犬や猫のアトピー治療戦略~後半

腸内環境を改善したらアトピーがよくなったというたくさんの研究報告があります。そのメカニズムの主役は、自分の体内で警察官の役割をする「制御性T細胞(Treg)」です。前半でお話したとおり、犬のアトピーの主犯格は「Th2細胞」です。この指名手配犯を薬で押さえ込むのではなく、自分の中にいる警察官(Treg)の力を借りる作戦です。

警察官(Treg)が持っているのが、「抗炎症性サイトカイン(IL-10)」という武器(ピストル)です。アトピーで暴れまくるTh2細胞の過剰反応を抑えてくれます。だから、どうにかしてこの警察官を増やしたいんです。じゃあ、どうしたら増えるかといえば、「乳酸菌を増やすこと」と「乳酸菌の大好きなエサを与えること」のふたつです。

まず、お腹の中で乳酸菌が増えると、乳酸菌が酪酸という物質を生み出します。この酪酸は警察官の「給料」になるので、酪酸をもらった警察官はガンガン働くようになります。つまり、お腹のなかで鉄パイプや金属バットを振り回し犯罪行為を繰り返す犯罪者たちを、ピストル(IL-10)を撃ちまくりガンガン検挙します。

次に、乳酸菌の大好きなエサであるオリゴ糖を与えることです。オリゴ糖のなかでももっとも小さい三糖類である「ケストース」は、警察官の体力を回復させる栄養になります。元気が出て給料もアップするので、警察官はさらに活躍する結果となり、アトピーやアレルギーに対し改善効果を示すのです。

これは、まさに腸管のなかにおける「ぷよぷよ」連鎖反応ともいえます。ケストースを与える→乳酸菌が増える→乳酸菌が出す酢酸(給料)が増える→その酢酸を食べる酪酸菌が増える→酪酸菌が増えると酪酸も増える→酪酸が増えると警察官(Treg)が増える→警察官が増えるとピストル(IL-10)でアトピーの主犯格(Th2細胞)を退治しまくるのです。

ちなみに、犬がケストースを飲むと腸内に存在する健康維持に必要な「乳酸菌」「ビフィズス菌」「酪酸菌」を選択的に増やすことがわかっています。さらに、ケストースを飲むと、犬の急性下痢の原因となる腸内病原性菌の「サテレラ属」や「ウェルシュ菌」などを驚異的に減少させることが報告されています。そして、それは犬だけじゃなくて猫でも同じような整腸効果があることがわかっています。

つまり、ケストースと乳酸菌による相乗効果(シンバイオティクス効果)が起こることで、犬や猫のアトピー改善や強い整腸作用などが期待できるってことです。