【みんなで防災:第6回】ペットの避難用品や備蓄品の用意

災害発生時には、ライフラインの寸断や緊急避難などが予測されます。それらの状況に備えて、必要な物資の備蓄をし、いつでも持ち出せるようにしておくことが大切です。避難所では人に対するさまざまな準備はされていますが、飼っている犬や猫などのペットに対する備えは、基本的には飼い主がしておく必要があります。過去の事例からも避難所等にペット用の救援物資が届くまでには、かなりの日数を要しています。そのため、少なくとも5日分(できれば7日分以上)は、用意しておく必要があります。特に、療法食や薬などが必要なペットの場合は、さらに長期にわたる用意が必要です。

ペットの備蓄品と優先順位

ペットの避難用品や備蓄品をリストアップしていると、持って行きたいものが山ほどあります。しかし、飼い主がひとりで持ち出せる量にも限りがあります。そのため、備蓄品には優先順位を付けて最低限必要なものを選び出し、優先順位ごとに分けて、飼い主の避難用品とともに保管しておくことが大切です。優先順位の高いものはすぐに持ち出せる場所に置きます。そのほかのものは、わかりやすい場所に保管し、災害発生時の状況によって持ち出すかどうかを判断しましょう。

【優先順位1:命や健康にかかわるもの&飼い主や動物の情報】
▶療法食&薬 
最低でも14日分程度は用意しておきたいところです。薬に関しても同様で、獣医師に相談してつねに手元に準備しておくとよいでしょう。

▶フード&水
ペット用の救援物資の配給が始まってもいつものフードが手に入るとは限りません。好き嫌いがあるペットの場合にはフードを多めに用意しておきましょう。また、ペットボトルの水には油性マジックで「ペット用」と大きく記載し、ペットのために用意された水であることを提示しておくことが大切です。過去の事例では、人間用の水を与えていると勘違いされ、それがトラブルに発展したとの報告がありました。 ※フードや水には賞味期限がありますので、ときどきチェックをして入れ替えるようにしましょう。

▶予備の首輪&リードなど(伸縮しないもの)
災害発生時には、慌ててペットをキャリーバッグに入れて家を飛び出したため、気づいたら首輪やリードがなかった、また避難途中で瓦礫に引っかかり切れてしまったなどのトラブルがつきものです。必ず予備の首輪とリードを準備しておきましょう。また、伸縮するリードはストッパーが破損すると使用が難しくなります。また、避難生活においては伸ばしてペットを歩かせることは、危険があるとともに他の人への迷惑にもなりかねません。リードは伸縮しないタイプを選びましょう。

▶食器
フード用・水用のふたつの食器を準備します。割れない素材で、持ち歩きが楽な軽いものを選びましょう。

▶ガムテープ
ケージやキャリーバッグの補修など多用途に役立ちます。特に布製のガムテープは強度もあり、重ね張りやマジックで字を書くことも可能なので重宝します。2巻くらい準備しておきましょう。

▶飼い主やペットの情報を記載したノートやメモ
飼い主の連絡先や緊急時の飼い主以外の連絡先(預かり先など)、既往症や健康状態、ワクチン接種状況、かかりつけの動物病院の連絡先などをひとつのノートなどにまとめておきましょう。

▶ぺットの写真や画像
ペットと離れ離れになってしまった場合など、ペットの写真があると迷子ポスターの作成や飼い主であることの証明にもなります。携帯電話などに画像を保存しておくことも有効な手段です。ペットと一緒に飼い主が写った画像であれば、すぐに飼い主の特定ができます。また、ペットの特徴がよりわかるように、いろいろな角度から撮っておくことをオススメします。

【優先順位2:ペット用品】
▶ぺットシーツ、毛布、マット
ペットシーツはレギュラーサイズとワイドサイズの両方を用意しておくと、トイレ以外のさまざまな場面でも役立ちます。また、毛布やマットは普段使い慣れているもののほうが、避難先で安心できるので何度かペットが使ったものを準備するようにしましょう。  

▶排泄物の処理用具
マナー袋(新聞紙&ビニール袋でもよい)、スコップなど普段使っているものと同じものを準備します。マナー袋はニオイが外に漏れないもの

▶トイレ用品
犬の場合は、散歩の際に避難所の外で排泄することも多いですが、猫の場合はトイレと使い慣れた猫砂を準備する必要があります。また、猫のトイレはとてもかさばるので、折り畳み式のものを用意することをオススメします。   

▶タオル、ウエットティッシュ、ブラシ、トイレットペーパー
避難生活では、ペットもトリミングやシャンプーに行くことはできません。清潔を保つためには毎日のブラッシングや汚れた箇所のふき取りが必要となります。洗っても渇きが早いタオル、ウエットティッシュ、トイレットペーパー(芯を抜いて潰しておくとかさばらない)などを準備しておきましょう。

▶おもちゃ
避難生活はペットにとってもかなりのストレスがかかります。少しでもそれを軽減できるように、好きなおもちゃをいくつか準備しておきます。ただし、音が出るもの、ボールなど転がってしまうものは、他の人の迷惑になりますので、避けるようにしましょう。

▶爪切り、ハサミ(毛玉などをカット)
前述したように避難生活では、ペットもトリミングやシャンプーにはいくことができません。爪が伸びたり、毛玉ができてしまった場合には、飼い主がケアしてあげる必要があります。爪切りやハサミなど準備しておきましょう。また、飼い主が自分でできるように練習しておくことも大切です。

▶除菌・消臭剤
ペットを飼っていない人にとっては、ペット臭はとても気になります。避難生活においては同じ空間で過ごすことになりますので、マナーとして除菌・消臭剤等を準備しておきましょう。また、除菌・消臭剤自体のニオイを嫌がる方もいるので、できるだけ無臭のものを選びましょう。

▶洗濯ネット(猫の場合)
猫の場合はパニック状態に陥ることもあるので、状況により洗濯ネットを活用しましょう。暴れて破ってしまうこともあるので、丈夫なものを複数枚準備することをオススメします。

▶マナーベルトやオムツ
ペットがマーキングをする場合には、マナーベルトやオムツを準備しておきます。


すぐに持ち出せる場所とは?

「備蓄品はすぐに持ち出せる場所に準備しておきましょう」と聞くと頭に浮かぶのは玄関付近でしょう。しかし、災害発生時には必ずしも玄関から出れるとは限らないのです。家が倒壊して玄関部分が瓦礫で埋まってしまったら、備蓄品等を持ち出すことができなくなります。備蓄品は同じものを3カ所くらいに準備しておくことをオススメします。例えば、玄関や勝手口、外の倉庫などです。そうすれば、そのどこかから備蓄品を持ち出せる可能性が高くなります。いろいろな状況を想定して、置き場所を決めておきましょう。置き場所を家族と共有しておくことも大切です。

まとめ

災害発生時には、避難先においてペットの飼育に必要なものは、基本的には飼い主が用意しておかなければなりません。救援物資の配給は、まずは人間用が優先されますので、ペット用が配給される相当数の日数を飼い主の責任において乗り切らなければなりません。「自分のペットは自分で守る」という強い意識を持つことが大切です。そのためには、日ごろからしっかりと備蓄品を準備しておくことが重要です。災害はいつ起こるかわかりません。できるだけ早い時期に準備しておくことをオススメします。

第7回は「家族や地域での話し合い・ご近所との連携」をテーマに話を進めます。