ドッグトレーニングの現場から Vol.25

人や犬への飛び付き、マウンティングを止めさせるには?

お散歩トラブル ワンポイントアドバイス(その6)

[2016/11/15 06:00 | 辻村多佳志]

藤田先生に聞く、しつけについてのワンポイントアドバイス、今回は、飼い主さんや出会った人、ほかの犬への「飛び付き癖」についてです。とくに中型犬や大型犬が、ご老人や子どもにいきなり飛び付いてケガをさせてしまったらたいへんですから、しっかりしつけておきましょう。

監修/訓練士 藤田真志
麻布大学獣医学部卒/動物人間関係学専攻 (社)ジャパンケネルクラブ公認家庭犬訓練士 (社)ジャパンケネルクラブ愛犬飼育管理士 2004年に「HAPPY WAN」を開業

そもそも、なぜ飛び付くのでしょう?

子犬を飼ったことがある人ならおわかりだと思いますが、子犬はとにかく飛び付こうとします。身体が小さいからということもあるのでしょうが、飛び付くという行動には、何か理由があるはずです。

「犬にとって、飛び付きは自然な行動です。犬と犬が出会ったときには、顔を寄せ合ってお互いのニオイを嗅ぎ合うのですが、身体が小さい犬は、後ろ足で立ち上がらないと顔を寄せられないですよね? 人に対しても、犬は顔をペロペロなめることで愛情や喜びを伝えようとします。つまり、飛び付きは犬と人との自然なコミュニケーションの手段なのです。ただそれが、人間社会のマナー上は、問題が出る可能性があるということですね」

飛び付きが、犬にとって自然な行動であるなら、飛び付かないようにしつけるのは難しいのではないでしょうか? 小型犬の場合、飛び付いても相手にケガをさせることが少ないので、そのまま放置している人もいるようですが、問題はないのでしょうか?

「犬が後ろ足だけで垂直ジャンプをすると、膝蓋骨、つまりヒザのお皿が脱臼する『パテラ症』になってしまうことがあります。とくに急旋回や着地の際に外れてしまうことが多いですね。体重が重い大型犬のほうがヒザに負担がかかりやすい印象があるかもしれません。しかし実際には、小型犬ほど外れる危険が高く、ポメラニアンやチワワ、パピヨンなどでは珍しいケガではないのです。たとえ小型犬でも、飛び付かないようにしつけておくほうが安心ですね」

飛び付いてもメリットがないことを教えましょう。

では、飛び付かないようにしつけるには、どうすればいいのでしょうか?

「コミュニケーションを取りたいという欲求に、飛び付き以外の手段で応えればいいのです。たとえば、首輪とリードをつけ、犬が自然な姿勢で立っていられるけれど、後ろ足だけで立とうとすると飛び付けない状態になるよう、リードの適度な位置を踏んで長さを固定します。そして、前脚が地面に着いているときにだけ、いい子いい子をするなど犬が喜ぶコミュニケーションを取ります。すると、前足を地面から離して伸び上がるという行動は、犬にとって何のメリットもなくなります。飛び付こうとしたら失敗した、前足が地面に着いていたらいいことがあった、と条件付けをするわけですね」

 子犬のころから、そういった条件付けをしておくと、たしかに飛び付きは直りそうですよね。でも、なかなか直らないケースはどうしたらいいのでしょうか?

「まず、飛び付くことでメリットが得られる機会を、可能な限り減らしていきましょう。お散歩中に出会った人や来客に飛び付いたとしても、飛び付かれた人の多くは、飛び付いちゃダメとは言いません。とくに相手が犬好きだったりすると、飛び付かれても喜んで相手をしてしまいがちですよね? また、サークルのヘリに前足をかけて伸び上がっているときに、頭を撫でたりおやつを与えたりしていませんか? たしかに、人には前足をかけていませんけれど、これも前足を上げたらメリットが得られたことになってしまいます。テンションが高い性格の子も、なかなか直らないことがありますね」

 私が子どものころは、犬が飛び付いてきたら足を払って転ばせろ、犬がキャン!と痛がるくらいに後ろ足の指を踏め、とのしつけ方法をよく耳にしました。そういった方法は効果があるのでしょうか?

「たしかに昔は、犬が飛び付こうとした瞬間にバチーンと叩いたりしていました。でも、それだと人間の手を怖がるようになってしまいがちです。足を払うのも危ないですね。捻挫の危険がありますから。大型犬の場合は、飛び付こうとした際に、飼い主さんがヒザを押し付けるようにして制止するという手段もあるのですが、慣れないと難しいかもしれません」

飛び付いてきたら、クルッと背中を向けて無視するというしつけ方法もよく見かけます。

「私の経験では、効果が出ないことが多いですね。テンションが高い犬に対して背中を向けたからといって、テンションは下がりません。そもそも、そういう空気を読もうとしないから、飛び付きまくってしまいわけですからね」

 藤田先生によると、飛び付きがなかなか直らない犬を直すための方法もあるのだそうです。ただこれは、藤田先生のように知識と経験を積み重ねたドッグトレーナーが、犬を詳細に観察し、その子にあった適切な手段を採らないと効果が出ない、いわばしつけの奥義ですから、ここでは紹介しません。文章を読んだだけでは、きちんと行えるはずもないからです。では、飛び付きと同様にトラブルの火種になりがちな、マウンティングの直し方はありますか?

「マウンティングは、犬と犬とのコミュニケーションでは正常な行動なので、しつけでは直らないことも多いのです。早い時期に去勢をするなどの手段はありますが、子犬のころから社会性をきちんと身に付けさせることが、もっとも大切ですね。また、飛び付きを制止する際にも有効な手段として、『スワレ』『フセ』『マテ』などのコマンドをしっかり教えることも効果があります」

社会性が育まれているかどうかは、ありとあらゆる場面で影響するのですね。次回は「呼び戻しのコツ」をうかがっていきます。

[辻村多佳志]