「8週齢規制で日本犬6種が除外」のなぜ?

いま国会中に改正案が提出され、法改正されるであろうと言われている動物愛護管理法ですが、ここにきて日本犬種6種が「8週齢規制」の適応対象外となる可能性がでてきました。日本犬6種(柴犬、秋田犬、紀州犬、甲斐犬、四国犬、北海道犬)は天然記念物に指定されています。ただ、特別天然記念物ではないので、売買や飼育に関する制限はありません。そのため、ペットショップやブリーダーなどが販売をしています。

適応対象外となる主な理由は「天然記念物の保存」。改正案は超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」が取りまとめています。秋田犬保存会の遠藤 敬会長(日本維新の会の衆議院議員)と日本犬保存会の岸 信夫会長(自民党の衆議院議員)の「8週齢規制」に関する反対にあい、日本犬6種だけは対象から除くことになったのです。これら6種の繁殖業者等が、一般の飼い主に直接販売する際に適応されるよう動物愛護管理法の付則に書き込む方向で調整が進んでいます。これまで議論にもなっていなかったことであり、動物愛護団体等が署名運動などをしてその取り消しを求めています。

天然記念物の日本犬6種とは?

8週齢規制から外れる可能性がある日本犬は、柴犬、秋田犬、紀州犬、甲斐犬、四国犬、北海道犬の6種です。日本犬の特徴は、飼い主に対して忠実で従順ですが、頑固で気難しい面も持ち合わせています。飼い主がしっかりと愛情を注げば、しっかりとそれに応えてくれることも人気の理由とされています。性格的な違いは、個体差がありますが、6種であまり大きな違いはありません。飼育するうえでの大変さは、身体の大きさに比例するといえるでしょう。日本犬を飼う際には、しっかり向き合える時間があるかどうかが重要なポイントで、コミュニケーションを取りながら信頼関係を築くことが大切です。

信頼関係がしっかりと築ければ、忠実で従順で、飼い主と密な関係で生涯を過ごすことができますが、逆に確立できないと無駄吠えをする、警戒心を露わにして攻撃的になる等も少なくありません。とくに見ず知らずの人には強い警戒心を持つので、子犬の段階で社会性を身に付け、しっかりと訓練をしておく必要があります。

【柴犬】
感覚に敏感で、警戒心が強い面があり、人に慣れさせる訓練が必要です。

【秋田犬】
大型犬で闘犬としての本能が残っているため、他人やほかの犬に対して攻撃的な一面があり、問題行動を起こさないよう訓練が必要です。

【紀州犬】
他人やほかの犬に懐きにくいため、慣れさせる訓練が必要です。

【甲斐犬】
他人に心を開くことが極端に少ない気難しい気質を持つため、攻撃的にならないよう訓練が必要です。

【四国犬】
飼い主以外には噛みつくような攻撃的な面があり、子犬のころから訓練が必要です。

【北海道犬】
マタギ犬をルーツに持つため攻撃的な面があり、子犬のころから専門家の訓練が必要です。

これらのマイナス面は社会性を身に付けさせ、訓練をすることでカバーすることができます。信頼関係が築ければ、日本犬ほど飼い主と密になれる犬種はないでしょう。

「8週齢規制」が法改正に盛り込まれる理由とは?

そもそも「8週齢規制」が議論され、法改正に盛り込まれることになったのは、ペット先進国といわれる欧米の多くの国で導入されている「社会性をしっかりと身に付けさせることで成長後の問題行動を予防し、免疫力を高めてから販売することで感染症にかかるリスクを減らす」という理念からです。それには8週齢まで親や兄弟姉妹とともに過ごす必要があると考えられ、それを日本でも導入するための法改正です。

日本犬6種がこの「8週齢規制」から除外される理由は、「天然記念物の保存」ですが、導入する理由から考えると、何ら関係性が見い出せない不可解な理由と言わざるをえません。先に述べたように、日本犬の特徴から考えれば、むしろ子犬のころにしっかりと社会性を身に付けさせることは必須です。また、免疫力を高めてから販売することは、子犬の命にもかかわる大切なことです。まして、「天然記念物の保存」が理由であれば、なおさら導入を進めるべきですし、一般の方に直接販売するのであれば、「8週齢規制」は飼育をするうえで有効だと考えます。なぜ、今まで議論されていなかったことが、改正案を提出する土壇場になって突然出てきたのでしょうか。

必要なのは健全性

今回のことで動物愛護団体から反発が強まっているのは、そこに整合性が見い出せないからでしょう。「天然記念物の保存」という不可解な理由、2名の国会議員の意見で議論もせずに日本犬6種が適応対象外になること、改正案を提出する土壇場になって意見が出されたことにあると思います。「命」を守るために日々活動し、また懸命に議論を重ねてきたものにとって、理不尽すぎると思える行為です。

今回の法改正のなかにある「マイクロチップの装着義務化」については、利権がらみではないかとの反対意見も聞かれました。この適応対象外についても、2名の国会議員それぞれが、秋田犬保存会、日本犬保存会の会長であるため、利権がらみと見られても仕方がないでしょう。

しかし、動物愛護管理法は動物の「命」が関わるものです。そこに利権があろうがなかろうが、動物に対して真摯に健全性を追求しながら議論がされるべきだと考えます。「マイクロチップの装着義務」に関していえば、利権がらみとの反対意見もありますが、装着することによって、災害時にはぐれてしまったペットが飼い主と再会できる確率が上がるでしょう。また、飼い主が特定できれば、捨て犬や捨て猫への抑止力にもなるといえます。議論がなされ、効果的であるとの賛成が得られれば、改正案に盛り込まれるのです。もし、日本犬6種を8週齢規制の適応対象外にすべきであるなら、堂々と議論にあげて、納得させられるだけの理由を説明し、賛否を問うべきだと思うのです。動物は「モノ」ではなく「命」です。議論もなくその扱いを決めるのは、危険以外のなにものでもないでしょう。

まとめ

現在、いくつかの動物愛護団体がこの付則について、取り消しを求める要望書を提出したり、反対する署名運動を始めたりしています。法改正の議論に関わってきた俳優たちもSNSなどで反対する旨を発信しています。「天然記念物の保存」という理由だけでは、到底納得はできないでしょう。

動物愛護管理法の基本原則は「すべての人が動物は命あるものであることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適性に取り扱うよう定めています」としています。そのことを再度認識し、この付則が正しい判断であるかどうか真摯に考え、健全性のなかで結論を出す必要があるでしょう。