくことが多いのです」

仲が悪い犬同士を仲良くさせるには?

では、多頭飼いを始めた結果、仲がよくないことが判明したら、どのようなしつけをすればいいのでしょうか。どちらかを里子に出すという方法は、できれば避けたいですから。

「方法は大きく2つに分けられます。まず、お互いにケージに入れるなどして、濃密な接触を減らす方法。しかし、接触が少なければ、犬同士の仲は発展していかないですから、様子を見ながら距離を縮める工夫が求められます。もうひとつは、飼い主さんが強烈なリーダーシップを発揮して、犬同士を従える方法。ただ、一般の飼い主さんにとって、複数の犬の関係性を確認しながら、飼い主が強力なリーダーシップを発揮する方法は、なかなか見極められないと思います」

どちらかが一歩的に好意を寄せ、もう一方が嫌がる場合もありますよね。

「室内で、積極的な犬をリードにつなぎ、しつこくしても相手は逃げてしまうことを学習させましょう。お互いが無視する場合は、飼い主さんが無理に仲良くさせるべきではありません。犬同士の関係は、犬の判断で決めることなので、お互いが脅威を感じない環境を整えたら、あとは放っておきましょう。そのうち、何らかの関係ができるはずです」

基本的に、犬同士のことは、犬に決めさせた方がいいようです。ただし、どちらかの犬に攻撃行動がある場合、とくに、咬み付く行動がある場合は危険。放っておくと事故に繋がりますので、一刻も早くプロに相談すべきでしょう。

[辻村多佳志]