【編集興記】エプリノメクチンを含む寄生虫駆除薬が猫の副作用リスクを高める可能性

ちょっと気になったペット関連のトピックスを、編集スタッフが持ち回りで紹介する“不定期”コーナーです。

ワシントン州立大学が発表した研究によると、特定の寄生虫駆除薬が深刻な副作用のリスクがあるため、米国の50万匹以上の猫には与えるべきではないとのことです。

この研究によると、エプリノメクチンは、MDR1として知られる遺伝子変異を持つ猫に重篤な副作用を引き起こす可能性のある成分であると断定しています。具体的には、重度あるいは致命的な神経疾患を引き起こす可能性があるということです。

MDR1遺伝子はP-糖タンパク質を生成する遺伝子です。P-糖タンパク質は、細胞外に毒性のある物質や薬物を排出する役割を担い、脳血液関門や消化器系、腎臓などに存在し、有害物質や薬物の細胞内への侵入を防ぐ役割を果たしています。

MDR1遺伝子変異を持つ猫では、薬が脳に入り込み、神経毒性を引き起こします。また、専門家によれば、猫の大多数はMDR1遺伝子変異を持っていないにもかかわらず、副作用の報告が頻繁に発生しているといいます。

実際にこの研究が開始されたのは、神経系疾患の報告数が増加したためで、エプリノメクチン投与後に病気になったり死亡したりした猫の医療記録の調査も含まれていました。

エプリノメクチンに対する副作用の症状は、通常、製品を皮膚に塗布してから数時間後に現れます。副作用には次のような症状が見られます。

 唾液分泌の増加
 瞳孔の拡大
 協調性の喪失
 部分的な麻痺
 舌が正常に機能しない
 てんかん発作
 振戦(震え)
 昏睡
 死亡


この研究を主導したワシントン州立大学獣医学部 獣医薬理遺伝学者のカトリーナ・ミーリー博士は、「もしこれが人間の患者に起こっていたら、連邦政府機関は直ちに規制措置を発令するだろう」とコメントし、米国食品医薬品局(FDA)が、エプリノメクチンを含む製品に注意喚起のラベルを貼ることを期待しています。

これは薬自体の問題ではなく、猫の遺伝子に問題があります。しかし、米国で約1%の猫に遺伝子異常が見られるということは、日本でも同じ比率である可能性はあります。これはけっして少ない数ではないことを認識すべきです。

遺伝子検査をすれば、愛猫がこの突然変異を持っているかどうかがわかります。その情報をもとに安全な寄生虫駆除薬を選べば問題はありませんが、不安がある場合は獣医に相談しましょう。

「ネクスガード キャット コンボ」など、エプリノメクチンが含まれている寄生虫予防薬が市販されていますが、現時点で注意喚起はなされていません。それまでは、寄生虫駆除薬を使用する際には、必ず有効成分を確認する必要があります。