【猫飼いTIPS】猫にも「フケ」が出るってご存じですか?

猫も人間同様にフケが出ます。フケは生理的な現象のひとつで、皮膚の新陳代謝によって剥がれ落ちた角質のことをいいます。しかし、急にフケの量が増えたり、体を執拗に掻いているような場合には、病気の可能性を疑ったほうが良いかもしれません。今回は猫の「フケ」についてのお話です。

そのフケは生理現象? それとも病気?

健康な猫の場合は、約3週間かけて皮膚が生まれ変わる(ターンオーバー)といわれています。古くなった表皮が角質となり、皮膚から剥がれ落ちてフケになります。毎日、ブラッシング等でケアをしていると、通常の量が把握できます。いつもと同じくらいのフケの量なら問題はありませんが、動くだけでたくさんのフケが落ちたり、毛をかき分けると毛の付け根にたくさんのフケが溜まっているような場合には、異常だと考えてよいでしょう。体調などに変化はないか、体を執拗に掻いていないかなど、しっかりと愛猫を観察しましょう。そして、何らかの病気にかかっていないか、動物病院を受診しましょう。

フケが出る可能性のある病気は?

猫に多量のフケが見られる場合、まず考えられるのは皮膚のトラブルですが、フケからは想像もつかない内臓疾患が隠れている場合もあります。皮膚の異常に注意を払うことはもちろんですが、猫の体調の変化や体を掻きむしるなどの行動の変化にも注意を払う必要があります。

【アレルギー性皮膚炎】
アレルギー症状を起こす原因物質(アレルゲン)によって、猫の体の免疫機構が過剰に反応することにより生じる皮膚炎です。アレルギーの原因は、ノミ、ダニ、花粉、ハウスダスト、食べ物に含まれるアレルゲン、猫のベッドなどの素材に含まれるアレルゲンなどさまざまです。

・吸引性アレルギー:ハウスダストや花粉、カビなどがアレルゲンで吸引することでアレルギーを発症する
・食事性アレルギー:アレルゲンとなる食べ物(主にタンパク質)を接種することで発症する
・ノミアレルギー :ノミの唾液中のタンパク質がアレルゲンとなり、猫に寄生したノミに吸血されることで発症する
・接触性アレルギー:ベッドや絨毯、食器など身の回りのあらゆるものがアレルゲンとなり、猫の皮膚に触れることで発症する


【寄生虫による皮膚炎】
ノミやダニが猫に寄生することによって、皮膚炎を発症することがあります。代表的な寄生虫はネコショウセンコウヒゼンダニ、ツメダニ、イヌノミ、ネコノミ、ネコハジラミ等ですが、強烈なかゆみを引き起こすネコショウセンコウヒゼンダニには特に要注意です。治療には駆虫薬を使用しますが、完治には時間が必要です。寄生虫は感染症を引き起こす可能性がありますので、早め早めの治療が必要です。万が一、寄生が判明したら猫が使っているものをすべて洗いましょう。また、定期的に動物病院で相談のうえ、予防薬を投与してノミ・ダニの寄生を防ぎましょう。

【真菌による皮膚炎】
真菌とはカビのことです。初期症状はほとんどなく、円形に脱毛してはじめて発症がわかる場合がほとんどです。小さな円形から徐々に脱毛部分が大きくなり、同時に大量のフケが発生します。早期治療が重要で、全身に広がる前に治療をスタートさせる必要があります。治療には飲むタイプ、あるいは塗るタイプの抗真菌薬を使います。ただし、飲むタイプは副作用の恐れがあるので、子猫やシニア猫の場合には、塗るタイプを使用します。シャンプーに慣れている猫の場合は、薬用シャンプーで真菌を洗い流す方法も高い効果が得られます。

【内臓疾患によるフケの発生】
多量のフケは、その猫の新陳代謝やターンオーバーのサイクルが、何らかの原因で変わったサインです。慢性腎臓病や慢性腸炎、糖尿病や副腎皮質機能亢進症があると、「多飲多尿」の症状だけではなく「毛艶が悪い」「フケが多い」「毛が脂っぽい」などの症状がみられることも多々あります。愛猫の様子の変化をしっかり観察して、問題があれば動物病院を受診しましょう。そして、その様子をしっかり伝えることが大切です。情報が多ければ多いほど、早期の診断、治療、完治につながります。多量のフケの原因が皮膚のトラブルだけではないことを頭に入れておくことが大切です。


病気以外でフケが増える原因と予防法は?

じつは多量のフケの原因が、病気ではないことも多くあります。考えられる原因は下記のようなものです。

【室内の空気の乾燥】
空気が乾燥する冬場には、フケが増えやすくなります。人間と同じように猫も皮膚が乾燥すると角質が剥がれてフケになります。乾燥した皮膚は外的な刺激を受けやすくなりますので、加湿器などを使用して室内の乾燥を防いだり、保湿用のスプレーや蒸しタオルなどを利用して皮膚の保湿を保つようにしましょう。また、夏場でもエアコンや扇風機の風に当たり過ぎると、同じように皮膚が乾燥します。風の向きなどを工夫して、乾燥を防ぎましょう。

【食事内容】
市販されているフードのうち、総合栄養食の表示があるものは栄養バランスがとれていますが、最近は「手づくり食」だけを与えている飼い主も増えています。また、食事よりもおやつばかりを与えている飼い主もいます。きちんと猫が必要な栄養バランスを理解して、相応の食事を与えている場合はよいのですが、栄養のバランスがとれていない場合は偏りが生じて、皮膚の健康が保てなくなります。その結果、皮膚が乾燥したり、ターンオーバーのサイクルが乱れて、フケが増えてしまいます。アレルギー体質の猫に、体質に合わない食事を与えてしまっている場合も同様です。食事に含まれる栄養素の約30%が皮膚の栄養となります。皮膚に十分な栄養がいかなくなればフケが多くなります。動物病院等で詳しい獣医師に相談して、体質に合ったフードを選んであげましょう。

【皮膚のケア不足/ケア過多】
ケガや病気、肥満、老化などにより毛づくろいがあまりできない猫は、フケが目立ってきます。猫の手や口が届かない部位を中心に、飼い主がブラッシングなどをしてケアしてあげましょう。しかし、ブラッシングをしすぎて角質層が取れすぎてしまうと、新陳代謝が活発になり過ぎて皮膚のターンオーバーのサイクルが早くなってしまいます。このような場合は、フケが多くなると同時に被毛も薄くなってきます。もし、愛猫の毛が薄くなってきた場合は、ブラッシングの頻度を減らして様子を見ましょう。ただし、皮膚炎を患っている場合は、症状を悪化させてしまう可能性がありますので避けてください。猫は痛い思いをするとブラッシングが嫌いになり、ブラシを取り出しただけで逃げるようになります。手短に優しくブラッシングを繰り返し、ブラッシングの後には必ずごほうびを与え、少しずつ慣れさせることが大切です。

また、シャンプーによっても改善が期待できます。シャンプーに慣れている猫であれば、月1回程の頻度で行います。コンディショナーを併用すると毛がほつれにくく、毛玉の予防にも有効です。ただし、シャンプー剤が残っていると皮膚や肝臓のトラブルの原因になるので、しっかりと洗い流しましょう。また、濡れたまま放置すると雑菌の繁殖や体温の低下につながります。シャンプー後はタオルである程度の水分を拭き取り、すぐにドライヤー等で毛の根元まで乾かしましょう。

【ストレス】
猫は緊張や興奮をしたときには、交感神経の働きが活性化するので毛が逆立ちます。毛が逆立ったときには、古くなった角質も浮き上がるのでフケが多く出ます。そのような一時的な場合には、保湿したり、蒸しタオルで拭きとってあげればフケは落ち着きますが、長期間に渡ってストレスを受け続けると、猫はグルーミングをしなくなり、フケが増えることになります。ストレスは、来客が多い、模様替えをした、多頭飼育、運動不足、引っ越し、ホテル、入院などが引き金になるといわれています。生活環境に大きな変化がある場合は、安心できる場所を準備してあげたり、少しずつ慣れさせてあげるなど、飼い主の優しさと工夫が大切です。また、飼い主とのふれあいは猫のストレス軽減となるとともに、飼い主にとっても癒しとなるでしょう。

【加齢】
人間と同じように、猫も老化とともに皮脂の分泌が減ってきます。そのため、皮膚の水分が奪われ、乾燥してフケが出やすくなります。シニア猫用のフードは、栄養素の吸収や抗酸化作用のある栄養素に配慮してつくられているため、積極的に取り入れるとよいでしょう。また、関節炎等により体がこわばってしまって、今までできていたグルーミングが思うようにできなくなってきます。体も筋肉が衰え痩せてくるので、硬い素材のブラシで強くブラッシングをしないようにしましょう。皮膚への刺激が少ないブラシを用いたり、蒸しタオルやゴム手袋などで優しくお手入れしてあげることが大切です。


まとめ

愛猫のフケが増えたと感じたときは、まずその様子を観察します。体を頻繁に掻いたり、食欲がなくなったり、元気がなかったり、脱毛があったりなどチェックをします。皮膚のトラブルが出始めると、猫の様子が変わります。「うちの子、なんか変だなあ」と飼い主が感じたら、愛猫に何か異変が起こっている兆候です。そんなときは早めに動物病院を受診することをオススメします。