愛犬の「引っ張り癖」や「マーキング癖」を直すには?
藤田先生に聞く、しつけについてのワンポイントアドバイス、今回は、飼い主さんをグイグイ引っ張って先に進んでしまう「引っ張り癖」の直し方です。この癖は、あちこちでおしっこをする「マーキング」と関わりが深いとのことなので、こちらも合わせて考えていきましょう。
引き癖は、飼い主さんに責任あり!?
まるで犬ぞりでも引いているかのように、飼い主さんをグイグイ引っ張りながらお散歩をしている犬を見かけることがあります。元気いっぱいなのはいいことですが、これでは毎日のお散歩が疲れてしまいそう。犬が引っ張らないようにするには、どうしたらいいのでしょうか?
「最初に、なぜ犬が引っ張るのかを考えていきましょう。実際のしつけを行う前に理由を探るという考え方は、どんなしつけにも応用できて、しつけの効果も高めやすい手段です。まず、犬種の特性によるもの。犬は、胸に圧力がかかると前に進む『抵抗反射』という特性を持っており、荷車や犬ぞりなどを引くのが仕事だった使役犬は、この抵抗反射がとくに出やすい場合があります」
抵抗反射については、以前の記事でもご紹介しました。私の愛犬・サモエドもこの特性が強く、グイグイ引っ張る子はたしかに多いようです。ただ、引っ張られて困り果てている飼い主さんは多くない印象があります。犬種の特性を知った上で、わざわざサモエドを選ぶ方々ですから、その程度は織り込み済みということなのかもしれません。
「犬種の特性を勉強することは、犬の幸せな暮らしにとっても、しつけにとっても、大きな意味を持っています。その勉強が不足しているために、引っ張る犬だと思い込んでしまっていることもあるんですよ」
犬が引っ張っているかどうかは、誰にでもわかることだと思うのですが、違うのでしょうか? 思い込みとは、いったいどういうことでしょう。
「お散歩中、飼い主さんの歩く速度が遅いため、結果として犬が引っ張ってしまっている場合が多いのです。お散歩は、気分転換などストレス低減のためだけではなく、犬が持つ運動欲求を満たすという働きもあります。犬はもっと運動したいのに、飼い主さんがノンビリ歩いていたら、不満が溜まってしまいますよね?」
適切なお散歩速度は犬によって異なりますが、たとえ小型犬でも、速歩き程度の速度は必要なのだそうです。お散歩はスポーツと考えたほうがいいのかもしれません。
リーダーウォークはあまり効果なし!?
「歩く速度が適切でも、なお引っ張る犬の場合は、飼い主さんを無視している可能性が大きいですね。もちろん、これにも理由があります。よくあるパターンは、毎日のお散歩回数が少ないケース。お散歩が待ちに待ったイベントになってしまっているため、気持ちが舞い上がっているのでしょう。お散歩の回数を多くするとともに、回覧板を届けに行くなど何かにつけて家の外に連れ出すことで、お散歩を日常の出来事だと考えてもらいましょう」
お散歩中、飼い主さんに注目してもらうために、リーダーウォークを教えればいいという話を耳にすることもあります。これは引っ張り癖を直すために効果的な方法なのでしょうか?
「リーダーウォークを教えるには、ドライフード一食分をポーチに入れてお散歩に出かけ、飼い主さんに注目して立ち止まったら与える、などの方法が知られています。犬が引っ張ったらその場で立ち止まり、行く方向と歩く速さを飼い主さんの意思で決める、という引っ張り癖の直し方もよく耳にするのではないでしょうか。でも、私の経験では、効果が出ないことのほうがはるかに多いですね」
藤田先生によると、こうした犬でも引っ張らないようにするテクニックはあるのだそうです。ただしこの方法は、プロの指導の下で行わないと効果が出ないばかりか、犬の身体を傷めてしまうことにもつながります。それではしつけではなく虐待になってしまいますから、ここで安易に紹介するわけにはいきません。プロのテクニックを素人が真似するのは危険です。
「ひとつヒントをお答えするなら、犬の首は人間と比べるとかなり丈夫で、飼い主さんの意志を伝えるために少々衝撃を与えても問題はないということでしょうか。矯正用の特殊なハーネスは別として、一般的なハーネスは引っ張り癖がつきやすいといわれていますから、引っ張り癖が気になる方はカラー(首輪)でのお散歩をオススメします。ただし、犬は首こそ丈夫でも、気管はそれほど強くありません。お散歩中に引っ張りすぎてチアノーゼを起こしている子もいますので、犬の状態をよく観察し、呼吸に悪影響が出ている場合はハーネスにするべきです」
マーキングも引っ張り癖の原因になります
引っ張り癖がつく原因のひとつとして、マーキングがあります。オス犬が片足を上げておしっこをする姿でお馴染みです。ただし、メス犬はマーキングをしないかというと、そんなことはありません。藤田先生は、少しでも高いところにニオイをつけようと、逆立ちでマーキングするメス犬を担当したこともあるそうです。
「マーキングをしたくて引っ張る子は多いですね。本能ですからなかなか止めることはできませんが、一点お伝えしておきたいのは、マーキングよりも運動が優先ということ。マーキングをさせないとストレスが溜まると思い込んで、頻繁にマーキングをさせる飼い主さんもいますが、都市部では避けたほうがいいでしょう」
マーキングの直し方は、去勢がいちばんです。確実な効果を望むなら、生後6カ月ぐらいでの去勢が目安。マーキング行動が始まってからでは遅いことが多いからです。ただ、この時期と去勢の是非については、飼い主さんの考え方によるところが大きいのではないでしょうか。行きつけの獣医さんを、子犬のころからつくっておき、早め早めの相談をオススメします。
次回は「お散歩中にほかの犬とケンカをする」お悩みについて考えていきましょう。
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