ドッグトレーニングの現場から Vol.28

歯磨きやブラッシング、シャンプーを嫌がらない子にするには?

愛犬との日常 ワンポイントアドバイス(その1)

[2016/12/27 06:00 | 辻村多佳志]

藤田先生に聞く、しつけについてのワンポイントアドバイス、今回は、歯磨きやブラッシング、シャンプーを嫌がらない子になってもらうためのしつけです。ブラシを持っただけで逃げ出してしまう子や、口に歯ブラシを当てようとしただけで怒る子は、はたしてうまくグルーミングができるようになるのでしょうか?

監修/訓練士 藤田真志
麻布大学獣医学部卒/動物人間関係学専攻 (社)ジャパンケネルクラブ公認家庭犬訓練士 (社)ジャパンケネルクラブ愛犬飼育管理士 2004年に「HAPPY WAN」を開業

なぜ、歯磨きやブラッシングが嫌いになるの?

ブラッシングやシャンプー、歯磨きを嫌がる子は多いと聞きます。なかには、抱っこしたり、身体に触ろうとしただけで、飼い主さんを威嚇する犬もいるようです。藤田先生のWebサイトでは、歯をむき出す愛犬に噛まれて困り果てた飼い主さんからの投稿が数多く掲載されています。犬は人なつっこい動物だというイメージがありますが、一概にそうとも言い切れませんね。

それはともかく、撫でたり抱っこしたりすると喜んでくれるのに、グルーミングの時間になると逃げ回る理由は何でしょうか。スキンシップが嫌いなわけではないですよね。藤田先生にうかがってみましょう。

「大喜びでグルーミングを受け入れてくれる犬もいますが、そういう子は少数派ですね。たとえグルーミングを嫌がっても、うちの子はワガママだと怒るのではなく、そもそも犬はグルーミングが好きではないのだと考えましょう。グルーミングは、犬と人間が室内で一緒に暮らすようになってから重要視されて来ましたが、犬の長い歴史の中では、もともと必要なかったものですから」

グルーミングはあくまでも人間側の都合というわけです。とはいえ、歯磨きを怠ると歯石が堆積したり歯周病につながったりしますし、シャンプーやブラッシングで犬を清潔に保つことは、犬の健康にも大きなメリットをもたらします。「嫌がるから何もせずに放っておこう……」では、飼い主失格と言われそうですよね。しかし、なぜグルーミングを嫌がる犬と嫌がらない犬がいるのでしょうか?

「飼い主さんが、犬にとって不快なグルーミング方法を無理強いしているからです。犬の身体に触れることは大切なスキンシップですから、グルーミングも、犬に心地よくなってもらうことを第一に考えないといけません。ただその前に、もっと大切なことがあります」

テクニックよりも先に学びたいこととは?

「グルーミングに限らず、すべてのトレーニングに当てはまることですが、何よりもまず『犬に信頼してもらう』ことが大切です。子犬のころからスキンシップを心がけ、いっぱい遊んであげて、社会性を身に付けさせましょう。ブラッシングをさせてくれないなどグルーミングのお悩み解消にも数多く携わってきましたが、ほかのトレーニングを通じて犬とのコミュニケーションが改善すると、グルーミングも大人しくさせてくれるようになるケースが多いのです」

 以前の記事で藤田先生は、「しつけが上手な飼い主さんは、ほとんどが触り上手です」と話をされています。しつけは、お悩みの部分だけを解決するのではなく、犬と人との幸せな毎日を築くことこそが大切なのだと分かるお話ですね。では、犬との関係が良好でスキンシップも上手く取れる犬や、社会化を育んでいる時期の子犬にグルーミングに慣れてもらうためのテクニックをうかがってみましょう。

飼い主さんの都合を押し付けてはいけません

「ブラッシングや歯磨きができない、とのお悩み相談をいただいたときは、トレーニング前にまず、ふだんはどんな方法でグルーミングをしているのかを拝見します。すると、ほとんどの飼い主さんは、とにかく作業が雑で、犬が痛がろうが嫌がろうが、強引に作業を済ませようとします。これではまったくダメ。結果を性急に求めるのではなく、グルーミングの過程こそが大切です」

ブラシを高速でガシガシ動かして毛を一気に取ろうとしたり、強力なシャワーを頭からドバッとかけたり、無理矢理に口をこじ開けて歯ブラシでゴシゴシしたり、そんな飼い主さんが多いのだそうです。これでは犬にとっては不快でしかありません。犬は、結果を求めるために何かをガマンしなくてはならない、と理解してはくれないからです。

「まず、犬を大切なお客様だと考えてください。お客様に喜んでいただくためにはどうすればいい? と考えながらグルーミングをするのです。お客様ですから、道具選びにも気を遣わなくてはいけません」

喜んでもらうためには、たとえばブラッシングはマッサージの時間、シャンプーは癒しの時間、歯磨きはオーラルケアの時間と考え、ビューティサロンのスタッフになったつもりで接しましょう。

「ペットショップでブラッシング用品について相談すると、スリッカーブラシなどを勧められることも多いでしょう。しかし、最初はラバーブラシや先丸のピンブラシなど、刺激が少ないブラシを選び、柄ではなくブラシ本体を持って、犬の身体を優しくていねいにマッサージするように行います。作業が長引きそうなときには、一気にすべて仕上げようとせず、犬が嫌がり出す前に止めましょう。また、しっかり運動したあとのクールダウンとして、リラックスしてもらうことを目的に行うと、比較的うまくいくようです」

ブラッシングは毎日少しずつ、こまめにていねいにがコツです。何週間も放っておいて毛がからまってしまってからのブラッシングは、犬にとっては苦痛でしかありません。

「シャンプーが苦手な子は、水が怖いのではなく、シャワーの音が怖かったり、水流が勢いよく当たったりするのが怖い場合が多いので、シャワーヘッドを身体に密着して滑らせるように洗いましょう。慣れないうちは、顔は洗わなくてもいいでしょう。歯磨きは、最初から歯ブラシを使おうとせず、口のまわりを優しく撫でたり、指を口の中に入れて歯を触ったりしながら慣らしていきましょう。歯ブラシは、人間の3歳児用くらいを選びます。最初から犬用を使う必要はありません」

ただし、ここで絶対に守ってもらいたい鉄則があります。すでに歯磨きを嫌がるようになっている成犬の場合は、絶対に無理をしないでください。指を噛まれて大けがをする危険があるからです。とくに前歯は敏感なので、触るのは危険です。前脚の先端やお尻など、敏感なところは犬の急所でもあるので、犬と人との信頼が育まれていないと危険。自信がないときは無理をせず、プロに相談しましょう。

[辻村多佳志]