ペットと幸せに暮らせる家

左から、宮武さん、沢辺さん

近年のペットに対する考え方の変化により、「ペットと暮らす家」を求める人が多くなってきました。ペットは家族同然であり、毎日をともに生きていく大切なパートナーとなり、家づくりにおいても重要な要素として考えられるようになってきました。ペットと幸せな生活を送るために、どのような家を建てたらいいのか、多くのハウスメーカーが提案をしています。しかしながら、その多くが人の側に立って考えられており、果たしてそれがペットにとっても快適なものであるかどうか疑問に感じるものが多く見られます。

そんな中で、戸建て住宅トップシェアの積水ハウスはペットと暮らす家として「Dear One(ディア・ワン)」を提案しています。人の観点と、動物の習性を考え、人も動物もともに気持ちよく暮らすためのヒントを研究の成果として紹介しています。「ペットの視点にも立った研究と提案をしているところが積水ハウスの特長です」と総合住宅研究所の沢辺泰代さんは話します。

今回は、グランフロント大阪(北館)ナレッジキャピタル4Fにある体験型の「住ムフムラボ」にて、沢辺さんと、大阪南支店の宮武美穂さんに積水ハウスの考える「ペットと暮らす家」についてお話をうかがいました。

15年間の調査・研究から見えてきたペットとの共生

ペットと一緒に暮らす家を設計するためには、ペットの生態はもちろん、その生活や空間を把握する必要があると考えました。そこで、ペットの飼育に関する調査を行いました。ペットが普段どのような生活をしているのか、食事、トイレ、寝る場所などをお聞きするとともに、生活シーンがわかるような写真をいただきました。

同時に、ペットの体のサイズも計測していただいたところ、猫は体格による大きな差はないのですが、犬の場合は犬種により2~70㎏という体格の差がありました。寝ているときの体長、座っているときの体高、最小で通れるドアの幅など、さまざまなサイズを測った結果、体重と大きさが比例するということがわかりました。

また、トイレといってもリビングにペットシーツを広く敷き詰めていたり、玄関の土間がトイレスペースになっていたりと、いろいろな問題や課題が見えてきました。

その結果、本格的な研究をしていくべきという結論に達し、2001年に「ぺット生活工学研究」をスタートしました。調査の結果を分析することにより、サイズや特性に合った提案や、研究の成果から様々な設備部材の開発も行い、2003年にはペットとともに暮らすスタイルを提案する「Dear One」のリリースに至りました。

人とペットの環境づくりに必要な考え方

「Dear One」の柱である積水ハウスの考え方は、人とペットの両方のニーズからバランスポイントを見出し、空間や装置を提案するという「Side×Side(サイドバイサイド)」です。例えば、寝室、キッチンなどペットに入ってほしくない場所もあるという人に対して、群れで生活してきた犬は常に信頼できるリーダー=人間のそばにいたがります。自分の近くに来てほしいと考える人に対して、高い場所が好きな猫は気ままに行動します。

また、自由に家の中が行き来できるペットは幸せそうにも見えますが、実は「安心できる居場所がない」と感じているのかもしれません。ペットの習性や行動特性を考えること、人の暮らし方や感情を考えること、その両方のバランスが人とペットの環境作りには大切だと考え、どちらの幸せも両立できる住まいづくりを実現させています。ペットと一緒に、豊かな日々と、人生を楽しんでいただきたいという思いからこの考え方は生まれているのです。

人とペットの環境づくり“Side×Side”の考え方

サイズや特性に合ったスタイルの提案

「Dear One」では、ペットの日常的な居場所や行動の制限などを考慮して、4つの「エリア別暮らし方スタイル」を考えています。

家族が集まるリビング・ダイニング空間を中心に、ふれあいを楽しむのが「LDスタイル」。猫の場合は自由気ままに生活しますので「キャットスタイル」としています。

犬の場合は人間と一緒に寝ているかどうかで、その生活スタイルは大きく変わってきます。家中どこでも出入り自由で、寝るときも家族と一緒というのが「フリースタイル」、昼間は外で、寝るときには室内にというのが「コートスタイル」です。

ペットの大きさや必要運動量も配慮しながら、それぞれのスタイルに応じて、快適な居場所作り、仕様や設備などを提案していきます。

ペット生活工学研究「ペット生活特性実態調査より」

独自の体格分類モジュールを設計に生かす

飼い主様から得た調査の結果から、犬はS・M・Lの3種類、猫はSの1種類に分類しました。ペットのサイズが体重を指標とした独自の設定となっていて、これを基本として最適なスペース・アイテムをご提案しています。体重がわかれば、ペットに必要な居どころの大きさや、ぴったりサイズの設備をご提案できるようになっています。この体格分類モジュールが設計に役立っています。

ペット生活工学研究の成果による快適な仕様と設備

積水ハウスでは、独自に開発したペットのための仕様と設備があります。それらはすべてペット生活工学研究の研究施設で、実際に犬や猫に使用してもらいながら開発されたものです。

たとえば、クッション性の高い「ファブリックフロア」は、さまざまなサイズと年齢の犬に歩行してもらい、画像分析を繰り返すことにより完成しました。ペットの足をしっかりグリップすることで、足腰の負担を軽減するというペットのメリットと、フッ素系樹脂による撥水・撥油・防汚加工が施され、お手入れも簡単にできるという人のメリットを両立しています。

「多目的シンク」はペットが立ちやすいように底部分をフラットにしています。シャワーはフロント部分から出るようになっているので、ホースが邪魔にならず、シンクの奥に向かって水を出すため、洗う側には水がかかりにくくなっています。排水口にはペットの毛が流れないようにヘアキャッチャーが付いています。ペットを洗うためだけでなく、食器やグッズを洗ったり、お子様の運動靴を洗ったりといろいろな目的に使用できます。

また、調査の結果から、ペットの専用場所と、フードやトイレシーツなどの専用グッズの場所が分散していることがわかりました。そこで、「食べる」「寝る」「トイレ」の専用場所と専用グッズの収納を1箇所にまとめた「ペットハウス収納」が生まれました。これらはすべて、「ペットにも、家族にも使いやすい快適設備」であるよう、ペットと人の両方が満足できるよう開発されています。

ペットハウス収納S

ペットハウス収納L

ハウス

ダイニング

トイレ

ペットと幸せに暮らす家を -設計者としての意識-

地域により違いはありますが、新築戸建ての場合、ペットを飼ったことのある当社オーナー様のアンケートでは48%ほどになってきました。若い世代の方は賃貸住宅からの住み替えが多く、戸建ての新築を機に、ペットを飼い始めるご家庭も多く、それも含めるともっと高い比率になると思います。最近では多頭飼育が増えています。

お客様からは、「ペットと共生している今のスタイルを、新しい家にも変わりなく取り入れたい」「今よりももっと工夫をしたい」「高齢化したペットが快適に暮らせるようにしたい」というご要望を、多くいただくようになりました。ペットは家族の一員という考えが、広く浸透してきていると思います。各家庭によりペットとの接し方が違うので、ペットとどのように生活しているかをヒアリングすることが重要です。

ペットとの共生とは「ともに楽しく幸せに暮らす」が根本にあります。ペットも人も不自由なく快適に暮らせること、動線に制限がなくストレスフリーな空間であること、そこにペットがいることが自然に感じられる空間作りが必要です。ご家族全員が幸せになれる、そんな家造りをこれからもご提案していきます。