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専門医療にも対応する地域密着型病院を目指すホームドクター

髙野 宜彦(たかの よしひこ)/ さいたま博通り動物病院 - 一次診療 -

[2016/6/23 06:00 | 編集部]

近年の飼育環境の変化でペットの高齢化が進行し、飼い主が望む獣医療が変化しつつある。従来は大学病院で行われていた二次医療は、民間の獣医師の専門化により、ホームドクター的な一次医療を超えて可能になってきている。さらに大学病院やほかの専門病院との連携により、より高度な獣医療を提供している獣医師も増えてきた。

多様化・細分化する獣医療。飼い主は「どんな病院を」「どんな獣医師を」選ぶべきか。知識・技術は当然だが、ペットとともに飼い主も思いやる心も望まれる。多くの飼い主たちが信頼を寄せて全国から集まる病院、ペット業界のプロたちが推薦する病院、そして獣医師が信頼して紹介する病院にこそ、その答えがあるのだ。ここでは、そんな「選ばれし獣医師」を紹介していく。

一次診療と専門医療の両立を目指す

2013年2月に埼玉県・熊谷市に開院した「さいたま博通り動物病院」。この地域に密着した一次診療の病院で、熱く頼れるホームドクターを目指しているのが、髙野院長である。

「総合的な診療を行う一次診療に専門医療を追加することで、日々の診療に厚みを持たせたい」と一次診療に加えて、専門医療として心臓病などの循環器疾患に力を入れている。

高度医療である二次診療の現場での勤務経験や、休日を利用して大学病院で研修を積んだ経験が、つねに全力で治療にあたる原動力である。

飼い主との日々の会話を大切に、地域密着のホームドクターとして、広く深く動物たちの健康をサポートしている。そんな熱き診療を行う髙野院長に話をうかがった。

髙野 宜彦 院長
2005年:麻布大学獣医学科卒業 卒業
     アニマルクリニックこばやし勤務
2009年:練馬動物医療センターホンド動物病院勤務
     東京農工大学動物医療センター 循環器科での研修を開始
2012年:WVC(アメリカ西部獣医学会) 外科Advanceコース修了
     さいたま博通り動物病院 開院
2016年:日本獣医循環器学会 獣医循環器認定医取得
     現在も東京農工大学動物医療センター循環器科研修医として専門医療を学ぶ
<所属学会>
日本獣医循環器学会 日本獣医がん学会

・獣医師を目指したきっかけ

「子犬の交通事故が転機となる」

高校2年生のときに父親が保健所から子犬を引き取ってきたことで、初めて自分で責任を持って動物を飼育する機会を得ました。

自宅の庭ではリードを外して自由に遊ばせていたのですが、ある日、閉め忘れた門から子犬が飛び出してしまい、次の瞬間に「ドン」という音が……。子犬は走行中のクルマに轢かれてしまったのです。口からものすごい出血があったので、助からないと思いながらも急いで動物病院へ連れて行きました。

診察してもらい、1泊2日の入院となりました。その夜は子犬が死んでしまうのではないかという心配と、自分を責める気持ち、また何もしてあげられない悔しさを感じ、眠れませんでした。幸い子犬は口の中を切っただけで、命に別状はなく、軽傷で済みました。

それまでは文系に進むと決めていましたが、この経験がきっかけとなり、獣医の道を目指すことを決意しました。目の前で自分が飼っていた子犬が傷ついてしまったのに、何もできない無力感。そして、その子犬を診察してくれた獣医の対応に感動し、獣医を目指す気持ちが一気に芽生えました。

もともと動物が好きだったこともあり、それからは自分の進む道に迷いはありませんでした。開業した今もその出来事を思い出し、「初心忘るべからず」と心に刻んでいます。

・都内の高度医療センターでの診療を選んだ理由

「獣医療面だけでなく飼い主のメンタルへの対応などの知識を高めるため」

大学を卒業して、まずは、地元の動物病院に勤務医として着任しました。そこは一次診療だけでなく、高度医療である二次診療も行う病院でしたが、同等の病院でも飼い主に対するケアは都内の病院のほうが進んでいたため、3年ほど経ってから東京の病院に移りました。

もともと開業する目標がありましたので、飼い主への対応やケアなどを学んでおくことは、とても重要だと考えたからです。また、都内のほうが移動もしやすく、セミナーや学会などに参加できる機会も多く、技術や知識を学ぶのにはうってつけの環境だと考えました。

地元での開業を決めていたので、一度は地元を離れて経験を積むことも考えていました。その後、3年間の勤務を経て、この病院を開業しました。

・得意としている診療分野

「経験を積んだ循環器科の診療に力を入れている」

都内の動物病院では、通常の診療に加え、循環器科の担当を任せていただきました。また、院長からの勧めもあり、大学病院の循環器科の研修医として診断技術と専門知識を学びました。総合診療と専門診療を融合させることの大切さを身に染みて感じました。

総合診療は、私たち一次診療を担う動物病院にとって、ホームドクターとしてもっとも重要な部分です。しかし、それだけではすべての分野において浅く広くになってしまいます。そのため、今まで経験を積んだ循環器科の専門医療を加えることで、診療に厚みと深みを持たせたいと考えました。近くの病院で専門医療の診察を受けられることは、飼い主にとっては大きなメリットになると思います。

近年、先天性の病気は減りつつありますが、動物の長寿化に伴って、高齢期の心臓病が増える傾向にあります。適切な時期に治療を行うことで、心臓病は進行を遅らせることが可能です。また、重症であっても治療方法の選択肢を変えることで、状態が改善される場合があります。

心臓病は、血液検査、血圧測定、心電図、胸部X線検査(レントゲン検査)、心エコー検査(超音波検査)などを組み合わせることで、病気を総合的に判断していきます。病気の種類や程度が判明すれば、治療の方法や薬の内容を決めることができます。心臓の検査は特殊で、すべての動物病院で同じレベルを提供できるわけではありません。ですので、循環器の治療に関して不安を感じるようでしたら、早めに受診されることをオススメします。

大学病院などの専門施設と違って、当院はごくふつうの動物病院です。敷居が高いわけではありませんので、気軽にご相談いただければと思います。ぜひ頼りにしていただきたいですね。もちろん、詳しい検査が必要な場合には、信頼のおける大学病院を紹介することもあります。

専門的な技術と知識は独学では学べないものです。今後もさらに向上していけるように、大学病院などに出向き、実際の治療に携わりながら技術と知識を習得していきたいと思います。

・治療時に大切にしていること

「独りよがりにならず、飼い主とともに考えること」

例えば、心臓病の動物がいたとします。この病気にベストな治療方法を提案しても、飼い主の同意が得られなければ、その治療法はベストとは言えません。十分に話し合い、飼い主の同意が得られる治療法を探っていく必要があります。

この地域は都心とは違って、「動物は家族の一員」という考え方と、「動物は動物」という考え方が混在しています。犬の場合には、使役目的である猟犬や番犬として飼っている方もいます。猫の場合は、昼間は外で過ごし、夜だけ家の中で過ごすという飼い方も多いのです。

そのため、飼い主がどう飼っているのか、どこまでの治療を望むのか、それを一番に考えて、提案することが大切だと思っています。そこは地域性を十分に考慮し、幅広く、柔軟に対応していく必要があります。高度医療を望む飼い主もいれば、緩和ケアだけを望む飼い主もいる。独りよがりにならずに、飼い主とともに考えながら、その中でできる最善の治療をしていければと思います。

ただ、飼い主の考えを尊重しすぎると、治せる病気が治らない場合もあります。そんなときには一歩踏み込んで話をするようにしています。もちろん、経済面なども含めて話を進めていくことも大切です。この地域は「動物に対する考え方」の過渡期にあると思っています。多くの飼い主と接するなかで、少しずつ変化していると感じますね。だからこそ、飼い主と一緒に考えることが大切なのです。

・今後の展望

「循環器科の設備を整えた中核病院を設立する」

「心臓病であればこの病院に行けば間違いない」と言われるレベルの病院の設立を目指しています。すべての分野を高いレベルに持っていくことは難しいので、自分のできる範囲で、できることをしっかりやりたいと考えています。まずは、この熊谷市において循環器科の設備を整えた中核病院を設立することが目標です。

最近は、遠方からも診療にいらっしゃる飼い主も増えてきたので、少しずつ努力が実ってきていると感じています。まだまだ時間がかかるとは思いますが、この病院がこの地域に大きく貢献できる施設として進化していけるよう、最大限の努力をしていきたいと思っています。

・先生にとって「動物」とは?

「そばにいるのがあたり前の存在」

小さいころから家には動物がいたので、いつも一緒に過ごしているのがあたりまえの存在ですね。犬、ウサギ、鳥、魚などがつねにいました。現在も犬はビーグルと柴犬、猫は雑種4頭を飼育しています。動物は空気のような存在で、大切な家族の一員です。

【さいたま博通り動物病院】
住所:埼玉県熊谷市肥塚1-6-35
TEL:048-577-3774
最寄り駅:JR熊谷駅北口より徒歩30分、バス10分
URL:http://www.saitamahaku-vc.com

[編集部]